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異世界からの勇者召喚 失敗!  作者: 猫宮蒼
一章 ゲームでいうところのありがちな追加要素

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出身世界が違うので常識とかよくわからなくて



「そもそも私この世界の生まれじゃないんだから、神の祝福とか与えられてるわけないじゃない。

 で、それ踏まえて聞くけど、マジックボックスのアビリティって具体的にどういう感じのやつ?」


 ダンジョンの中を進み、階層主を無事倒し転移装置で一階層へ。そこから転移機能を使いグリオ農村の拠点へ帰ってくるなり、ステラはキールにそう問いかけていた。


 そもそもここの魔術師たちは全員ステラたちが異世界出身である事は知っている。何せ勇者召喚の儀式に手を貸していたのだから、むしろ知らない方がどうかしている。

 いや、直後にクロムにボコボコにされたのでその際にちょっと記憶がトんでいたらその限りではない、と言えるかもしれないが、クロムもそこまでの勢いで殴ったわけでもないのでその記憶を消去してる奴はいないだろう。


「むしろぼくがあの時驚かなかった事をまず褒めてほしいくらいだ。随分軽装だなとは思っていたけど、勇者としての特殊能力とか何かあるのかな、とか思ってただけだったんだ……」

「あーね、そちらさん戦力的にも強い感じだし、そこまで階層が深くないダンジョンならサクッと行って日帰りで戻ってくれば問題ないからこその軽装なのかなとも思ってたけどさ、こっち」


 異世界から召喚した勇者だし、何か特殊なパワーがあってもおかしくはない。

 初心者向けダンジョンに最初付き添った時はそもそも遭遇した魔物のほとんどはクロムが倒していたし、他の面々も余裕そうではあったけれど。

 その後は付き添うでもなく彼らにダンジョン探索を任せていたし、そういう能力があるとまでは知らなかったのだ。

 ステラたちが中級者向けのダンジョン――つまりキール達と同程度のダンジョンへ行けるようになってからは、探索アイテムの一部はキール達が回収していたし、ステラたちが回収した物はそういえばベルナドットのポーチの中に突っ込んでいたように思う。

 あまり大きな物はなかったので、そのポーチの中に入れているのを見てもあまり不思議に思う事がなかったのも今回何気に驚いた原因の一つだ。


「っていうか、ベルくんのポーチもだけど、私もルクスもクロムも、皆これくらいはできるわよ。

 自分の周囲の空間に荷物収納するのなんて。

 でも、アビリティのマジックボックス? それ、似たようなものであっても違うものでしょ?

 それもあって一応ちゃんと聞いておきたいんだけど」


「全員……? というか、ベルナドットさんのポーチってもしかしてとても凄いアイテムなのでは……?」

「俺も一応空間収納できないわけじゃないんだけど、あまり得意じゃなくてな。ポーチは補助道具みたいなものだな」


 ベルナドットがこたえれば、キールもベラクルスもぽかんと口を開けて四人を見ていた。


 ステラがマジックボックスとやらについて聞きたい理由は、そこまで大したものでもない。

 ただ、これが自分のアビリティよ、とよその探索者に思わせるだけなら別に問題ないのだ。

 けれど、もし実際のマジックボックスのアビリティを持った相手がいたとして、そいつに「それはマジックボックスのアビリティとは違うものだ」とか言われたらそれはそれで面倒な事になりかねない。

 教会とかでアビリティに関しては調べる事ができるらしいが、精度は低いように思えるので誤魔化そうと思えば誤魔化せる。


「と、言われましても……そもそもマジックボックスのアビリティ持ちの人もそう多くないんで詳しくはわからないのですが……ただ、鞄や袋なんてものがなくとも念じるだけでアイテムを収納したり取り出したりする能力、という風に伝わっている程度なので」

「そうさな。自分が知ってるマジックボックスのアビリティ持ちの奴は確か、上級者向けダンジョン……つまり城とかあるところを根城にしてるような探索者の仲間になってるとかって聞いたくらいで他にいたかはちょっとわからんな……」


 キールが困ったように知っている情報を口にして、ベラクルスがそこに付け足すように言った。

 どうやらそこまで大量に持ってる人がいるというアビリティではないらしい。


「戦闘向きではないけれど、持ち物を沢山持てるから大きなダンジョン探索の時にいてくれるととても便利だとかで、結構実力のある探索者たちに引き抜かれたって話は聞いた気がするけど、あれか……」

「そうそう。そこで前まで働いてた荷物持ちの奴が追い出されたって話あっただろ、それ」

「あぁ……」


 あっさりと言うベラクルスに、キールはなんとも言えない表情を浮かべていた。


 普通の荷物持ちであれば、持てる量にだって限度がある。けれどマジックボックスというアビリティ持ちであれば、大量に物を運べるしましてや重さも気にしなくていい。実力がある探索者であれば、非戦闘員であっても一人くらいなら護衛できるだろう。

 前にいた荷物持ちがゴミでも捨てるくらい気軽に追い出されたんだろうな、と思ったのはその話をしたベラクルスの表情もまた苦い物でも食べたかのような、あまりいい話題ではないと理解している様子からステラたちも即座に察した。


「……まさか全員がそんな能力を使えるとは……もしかして異世界の人って皆そういう能力持ってるんですか?」

「まさか。私たちの周囲は割とそんな感じだけど、普通の人の方が大半よ」

「そうでしたか……少し安心しました」

 皆が皆そんな特殊能力持ちである事が普通だなんて聞かされたら、何というかそれはそれで複雑な心境なので。

 そんな気持ちがありありと出ていた。


 でもまぁ、事実大半の人間は普通であるのだ。

 ステラたちがかつて人間だった頃から今に至るまで、かなりの時間が経過しているものの魔術だとかに関してはまだまだ発展しているとは言えない。

 魔術を使っているのはどちらかといえば人間以外の種族が多い。


 ただ、こちらの世界は魔石がそこまで身近にあるものではないらしく、そこらに転がってる向こうの世界は魔石を加工して使っているがこちらの世界は魔石はダンジョンで時々見つかる物、といった認識だ。


 魔石を加工した道具が多々あるからか、人間種族が自力で魔術を使おうとする必要性があまりないのもあると言える。

 なのでこちらの世界とあちらの世界を比べるといっても、前提が異なっているので比べようにも……といったところだろうか。

 こちらの世界でも魔石加工したアイテムが流通して一般的になれば比べる事もできるとは思うが、そのためだけにわざわざステラもやらかそうとは思わなかった。

 特に興味を惹かれなかったし、仮に魔石アイテムが流通して一般的になったとしても恐らくはステラの想像の範囲内での結果にしかなりそうになかったので。


 キールの質問の仕方が異世界の人、と括られていたから普通の人が大半とこたえたが、キールの質問がもしステラの周囲は皆そんな感じなのか、と問いかけていたならば案外あっさりと「そうね」とステラも肯定していたのだが……それが良かったのか悪かったのか……キールが知る事はない。


「というかだ。そっち神の祝福はないっていうけど、だからなのか? ルクスさんとか魔術使ってただろ、前に」

「ん? あぁ、そうだね。私はむしろ魔術の方が使い勝手がいいからね」

「それも詠唱無しで」

「詠唱なんてしてたら相手にこれからこういう魔術使いますよって宣言してるも同然だからね。普通は詠唱なんてしないものだよ」


 当たり前で常識ですけど? みたいなルクスに、ベラクルスは思わず顔を引きつらせていた。

 そっちの世界どうなってるんだろ、そんな言葉が聞こえてきそうだった。


 確かにルクスの言い分も理解はできる。詠唱してたらこれから魔術使いますよって宣言してるようなものだし、相手がそこまで知能の高い魔物でなければまだしも知能が高い魔物は詠唱してる魔術師とかめちゃくちゃ狙ってくる。詠唱を中断させる程のダメージを与えてしまえば魔術師は唱えていた術を発動させられず、場合によっては一方的に一名再起不能にできてしまう。


「私たちはルクスみたいに魔術使える方じゃないからそれ普通だって思わないでね」


 ベラクルスやキール達がこちらに対して何か凄い魔術師みたいな印象を持つ前にくぎを刺しておく。

 クロムはまぁ、魔術を使えないわけじゃないけれどルクスのような使い方は無理だろうし、どちらかといえば己の身体能力強化とか拳に炎だとか雷だとかを纏わせたりして直接叩き込むタイプだ。

 こちらの世界の魔術師からすればクロムみたいなのはやや異端かもしれない。


 キール達と既に何度かダンジョンに潜ってはいるが、その際にルクスが魔術を使ったのはまだ数える程度だ。

 それでも既にルクスは詠唱無しで発動できると知られているので、以前他の魔術師に自分たちが一緒に行く意味はあるんでしょうか……? とまで言われていたくらいだ。


 わざわざこっちがダンジョンから戻ってきた時に何を入手したかというのを聞かれるのが面倒なんで一緒に行動してるだけだし、ついでにキミらの鍛錬にもなるからね、と言われて愚痴めいたものを零していた魔術師はあっさりと納得していたが。


「私たちにアビリティなんてものはないけれど、その分他の能力はちょいちょいあるわけだし、あまり注目浴びると何か面倒な事になりそうってのは前からだけどよく理解できたわ。

 とりあえず……道具の出し入れは私メインでやった方がいいかもしれないわね」

「そうだな。細々した物なら俺でも問題ないとは思うが……」


 流石に全員マジックボックスにしか見えない感じのやつが使えます、なんてなると他の探索者からそっちメンバー解散してこっちに一人くらい入らないか? みたいな勧誘くると思う――なんてキールに言われてしまえば、ステラたちもその可能性は考えてしまっただけに楽観視もできない。

 流石に力づくで強引に、とはならないだろうけれどもしそうなってしまった場合は……


(大変、もしそうなった場合、相手が無事なビジョンがまったく見えないわ)


 正当防衛が過剰防衛になりかねない。

 というか割と最初から過剰防衛であるけれど、そもそも手加減ってどうやってやるんだったかしら……? とステラが考えているとは、目の前にいるキールもベラクルスも気付く様子すらなかった。

 精々隣にいるベルナドットが、また何か変な事考えてるっぽいな……と若干警戒しているくらいで。


 面倒ごとは避けたいけれど、多分それもいずれは難しくなるだろう。

 ただ、せめて中級者向けダンジョンにいる間はどうにか誤魔化したいな……というのがステラの考えである。

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