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異世界からの勇者召喚 失敗!  作者: 猫宮蒼
一章 ゲームでいうところのありがちな追加要素

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特攻武器



 錬成台に気を取られたものの、興味を失ってしまえば最早用無し。わざわざ錬成台を使ってまでアイテムを作ろうと思わなかったし、今すぐ使う必要性もない。

 これがステラたちではなく普通の探索者であったなら、足りないアイテムを補充するべく手持ちの素材から薬などを作れないだろうかと考えたり、実際錬成魔術のアビリティ持ちがいたなら実行していただろう。


 けれどもステラからすれば特に必要なものでもない。

 魔力粉無しでアイテムが作れるのは確かに少しばかり便利かな、と思わなくもないのだが、それには錬成台を必要とするわけで。

 街中にも錬成台がないわけではないらしいけれど、モリオンの話からして錬成台があるのは錬成魔術を使える者の工房とかそういった場所らしい。

 確かに町の中央とかに錬成台がドンと置かれている、なんて光景は今まで見た事がない。


 ステラたちはダンジョン探索するのもやってはいるけれど、新しい町に到着した時は一応町の中も見て回っている。目的はダンジョンとはいえ、だからといってそれ以外は何も見ないなんてのも味気ない。割と観光気分でもあった。


 とはいえ、そこまで目新しいものがあるわけではなかったが。


 錬成台から作れるアイテム一覧、みたいなのを知ったからとて、ステラからすればへー、そうなんだー、で済むようなものだ。

 薬に武器に防具にゲームで言うところのステータスを上げたり状態異常を防ぐような装飾品の作り方なんてのもほぼ知る事になってしまったが、こちらの世界でのレシピであって別に自分が住んでた世界のレシピでも作れないわけじゃない。

 レシピに若干の違いはあれど、そこまで大きな差もない。


 向こうの世界にないような道具とか作れたらそれはそれでもうちょっとテンションが上がったかもしれないが、残念ながらステラの興味を激しく惹くようなものは存在しなかったのだ。


 錬成台についてはもういいかな、となったのでとりあえず一行は休憩をとる事にした。

 正直必要ないかな、と思ってもいたけれどキールとモリオンは休ませておかないと厳しいだろう。何せ二人は人間で、魔術師だ。体力的にもそこまで自信がある方でもなさそう。

 そりゃあ、ダンジョン探索をした事のないような人間と比べれば体力はそれよりある、と言えるけれどステラたちを基準にしてしまうと問題が出る。


 今回ダンジョンに出てくる魔物が形状の違いこそあれどほぼゴーレムばかりという事もあってキールもモリオンも戦闘ではあまり役に立っているわけではない。ほとんど見学しているだけと言ってしまえばそれまでだ。

 けれども、疲れていないわけではない。戦っていない分魔力は温存されているけれど、もし何かの拍子にステラたちと分断されるような事になったら……なんて考えればただぼーっと見ているだけでいられるはずもない。恐らく無いとは思うけれど、それでも万が一の事を考えたりしていれば気疲れくらいはするだろうし、まず無いと言えるけれどクロムが殴ったゴーレムの破片がうっかりキールたちに飛んでいかないとも限らない。

 そんなもしもを想定して油断しないようにしてはいるので、元気一杯というわけでもないのはステラでも気付く。



 今回訪れたこのダンジョン、本来ならばまだ先があるし、内部が変化したとはいえ全体的な階層数まで変わったわけではないはずだ。入るたびに内部のフロアが変化するダンジョンであっても全体的な階層数まで変わるといった話は聞いた事がない。

 全体的な階層数に変化がないと考えた上で、今ステラたちがいるのは最初の階層主を倒した地点。

 三分の一しか進んでいなかった。


 十階層から十五階層くらいまでのそこまで大きなものではないダンジョンであれば日帰りで攻略していたが、流石にその倍はあろうかというダンジョンはそうもいかない。休みなしで突き進めば可能かもしれないが、最下層へ行く頃にはキールたちが体力的な意味で死んでるのが目に見える。

 今回は泊りがけでダンジョン探索する、という目的もあるのでそこまで急ぐつもりもない。


 ダンジョンの中にいると時間の感覚も少々あやふやになるけれど、若干昼夜の感覚が狂うくらいでダンジョンから戻ればある程度どうとでもなるものだ。

 むしろダンジョンの中では休める時に休んでおかないと後が大変なので、朝だとか昼だとか夜だとかといった事を気にする者はあまりいない。


 ダンジョンの中は相変わらず朽ちた建物だったものがあるのがかろうじてわかるような景色で、それはこの安全地帯もそうだった。元は階段のあたりを囲うか覆うようにしてあったのだろうな、と思える白い柱だったであろう物は既に折れたり倒れたりしているが、道をふさがれているわけでもない。むしろ階段のある場所は大体同じような事になっているので逆にわかりやすかった。


 階段付近にとどまらず少し離れた場所にキャンプ用品を出していく。

 バーベキューをするつもりは今回はないので、キャンプ用品といってもイスとかテーブルくらいだ。テーブルの上には事前に購入しておいた軽食を並べ、飲み物も用意しておく。

 早速イスに座ったキールとモリオンが飲み物に手を伸ばす。

 そうして一口、二口と飲み込んで、はー、と深く息を吐いた。


「戦ってないからそこまで疲れてないけど、なんだろう、どっと疲れた……」

「もし魔物がこっちに向かってきたら、とか考えちゃうからじゃないですか? そうなったら対処できませんもん」

「そうなんだよな……いざという時にどうにかできる、ってなればまだしもどうにもならないってわかってるから余計に……」


「いや、あのゴーレム魔術普通に通じるやつだよ?」


「えっ!? そうなんですかルクス様」

「気付いてなかったのか……きみらが最初の方で使った魔術が効かなくて通じないと思ってしまうのも無理はないけど、ゴーレムごとに形状が違うのは流石に見ればわかるだろ? で、きみらが使った魔術はたまたまそのゴーレムに効かないやつだったけど、別の奴には効果あるはずだけど」

「そうは言うけど、なんでそれが?」


「倒したゴーレムが落としたドロップアイテムのゴーレムの破片とか見ると属性ついてるっぽいから。そこから見るにその属性の守りがついてるのは明白だろ?」

 火属性に強いゴーレムに炎の魔術をぶちかましたところで効果は薄い。反対の属性を持つ術であれば通るけれど、最初の時点で魔術が効果なし、と思ってしまえば他に色々試そうとしても魔力を無駄に消費するだけと考えてしまい……といったところか。

「なんだったらゴーレムに効果のある打撃武器とか用意しましょうか?」

 見てるだけ、とはいえ万が一の事を考えると対抗手段がないというだけで精神的にもくるものがあるのだろう。であれば、ある程度効果のある武器でもあれば気持ちは変わってくるかもしれない。そう思ってステラが声をかければ、キールは訝しげに、

「そんな都合よく用意できるものなんですか……?」

 と聞いてくる。


「作ればいいじゃない。できるわよそれくらいなら。モーニングスターとかでいいならパパっとできるけど」


 先程の錬成台を使わずとも、アイテム合成でやればキールとモリオンが持つ分ならそれこそ本当に一瞬で作れる。とはいえ、実際にステラがアイテムを作るところを見たわけではない二人は本当にすぐにできるものなのか……? といった若干の疑いが浮かんでいる。


「そりゃ私だってなんでもかんでも作れるってわけじゃないけど。さっきまでに入手したあれこれ使えばできるわよ。他のダンジョンでも使えそうな素材は拾っておいたし」


 やる気になれば作れない物はないけれど、それを言うとアズリアの呪いを解くアイテムを! とか言われるだろうし、そうでなくとももっと強力な武器を、だとか防具を! とか言われるだろうなと思っているので、ステラはあえて控えめにのたまう。

 なんだかんだ長い年月を生きているので、集めた素材とかそれこそシャレにならない量あるし、正直ここでいかにもな伝説の勇者が持ってそうな聖剣とかも作れるけれど、やり過ぎた結果こちらに負担がかかるのは遠慮したい。

 それでなくても何でも作れる、なんて思われて最初のうちはまだしも、そのうちどこまでエスカレートするかわかったものじゃないような事を安請け合いするつもりもなかった。


 ゴーレムの破片だとか核の破片だとか、まぁいくつかの素材を集めてそれらを合成して、更に別の素材で武器を作る。そして合成した結果、見た目はただのモーニングスターだが密かにゴーレム特攻、とかいう特性のついた武器が完成した。


 モリオンは手にしていたロッドを腰に差して、今しがたステラの作ったモーニングスターを受け取る。

 キールは最初から杖もロッドも持たずにいたので、そのまま受け取った。


 見た目はただのモーニングスターだ。それこそ武器屋で売られているものとそう変わらないように見える。

 ただ、以前武器屋で手にしたモーニングスターよりは少し軽いかな? といった感じだ。


「本当にこれ、効果あるんですか?」

 正直いきなり目の前の空間からぬっと出てきたモーニングスターが、果たして本当にステラが今作ったものなのか、キールにはよくわからない。いや、いきなり出てきた事には驚いたのだけれど、だからといってそれが本当に効果のある武器か、となると話は別だ。

 ステラなりのちょっとしたジョークである可能性も捨てきれない。


「まぁ、実際使ってみないとわからないものよね。じゃあ、もうちょっとしたら休憩やめて、次の階層行きましょうか。そしたらイヤでもわかるから」


 そう言われてしまえばここでうだうだいつまでも言うつもりもない。

 試してみればわかる。

 それはその通りだ。


 テーブルの上にあった軽食に手を伸ばして、少しでも口にいれておく。

 今はまだそこまで疲れ切っているわけでもないが、次の安全地帯までの間に体力がもたない、なんて事になるのは避けたい。


 更には次の階層からはきっと今までに出てきたゴーレムよりも強力なのが出てきたっておかしくはないのだ。

 そこまで期待はしていないけれど、それでも多少なりとも使えれば……キールとしてはその程度の期待しかしていなかった。



 休憩を終えて、キールとしてはあまり気乗りはしないけれど次の階層へと向かう。


 そうして辿り着いた次の階層で、早速ゴーレムとエンカウントした。

 見た所武器と防具をしっかり身に着けたこれまた強そうなゴーレムだ。仲間と行動していたらしく、三体のゴーレムはこちらを見るなり襲い掛かってきた。


 ばぎょおおおん。


 そんな音がしたのは、直後の事だ。

 音がした方を咄嗟に見れば、そこにはキールと同じくモーニングスターを手にしたモリオンがどこか呆然としたように立っている。

 その目の前には何らかの残骸というべきか、破片となった何かがあってそれらはすっと消えて――魔物コインへと変化した事でそれが何であったのかを悟る。


「へ……?」

 三体の中でやや素早かったゴーレムがモリオンの方へ襲い掛かっていったのだ、と理解したのはそれから少し遅れての事だ。その時点ではもう既に残りの二体はベルナドットとクロムによって倒されている。


「ほら、ちゃんと効果あったでしょ?」


 まだ何が起きたのか理解しきれていないモリオンに、ステラがそう言って、そこでようやく理解が追いついたらしい。


「す、凄いですステラ様! こっちにゴーレム向かってきてビックリして思わず振り下ろしちゃったけど、まさか一撃で倒せるとか思ってなかったです!」

「ゴーレムに対して威力はあるけど、それ以外の魔物には普通のモーニングスターだから、それ。そこだけ気を付けてちょうだい」

「はい! このダンジョンの中では最強の武器みたいなものですね!!」


 顔を真っ赤にさせてモリオンが凄い凄いと賛辞をおくる。


 確かに今の時点でこのダンジョン、ゴーレムしか出てこないのであれば、つまりこの武器、このダンジョンの中で最強を誇るといっても過言ではない。


 錬成魔術に関してそこまで詳しくはないキールであっても、少しくらいは知っている。けれども、今までに錬成魔術でこんな特定の魔物に効果をもたらすような武器を作れるという話は知らない。

 錬成魔術よりもヤバいんじゃないだろうか……


 手に持ったモーニングスターが、やけに重さを主張してきた気がした。

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