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異世界からの勇者召喚 失敗!  作者: 猫宮蒼
一章 ゲームでいうところのありがちな追加要素

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ストーリー性は特になかった



「なんていうか、思ってたのと違ったわね」


 ダンジョンの中を流れる川は、そこまで大きなものでもなかった。

 本流――そもそもダンジョンの中なので水源はどこからとかそういった部分に疑問を抱くのも微妙ではあるが、ともあれ本流というよりは支流、といった感じのもので更には水の流れも勢いはあまりない。水が流れてくる途中のどこかで岩か何かで塞がって、徐々に川ではなくなっていくのだろうな――といった感じすらあった。


 とはいえこれが外であるならば、そういった部分を探して岩をどうにかするだとかして川を復活させようとする動きもあったかもしれない。しかしダンジョンの中、そんな川の流れを塞いでいるものが本当にあるかどうかも疑わしい。

 今まで行ったダンジョンの中で森のようになっている場所もあったけれど、そこだって確実に上は天井であるはずなのに空が広がっているようにしか見えなかったり、あるはずのない太陽の光が降り注いだりしていた。

 何で? という疑問はあったし実際キールに尋ねたりもしたけれど、ダンジョンだからという思考停止したみたいな答しか返ってこなかったので恐らく探索者たちのほとんどがその答を知る事はないのだろう。


 ただのステージとして成り立っているのか、それとも何らかのギミックなのか……とステラは考えてみたけれど、仕掛けめいたものも特にはない。

 多分本当にただそういうもの、といった感じなんだろうなと川のあたりを調べていくうちに考えはそちらに傾いた。


 周囲を哨戒するように移動していたゴーレムが襲い掛かってきたけれど、それは大体ベルナドットの放った矢で一撃、もしくはクロムが殴って一撃。まぁ結果として一撃である。


 思ったよりも脆いのね、なんて思っていたが単純に攻撃力の差だろう。

 ベルナドットの持つ弓矢はステラお手製のやつだし、そこらの探索者が使う武器より威力はかなり上だと思われる。ゲームで例えるなら序盤の町で買えるのがこちらの世界の探索者たちの持つ武器で、ラスダンの宝箱とかに入ってる最強装備みたいなのがベルナドットの武器だ。

 そりゃ、探索者たちが倒しにくいと思うような相手であってもこちらからすればそれこそ、そこらに飾ってる花瓶を叩き割るくらいに容易い。

 クロムとて魔族であるわけだし、肉体の強度は人間以上だ。こちらの世界の人間とステラたちの世界の人間種族は恐らくそこまで違いはないだろうと思えるので、それを基準に考えればまぁクロムがここらで苦戦するとは到底思えない。


 そもそもベルナドットだって植物の精として蘇った時に身体能力も上がっている。弦を引く手は今まで以上にスムーズに動いているし、周囲魔族ばかり、なんていう環境で手加減なんてしている余裕もなかったしで、戦ううちにかつては苦手としていた対人戦もいつの間にやら克服している。

 むしろ今の俺、もう人間じゃないなら下手したら魔物扱いされて討伐される側になるんじゃね……? なんて言っていた事すらある。敵対するつもりがない相手に意味もなく攻撃叩き込むような事はしないけれど、敵対する相手に容赦はしなくなった。


 そこら辺を考えると変わったわね……と思えるが、まぁそれはさておき。



 流れも緩やかに止まりかけているような川の水を調べたり、ついでに襲い掛かってきたゴーレムを倒してドロップしたガラクタを調べたりしつつも先へ進んだステラは思ったのだ。

 何か思ってたのと違ったな、と。


 実際に思ってしまったが故につい言葉は口から出てしまったけれど、まぁ今更だろう。

 ゴーレムは見た目いくつかの種類があったので、このダンジョンを一つのステージと仮定して、きっと役割があったに違いないとは思えた。


 実際に攻撃力に特化したらしきゴーレムだとか、素早い動きで移動する見張りか仲間を呼ぶ役割があるのかわからないが、ともかくサポートが得意そうなゴーレムだとか、はたまた敵を足止めする役目でもあるのかと言いたくなるような、大きな盾のような姿のゴーレムだとか。

 様々な種類のゴーレムが襲い掛かってきた。


 仲間を呼ぶタイプはこちらの姿を確認すると大きな音を立ててすぐさま遠くへ行く挙句、仲間がやって来た後そいつらを倒したらまた仲間を呼ぶという無限ループみたいな事をしてくるので、普通の探索者からすれば鬱陶しい事この上ないだろう。一定の距離をとってこちらが倒れるまで仲間を呼び続けるとか、ゲームだったら経験値稼ぎにはうってつけかもしれないものだが、実際ここらの魔物は倒したところで旨味がないと評判である。

 そうなればただひたすらに鬱陶しいだけだ。


 成程、これはハズレダンジョンとか言われるのも仕方なし……! なんて思えてくる。


 実際素材としても頑丈らしく、ベルナドットやクロムは簡単に破壊していくけれど、キールやモリオンが魔術で攻撃した時はあまりダメージを受けた様子がなかった。

 元々魔法生物に分類されるものだから、魔術に対する抵抗力も高いと考えても、それにしたって……と言いたくなるくらいに攻撃が通らない。


 やや高威力の魔術であれば動きを一時的に止めたり多少のダメージは入るようだが、致命傷には至らない。


 仮にこのダンジョンに足を運んだ探索者たちの中にまだ魔術師を仲間に入れていた者がいたとしたら、最悪ここで役立たずの烙印を押して仲間から追放されるのではないかと思えるくらいに――悲しいかなモリオンもキールもあまり役に立っていなかった。


 このダンジョンに足を運ばなければいいだけの話かもしれないが、他のダンジョンにもゴーレムタイプの魔物は存在している。そういった相手を全て回避できればいいが、そうもいかない場合は魔術師を足手まといとする者は少なからず出てしまうだろう。


 とりあえず倒したら高確率でアイテムがドロップするけれど、ゴーレムの破片とか魔法生物のコアの残骸とかいったアイテムばかりだ。ステラからすれば使い道はいくつか浮かぶものの、そうじゃない相手――普通の探索者からすれば確かにこれはただのガラクタでしかない。

 探索者ギルドでは魔物コインを換金する以外にダンジョンで見つけたアイテムの買取もやってはいるけれど、これらのアイテムは雀の涙よりも少ないと思えるくらいの買取金額らしい。


 ちなみに他で買取している店へ持っていったとしても正直売り物にならないから買取拒否される事もあるのだとか。


 ステラからすれば使い道は色々あるのでむしろここ宝の山みたいなダンジョンじゃない、とは思うのだが、そうじゃない相手からすれば本当にガラクタしかでないハズレダンジョンであった。


 奥へ奥へと進んでいくにつれて、何だか最初の方で見たゴーレムが強化されましたよ、みたいな見た目のゴーレムが出現するようになった。

 パワータイプのゴーレムだったそれに鎧っぽいのが装着されてるだとか、はたまたやたらでっかいサーベルみたいな武器を持ってるだとか、いかにもな感じだ。

 とはいえそれらも別に敵ではない。

 剣を持っていた手をベルナドットの矢が打ち抜いて、そのまま砕けた腕は武器を持った状態で落下する。武器を失ったゴーレムはそれでもこちらに襲い掛かろうとしていたが、すぐさま第二射がゴーレムの足を貫いて、自らの身体を支えきれずに倒れていく。


「今のを魔術でできれば役に立てるんでしょうねぇ……」


 遠い目をして呟いたモリオンに、キールがそっとモリオンの肩に手を置いて首を横に振った。

 できたら、そりゃそうだろうよ。そんな声が聞こえた気がしたが、実際のキールは無言のまま首を横に振っている。

 思うだけならタダとはいえ、考えると虚しさしか出てこない。


 そもそも最初の方で出てきたゴーレムにもあまり魔術が通用していなかったので、それよりパワーアップしてるらしきゴーレムにキールとモリオンの二人に果たして何ができるというのか。

 既に二人はステラたちがゴーレムを倒していくのをただ眺めるだけだった。


 もし仲間たちとこのダンジョンに来ていたらこんなのんびりゴーレムがやられる様を見ていられただろうか。魔術を発動させて、それでいて相手の攻撃を回避したりして、仲間のサポートへ、なんてやっていたらとてもじゃないがそんな余裕はない。わかってはいる。

 だからこそせめて、と二人は周囲を見て他にゴーレムが近づいたりしていないかを確認していたものの、キールやモリオンが新手に気付く前にベルナドットが矢で打ち抜いているのでこれもまたあまり役に立てたとは言えなかった。


「ベルナドット様、敵を察知するの早いですね」

「どういう感覚してたらあんな早くに気付けるんだ……」

 大抵のゴーレムはベルナドットが矢で打ち抜いて、そうじゃないのはクロムの拳で粉砕されていく。そうして倒されたゴーレムの魔物コインをステラとルクスが集めていく。

 あっ、そういう役割分担なんですね……みたいな感想しか出てこない。

 せめて自分たちも手伝えるだろうかと思ったが、ステラもルクスも慣れた様子で回収していくのでむしろ手を出せる余地がない。


 そこらの探索者以上にサクサクと先へ進んでいき、気付けば最初の階層主がいる場所まで辿り着いた。

 内部は地図通りとはいかず、それなりに移動に時間がかかったとはいえそれでももう辿り着いたのか……とキールは声に出さないまでも驚いてはいた。ここまで来るのにかかった時間は恐らく普通にここを攻略できる実力のある探索者が、地図通りの内部を進んでこの最初の階層主の所まで来るのとそう変わらないはずだ。

 内部が大幅に変わって、地図を見ても全然違うものになってしまって移動して次の階層への階段を探すだけでも手間取ったはずなのに。


 ダンジョン内で出てくる魔物のほとんどがゴーレムであったが、階層主もゴーレムだ。

 ただ大きさが違うくらいか。

 けれどもそれも思った以上にあっさりと倒される。


 階層主ってこんな弱かったっけ?

 なんて思えるくらいに本当にあっさりと。

 見ているだけならとても簡単に倒されたようにしか見えないけれど、いざ自分たちが戦えとなったら確実に苦戦するのは言うまでもない。


 やっぱ魔術師だけでダンジョン攻略するのって無謀なのかなー、とどこか遠い目をして倒れていく大きなゴーレムを見やる。倒された時点でゴゴゴゴ……となんだか大袈裟ともいえる音をたてて崩壊し、そして最後は綺麗に消えた。残ったのはドロップ品としての宝箱だけである。


「ゴーレムコアの欠片、大きめ。階層主倒してもドロップアイテムがこれじゃ確かにハズレダンジョン言われるわけよね。普通の人からすれば使い道ないもの」


 とか言いつつステラはひょいっとそのアイテムを収納した。


「あ、あの、ステラ様、そのアイテム、一体何に使えるんですか……?」

「何に、って聞かれると難しいけど、まぁ色々よね。食料にはならないけど武器とか防具とかその他アイテムに使おうと思えば使えなくもないわ」

 始終見学だけで終わってしまったモリオンが問いかけるも、ステラも具体的にこれ、というものが出てこなかったのかとてもふわっとした返答でかえされる。


「次のフロアは……あ、ちゃんと安全地帯みたいね。内部が変化してるっていうから最悪そういうのなくなってる可能性もあったけど、そこは変わらないみたい」

 階層主を倒した時点でこのフロアにもう用はない。というか、あまり長居すると場合によっては階層主が復活する可能性もあるし(そういうダンジョンがあるというのは話に聞いた)、ましてや他の魔物がここになだれ込んでくる、なんて事もあるかもしれない(やはり他のダンジョンであった出来事らしい)。

 長話をするにしろ休憩をするにしろ、ここではなく隣のフロアの安全地帯と呼ばれるところでするべきだろう。


 とはいえ、今ステラがさらっとシャレにならない事を言っていたので一瞬だけヒヤッとしたが。


 内部は確かに地図があまり役に立たない感じに変化していた。

 けれどもこうして階層主がいるところまでは来れたし、そういった意味でダンジョンとしての根本的な部分に変化はないと思っていたのだ。キールもモリオンも。

 けれどもし本当にステラの言うように安全地帯と言われるフロアがなくなっていたとしたら。

 ダンジョンから脱出できる転移装置もないのであれば、戻る時は来た道を引き返さなければならない。


「たとえ話であってもシャレにならないからやめて下さい……想像して一瞬背筋が凍りましたよ」

「そう? 正直いつなくなってもおかしくないと思うのだけれど。だってダンジョン側からすれば探索者は獲物でしょ? わざわざ帰してあげるようになってる事の方がよっぽどおかしな話じゃない」


 ステラの言い分に理解できなくもない。確かにダンジョンの中には魔物がいるし、入り込んだ探索者はそういう意味では獲物となるのだろう。それをあえて階層主を倒しさえすれば一瞬で町へ帰す事ができる機能があるという状況は、こちらからすれば便利ではあるものの確かにおかしな話でもある。


「えっと、ステラ様の世界にもダンジョン、あるんですよね?」

「あるわね。けど、こんな風に最初から帰るための装置とかはなかったわ。

 転移機能に関しては……そうね、そういったアイテムを作って、安全な場所に設置して、って感じだったもの。魔物が確実にいない場所を選ばないと、もしそんな道具を設置しても魔物に壊されてしまうし」

「……なんだか、大変な所なんですね」

「こっちの世界と違ってそこまでダンジョンが溢れてるわけでもないから、そうでもないわよ」


 というか、ステラたちからすればそっちの方が当たり前であるのだ。

 ステラたちの世界では一部のダンジョンは神族が作り上げたものだ。けれどもそれ以外はそうでもない。こちらの世界のように明らかに誰かが作りました、と言わんばかりなダンジョンがそこかしこにある方がどうかしているくらいだった。

 最初からこの世界で生まれ育っていればそんなおかしいな、と思える部分もきっとそういうもの、で受け入れてしまっていたことだろう。


「とりあえず次のフロアで少し休憩して、それから先に進みましょうか」


 あまりにもサクサクと進んできてしまったが、それでもそれなりに時間は経過しているしただ見ていただけとはいえキールもモリオンもそれでも何だかんだ疲れていたのは確かだ。だからこそ、その提案に反対する事もなく頷いて。


 転移装置のある安全地帯へ足を踏み入れ――


「あっ! 錬成台がある!」

 転移装置とはまた別のなんだかよくわからない台座を目にして、声を上げたのはモリオンだった。

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