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異世界からの勇者召喚 失敗!  作者: 猫宮蒼
一章 ゲームでいうところのありがちな追加要素

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奴は四天王の中でも最弱とか言われるタイプ



 大きめの規模のダンジョン、といってもステラたちからすれば大体二泊三日とか三泊四日くらいで帰ってこれるものだ。安全地帯に辿り着けばそこで休憩するための道具を出すので基本的にはしっかり休めているし、そういう意味ではそこらの探索者よりも気力体力共に充実した状態で再スタートできている。


 キールもステラが作った武器を手に、というか指にはめた状態で魔術を使ってみたが、懸念していたような耐え切れずに壊れるとかそういうのはなかった。そこは一安心である。

 それどころか強化の余地があると言っていたが、現時点でも大分凄い。

 本来は正確に詠唱しなければならない術であっても、短縮可能であるというのはルクスから聞いていた。実際に試した結果、確かに発動はした。

 けれども、人によっては威力が落ちる事もあったのだ。


 それでも発動するのであれば、急に魔物が出てきて咄嗟に、なんて時とか無いよりはマシであるけれど、そうではない時は流石に威力が落ちるのも困る。


 しかしステラの作った武器は、詠唱短縮しても威力が変わらなかった。キールもいくつか詠唱短縮した上で魔術を試したけれど、中には威力が落ちるものもあったのだ。しかし指輪を付けた状態で試した結果、威力が落ちる事がなかった。

 正直これだけでも凄いなと思うが、正確に詠唱した上で発動させた場合は威力が更に上がっていた。


 これでまだ強化の余地があるとか、とんでもないな……そう思わずにいられない。



 属性強化だとか魔力制御だとかこれ以上やったらどうなるんだ……と思うし、他にどういった強化ができるのかと尋ねれば素材沢山使うけど詠唱無しでの発動とかも可能よ。とはいえ、全部の術ができるかはわかんないけど。と返された。

 それを聞いて、え……凄いな……? と一瞬自分が聞いた事が何かの間違いのようにすら思えて。

 どうやってそんな事が可能に? と聞けばどうもこの石の中に術式を圧縮しておくのだとかどうとか。

 つまり一部の術の詠唱をそこに圧縮しておいて、あとは魔力があれば術だけは発動できるようになるとかどうとか……?

 いや、キールも説明は聞いたものの、正直理解しきれない部分があった。師であれば、アズリアであれば理解できただろうか……?

 師であればあれこれ突っ込んで聞いたに違いない。師が呪いになどかかっていなければ……とは思ったが、そもそも彼女が健在であったなら勇者召喚に手を出す事もなかったわけで。


 自分でやらかしておきながら、世の中ってままならないものだな……なんてキールは思っていた。



「はい、それじゃ今回から念願の上級者向けダンジョンいっきまーす。準備はいい?」

「オッケーでーす」

「問題ないよ」

「いつでもいけるぜ」


「あ、あぁ、こちらも問題ない」


 言葉だけなら肯定的なのにどこかテンションの低いベルナドットたちに続くように、キールもこたえた。


 そう、今回から上級者向けと言われるダンジョンへ行く事ができるようになったのだ。

 とはいえ、まだ小規模の、上級者向けといっても上級者向けの中で比較的レベルの低い所ではあるのだが。



「――とうとうここまでやってきましたね!」

 すびしっ! と指を突き付けるようにこちらに向けてそう叫んだのは、あれ以来お目にかかっていなかったアミーシャである。

 背後には全身を鎧で覆った仲間らしき者が三名。アミーシャよりも長身である事から中身は男性だろうか。まぁ女性であったとしても流石にあれだけの鎧は重すぎる気がするので男性だろう。

 どこぞの騎士です、と言われれば納得するような出で立ちだった。


「あっ、アミーシャじゃない。元気?」

「えっ? あ、はい、おかげさまで……じゃなーい!」


 ステラが久々に会ったご近所さんくらいのノリで声をかければ、アミーシャは反射的に言葉を返して……すぐさま我に返った。

 こちらの反応に一切対応せず言いたい事だけ言って何かしら仕掛けてくるかと思っていたのだが、どうやらそこまで徹底した態度を貫くわけでもなかったらしい。

 いや、むしろ本当はもっとこう……毅然とした態度でいくつもりだったのかもしれないが、ステラに久々にあった友人のような態度で声をかけられたせいでそれが崩れただけかもしれない。そう考えると案外彼女も普通の人間なのかもしれないな、とキールは考えて、とりあえずはそっと一連の流れを見守る事にした。


 ベルナドットやルクス、クロムは既に口を挟まず静観の構えだ。


「まさかここまでやってくるとは思ってなかったわ……いえ、もしかしたらいずれは、とも思ってたけど!」

「結局どっちよ」

「ううう、うるさいなぁ!? ともかく、ここから先のダンジョンは今までとは違うんだからね!? 今までと同じようにいくなんて大間違いなんだからー!」

「まぁ上級者向けですものね」

「そう! そうなのよ! 貴方達みたいにちょっといい武器あるからってだけで余裕かませる程甘いとこじゃないのよ!」

「でも上級者向けって言ってもまだここ、中級者向けに限りなく近いとこじゃない」

「その余裕がいつまで続くかしらねぇええええ!? いい!? ここは、そうやって余裕かましてやってきた探索者たちの多くを絶望に叩き落した事に定評のあるダンジョンなの。貴方たちも精々気を付ける事ね!」


「ふぅん? まぁでも、何も問題ないと思うわ」


 キールからはステラの表情は見えない。何せキールはステラたちよりも後ろにいて、その背中は見えるが表情を見ようとするならまずアミーシャたちと同じ立ち位置にいなければ難しい。

 ステラが一体どんな顔して今のセリフを言ったのか、キールにはわからなかった。

 ただ、アミーシャにとってはとてもムカつく顔をしていたんだろうなというのはアミーシャの反応でわかる。


 とはいえ、何も興味ないです、という顔であったとしても笑顔でこたえたとしても、アミーシャからすればどっちでも気に食わないだろう。


「はっ、せいぜいお手並み拝見させてもらうわ!」


 それだけを言うとアミーシャと仲間たちは踵を返して先にダンジョンの奥へと進んでいった。

 てっきりここで何か仕掛けてくるのでは、と思っていたが向こうはそのつもりはなかったらしい。


「わざわざ顔だけ見せにくるとかおかしなところで律義よねぇ」

「うぅん、あれはどう考えても黒幕とかそういう立場ではなさそうだね」

「そうね、あんな頭足りないのが黒幕とか逆に驚くけど同時に拍子抜けするものね」


 ステラとルクスの会話に辛辣ぅ……とか小声で呟いたのはベルナドットだった。

 クロムに至っては「まぁ、確かに黒幕はるってんなら知力か武力のどっちかは秀でて欲しいよな」とか真面目に言っている。……言いたい事はわかるが、そういう話だろうか?


「あの、そもそも黒幕って何の話ですか……」

「え? 特に決めてないけど。でも、彼女がダンジョンに関係してる存在で、って事は確かだろうしそれって考えたらこの世界の何かを牛耳ってる可能性もあるって話でしょ?」


 以前遭遇した時に、アミーシャがダンジョンに関係している存在であるというのは、とりあえずキールにも理解はできた。けれどもステラのその言葉を聞いて、ちゃんと理解していたわけではなかったのだな、と思う。

 そうだ。どうして思い至らなかったのだろう。

 もし仮に彼女がダンジョンを作れるような存在であったとして。

 だとしたらそれは、この世界に関わる重要な立場でもあるわけだ。

 何せここはダンジョンと共に成り立っている世界でもあるのだから。


 人が暮らす所にダンジョン在り。そんな当たり前の事を今更思う事もないままに受け入れて、それ故に気付く事がなかった。


「世界の創世に関わっている……!? 彼女が……?」

「そこまで大袈裟なものではないと思うわ。あの様子じゃ何でもかんでも好き勝手できるって感じでもなさそうだし」

「そう、なんですか?」

「だってもしそうなら、わざわざ私たちの前に出向いたりしないで、前回出会ってから今に至るどこかでもっとこう、こっちをどうにかできる感じに追い詰めたりしてるはずじゃない」

「あぁ、普通の人間よりできる事は多くあるけれど、決して万能でも全能でもない、ってところかな」

 そういう意味ではそこらの人間とそう変わらない。なんて言われてしまって、キールは思わず戸惑った。


 いや、そうかなぁ……? 大分違ってくると思うけど。


 本心からそう思うのだが、けれどそれを言っても何故だろう。ステラたちの理解を得られる気がまるでしなかった。


「まぁいいわ。ここで戦うならそれもそれで良し、とか思ってたけどお手並み拝見とか言い出すくらいなんだし今回はあちらも何か仕掛けてくるわけじゃなさそうだし。

 それならサクッとここクリアして他に行けるダンジョン増やすが吉、ってやつね」


 アミーシャたちは先に進んでしまったようだけど、本当に先にいるのかはわからない。前のようにどこか適当なところでダンジョンから脱出している可能性もある。そうして改めてこのダンジョンに入りなおして背後から奇襲を仕掛けてくる、なんて可能性もゼロではないが……仮にそうなったとしてもどうにでもなるだろう。


「なんかあっさりしてるけど、本当に大丈夫ですか? ここ仮にも上級者向けですよ?」

「大丈夫よ。多分ここで苦戦するって事はないわね」


 先程のアミーシャの言葉を全て信じるわけではないが、中級者向けダンジョンと上級者向けダンジョンは大きく違うと言われている。

 初心者向けのダンジョンから中級者向けのダンジョンへ初めて足を踏み入れるのとはわけが違うとも。


 キールはかつて自分が初心者向けのダンジョンをクリアしていよいよ中級者向けと呼ばれるダンジョンへ行った時の事を思い出す。

 あの時は確か、中級者向けといってもまだ初心者から抜け出しきれないような探索者が行ってもどうにかなるだろう難易度の所ではあったがそれでも。


 出てくる魔物が明らかに強くなっていると感じたし、ダンジョンの構造によっては物陰に隠れてこちらを襲ってくる魔物、なんてのも増えたりで中々に苦戦したのだ。

 更にはいくら地図があると言えども、本当にこの先に道があるのか? と言いたくなるような場所だってあった。初心者向けのダンジョンは視覚的にも魔物の強さ的にも本当に初心者向けだったのだな、と思えるようなものだったと後から思い返して実感したものだ。


 正直キールからすれば、何というか空気も少しばかり重苦しく感じている。

 中級者向けのダンジョンでは感じる事のなかったプレッシャーとでも言おうか。

 ステラたちはそんなもの一切感じ取ってはいないようだが。


 ともあれここでうだうだ言っても仕方がない。ダンジョンに足を踏み入れた以上、行くしかないのだ。

 上級者向け、ではあるが恐らくここでキールが望むようなアイテムは手に入らないだろうし、目指すは城のある場所のダンジョンだ。あの場所のダンジョンが、今の所最大規模と言われている。そして過去に僅かではあるが秘薬が発見されたなんていう話もある。望みがあるのは確かだし、であればそこに行くためには足を止めている暇もない。


 そう、内心で決意を固めていたというのに。


 ステラたちの後にくっついていくだけで特に苦戦する事もなく、むしろあっさりと階層主を倒してしまっていた。

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