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異世界からの勇者召喚 失敗!  作者: 猫宮蒼
一章 ゲームでいうところのありがちな追加要素

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人によっては最終兵器



 この世界のダンジョンが自然発生などではなく、人為的に作られたものである、というのはステラもルクスも早々に理解していた。町や村が出来て、そのご近所に実はダンジョンが……とかならまだしも、ダンジョンが出来てからそこを起点に町や村を作る、という話を聞いた時点でそこに気付くのはある意味で当然の話で。


 ステラたちがかつて足を運んだ聖王国のダンジョン村のようなもの、と思えば同じではあるけれど、ステラたちの世界のダンジョンでそういったものは数える程度でしかない。

 しかしこちらの世界のダンジョンは全部が全部そう、となれば、明らかにおかしいのだ。


 不自然だとも言える。


 全部が全部そんな感じなのにダンジョンは自然由来のものです、とか言われる方がどうかしている。そんな不自然なダンジョンが自然であってたまるか。

 もし自然発生だとしたら、この世界を作った創星神はどこか頭のネジがイカれているとすら思える。


 以前別のダンジョンでキールやアゲートが話してくれた内容も踏まえると、どう考えても人為的であるのは確かなのだ。

 戦いの最中で大技ぶちかましてダンジョンの壁とか床とかに傷がつきました、くらいならまだしも、明らかにダンジョンを破壊しようという行為を行えば何らかのペナルティが発動する。キールたちはそれをペナルティだとわかっていないようではあるが、偶然にしたって……と思えるものだ。


 だからこそ、本来あるはずのない場所に隠し部屋がありました、なんて偽装をすれば遅かれ早かれどこかでダンジョン関係者が出てくるのではないか。ステラもルクスもそう思ってはいたのだ。


 可能性としては神族。光あるところに闇がある、の法則でこちらの世界にも魔族が存在しているかはわからないが、それに近しい種族がいたとして、ダンジョンに関わっているかは微妙なところではある。

 神族と手を組んでダンジョンに関わっている可能性はあるかもしれない。


 どちらにしても、いずれはステラたちの前に現れる。

 それが人の姿をしているか、もしくは災厄の形をしているかまではわからなかったが。



 けれども今、こうして目の前に明らかにダンジョン関係者ですと零した人物が現れたのだ。

 ステラもルクスも内心「よっしゃあ!」という気持ちだった。

 思っていたよりも早く出てきてくれた。

 それもあって、つい、まるで何かのスポーツで敵チームから逆転した時のような勢いでもってハイタッチしてしまったが、まぁそこはどうでもいい。


 隠し部屋があるはずがない、なんて言いきれるのはダンジョンに関わっている者くらいだ。

 単なる探索者であればそんな事わかるはずもないのだから。


 いやこれただの言いがかりだったらどうかな……と一瞬だけ思ったりもしたけれど、けど、実際にあのダンジョンにはルクスが作った隠し部屋という名の新しい部屋がそのまま残されている。

 足を踏み入れるたびに内部が変化するタイプのダンジョンならともかく、あのダンジョンはそういったものではない。であれば、隠し部屋が発見された後はずっとそこにその部屋があっても何もおかしな話ではないのだ。

 だからこそ、あの隠し部屋があるはずがない、だなんていくら妬ましさだけであっても言えるはずがない。だって実際にそこにあるのだから。そしてそれを目にした上で隠し部屋なんてあるわけないなんて言えるのは、余程現実を見る事ができない馬鹿かダンジョンが出来るにあたっての関係者かのどちらか。


 ただの馬鹿ならいくら外であいつらはインチキした! なんて言ったところでそいつが可哀そうなものを見る目を向けられるだけだ。

 けれどもし、ダンジョンに関係する者であったなら、それを大っぴらに言えるかは……恐らく言えないはずだ。

 ダンジョンづくりに関わっている、なんて言えば、じゃあもっといいダンジョンを作ってくれよとか色々と横やりが入るに違いないし、それこそ国の思惑なんてものが大きく関わってくるに違いない。

 戦いの果てに得られる財宝に価値を見出しているような人物ばかりならともかく、下手をすれば死ぬ事だって有り得る状況。楽して財宝が得られるようなダンジョンとか作れ、なんていう無茶振りを言い出すような奴だって出てくるだろう。というか、もしそんなダンジョンがあったら国がそこを占拠するに違いない。


 少なくともこの世界の普通の人間にはできない芸当である事は確かだ。仮にダンジョンを作る事ができるアビリティなんてものが授けられていたとして。

 それだって万能の力というわけでもないだろうし、であればやはり人に知られると面倒な事にしかならない。


 だからこそ、こうしてダンジョンの中で他に人の目が無い事を確認した上で言ってきた。

 ステラもルクスもそれを理解している。


 実際このダンジョンが変異してから、ステラたちより前に来た探索者というのは既に立ち去っているし、そうであれば今このダンジョンにステラたち以外の探索者がいるはずもない。けれども彼女はそこにいた。

 探索者ギルドに顔を出さずにそのままダンジョンに潜っていれば、ギルドの職員が知らないのは当然だけど、では仮に来るかどうかもわからないステラたちをこんなダンジョンで待ち続けられるか、となれば正直それもないだろう。


 ステラたちがここに来た事を何らかの手段で知り、そして先回りをするようにここで待っていた。

 仮に人の目を気にしないのであれば、それこそもっと大きな街なんかで人の通りが多い場所あたりで宣言すればいいだけの話だ。

 目撃者が多ければ多いだけ、ステラたちの悪事を暴く事にもなるわけだし。

 けれどもそれをしないのは、単純な話できないからだろう。


 ステラたちがインチキをした、というのを誰が聞いても確かにそうか、と理解させられるのはダンジョンを作った本人だとか、そういった存在くらいだ。けれども存在を大っぴらにするつもりはない。できない、という可能性もあるがそこは今どうでもいい。


 重要なのは、ダンジョンに関係しているであろう人物がステラたちの目の前に現れた。それだけなのだから。


「それで? わざわざのこのこと出てきてまで言う事が認めない、だけって事、ないでしょ?」

 例えば彼女にダンジョンに入れないようにできる手段があれば話はまた変わってくるかもしれない。けれど、流石にそこまでの権限はないだろう。

 というか特定の人物をダンジョンに入れないようにして作る、というのは流石に難しすぎる。これが種族だけを限定して、とかならまぁ、できなくもないのだ。ステラたちの世界の神族あたりなら。


 けれどもそこまでの手間をかける必要性がない。


 例えばこちらの世界のダンジョンが神が与えたもうた試練である、とかいうなら神の敵となり得る相手を入れない、というのはわからないでもない。けれども別にそういった伝承があるでもなく、ダンジョンはこの世界では何か唐突に発生して、そうしたらそこを中心に人里を作るというある種の目印となっているものだ。

 ダンジョンに入るのは探索者が多いが、探索者以外が入れないわけでもない。

 探索者としてギルドに登録してギルドカードを発行してもらえれば転移装置などの恩恵があるけれど、なくてもどうにかなるにはなるのだ。

 あまり規模の大きなダンジョンだと厳しいが、小規模ダンジョンであれば別に転移機能がなくても行って帰ってくるくらいは実力があれば可能なわけだし。


 例えば何かやらかして、探索者ギルドの方から探索者としての資格を剥奪する、とかいうのであればまだ可能性はある。けれどもそれだってダンジョンの中で意味もなく他の探索者に危害を与えたりだとか、言い逃れできないような犯罪を犯しただとか、他の探索者、更には探索者以外の相手に迷惑がかかる、なんていう場合だろうと思われる。


 現時点でステラたちがやらかしたのは、ダンジョンに本来あるはずのない隠し部屋を作ったくらいだ。

 ダンジョンがそう簡単に傷つけられる事がないものであるというのはこの世界の人間からすれば周知の事実だろうし、であればステラたちがそれをやらかした、という明白な証拠にはならない。他のダンジョンでも移動面倒だから壁ぶち抜いて通る事にするわ、とかやらかしてたならともかく、隠し部屋を作った以外でダンジョンを傷つけるような事はしていないのだから、仮に他の誰かにそんな事を言われても果たしてどれだけの人物がそれを信じるだろうか。


 まず大半の人間は信じない。目の前でその光景を見た、とかであればまだしも話だけを聞いてそれをすんなり信じる者は一度でもダンジョンに足を踏み入れた探索者であればまずいないだろう。


「当然、貴方達には裁きが下ります。さぁ、あのダンジョンを傷つけた報いをうけなさい」


 びしっと指を突き付けて宣言する目の前の彼女に、ダンジョンの中に隠し部屋を作った実行犯でもあるルクスは「私?」とばかりに小首を傾げた。

 ついでに部屋を作ったのは確かにルクスよね、とばかりにステラが視線を向けていたし、ベルナドットやクロムも「あー」と言いたげな顔をしてルクスを見ていたのだから、誰がやらかしたか、なんてのは彼女からしても一目瞭然と言えた。


 すっと懐から彼女が取り出した物は、見た目だけなら杖のような形をしていた。とはいえその長さは圧倒的に短い。魔術師たちが使う杖やロッドの長さと比べれば三分の一にも満たないだろうそれ。

 ステラはどちらかといえば何か玩具とかにありそうね、くらいに見ていたくらいだ。

 こう、魔法少女変身セット、とかにありそうな、幼い子が持つなら丁度いいサイズなんじゃない? と言いたくなるような大きさ。事実懐に入るくらいの大きさだ。だからこそそれを杖だとはすぐには思えなかったくらいだ。


 異様な気配を察したのか、キールとモリオンが身構えてはいたものの、ステラたちからすればそれを脅威とは思えなかった。とりあえず何かしてくるのはわかったが、敵意こそあれど殺意はない。

 玩具にしか見えない杖、というかステッキ? ともあれそれを手にずいっと前に突き出してきた彼女が、

「食らえ!」

 とか叫んだけれど、魔力が爆発的に、とかそういうわけでもない。カッと光ったし確かに何か凄そうな演出ではあったものの、その光がルクスに命中してルクスを包み込んだとはいえ。


 それだけだった。


「え、これ私ちょっと苦しんだりしてあげた方がいいのかな……?」


 小声で、しかしそれでも今しがた何かをしでかした彼女に聞こえる程度の声量で、ルクスはステラに向かって問いかけた。


「えっ、そう思うならもっと早くに苦しんだりする演技しないとダメじゃない。今から苦しまれても時間差にしたってちょっとタイミング悪すぎるわ」

「いやだって、もっと何かこう、あると思ったんだよ。けど実際がアレだろ? 私だってそんな絶妙なタイミングを常に発揮できるわけじゃないんだよ」

「確かにそうだけど。それなら人差し指向けてバーン、とか撃つ真似してもらった方がまだリアクションしやすいとかあるけど。

 え、でも彼女、ホントに何がしたかったのかしら。ルクス、ホントに何ともないの? もっとこう、頭痛がするとか心臓が痛いとかないの?」

「何がしたいのか理解に苦しむという意味で頭は痛いし、もしこれ盛大に外してるなら痛々しいなという意味で心が痛むのはあるけど、まさかこれが……?」

「あっ、正常ね。それは私も今あるから」


 小声で。しかしそれでも彼女にも聞こえる声量で会話するステラとルクスに、いやホント何がしたかったんだ? という目が向けられる。主にベルナドットから。


「まさか、それは……ッ!」


 いきなり目の前に現れて盛大に滑ったとしか思えない彼女の扱いをどうするべきか悩みかけてたステラたちの意識をかっさらうように、キールが声を上げた。


「神の祝福を……アビリティを消滅させるという神器……!?」

「えっ、あの、一度だけしか使えないと言われているものの、ごくまれにダンジョンの中で発見されるらしいと言われている、あの……!? 主に大罪人に使うために使われるから見つけた探索者は必ず国に提出しなければならないとされている……あの……!?」


 キールの言葉に、モリオンが目を見開いて彼女の方へ視線を向けた。

 キールの言葉だけであったなら、何それ、とステラも聞いていただろうけれど、直後のモリオンのセリフで察したので心の中で「説明おつ」とだけ思う事にする。


 ダンジョンの中で見つけた物は基本的に見つけた探索者の物ではあるが、何事にも例外はある。その例外にあたる物が、目の前の彼女が手にしているそれなのだろう。

 それと同時に何だ、と思う。

 一度だけしか使えないのであれば、使いどころは重要だ。

 国が大罪人に使うとしているのは、その罪人のアビリティが物騒であったからか、それとも単にお前は神からも見放されたという意味合いでのものなのかは知らないが、ともあれ神の祝福が消えたとなれば周囲から向けられる目もそういった意味合いのものへと変わる。

 アビリティの恩恵を受けていたなら、それが消えた事で未来永劫もうそれを与えられる事もない、という意味では罰としても充分だろう。


 だがしかし、その一度しか使えない、ダンジョンの中でも滅多に見つかる事のない貴重なそれを、目の前の彼女はどぶに捨て去った、と。

 勿論本人にそのつもりはなかったのかもしれないけれど、それでも一度しか使えない貴重なアイテムを無駄にロストさせる事になったのは事実だ。


 キールとモリオンは大丈夫なのか? と言いそうな勢いでルクスを見ていたが、大丈夫に決まっているではないか。そもそも最初からルクスにアビリティなんてないのだから。


 というか、キールだってステラたちがアビリティなんて持っていない事くらい知っているだろうに。とはいえ、滅多にお目にかかる事のない神器とやらを見て、アビリティがないなんていう些細な部分がすっ飛んだのだろう事くらいは容易に想像がつく。


 しかもどうやらその神器、仮に使った相手にアビリティがなかったからノーカンね! あと一回使えるよ! とかいう親切設計でもなさそうだ。取り出した時に薄っすらと感じ取れた力は、光った後は全然何にも感じられなかった。

 貴重なアイテムどぶに捨てたとか、ねぇどんな気持ち? とは流石に言わない。


「えぇと、ゼロに何かけてもゼロ、ってのはわかってる……?」


 ただ、率直に言うのはどうかと思ったので若干言葉を選んだものの、選んだ上で発した言葉がこれだった。

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