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異世界からの勇者召喚 失敗!  作者: 猫宮蒼
一章 ゲームでいうところのありがちな追加要素
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もしかして亡き者にしようとしてる? という考えが消えないダンジョン探索



 ステラが何となく気になって探索者ギルドで自分たちが行った以外の初心者向けダンジョンについての情報を得ようと思ったのは、本当に特に意味もなくちょっとした気まぐれであった。

 探索者ギルド自体は各町や村に存在する。ダンジョンあるところ探索者ギルドあり、つまりはそういう事だ。

 けれども、てっきりギルドがある場所のダンジョンの情報にしか精通していないのではないか? と思った事でそこら辺どうなんだろうか? と思ったが故の行動と言ってしまえばそれまでだ。


 結論から言えば別にそんな事はなかった。

 初心者向けダンジョンがある場所のギルドはそのダンジョンの情報しかないのかと思っていたが、ちゃんと他の町や村、城がある場所のダンジョンに関しても情報を揃えていた。

 とはいえやはりそれは自国に関しては、という感じであり、他国のダンジョンに関しては自国と比べると情報としては少ない。けれども大体の難易度とかはわかるかな、程度なのでこの国の空気が合わないから俺は他の国へ行くぜ……! みたいなことができないわけでもなさそうだ。


 まぁ考えてみれば初心者向けダンジョンを攻略し、他のダンジョンへ行くぜ! となった時にどのダンジョンへ行くのがいいか、と悩んだ時にギルドで尋ねてもわからない、では問題がある。ダンジョン入口にある転移装置で行ける範囲が広がったとして、どのダンジョンがどういった傾向のダンジョンかまではわかるはずもない。適当に決めて行った先が自分ととことん相性の悪いダンジョンであったら最悪死ぬ。


 次に行く予定のダンジョンなどは既にルクスが大体目星をつけているだろうし、と思ってふと他の初心者向けダンジョンはこことどう違うのだろうか? と思ったが故にそちらの情報を求めた。

 直接足を運んでも良かったのだが、既に偽装工作した結果の財宝入手事件はニュースとなった各ギルドへ巡ってしまったし、それなりに落ち着いてきたとはいえ完全に誰も訪れなくなったわけではない他の初心者向けダンジョンに、幸運なルーキーと称されているステラたちが行けば何となく余計な面倒ごとが舞い込む気もしたのだ。


 キールに連れられて訪れた最初のダンジョンは、階層的に十階層程度の本当に浅いダンジョンだ。

 最奥にいるボスを倒してその先の転移装置を使えば安全に入口に帰って来る事ができるし、のんびり進んでダンジョンの中を満遍なく歩いたとしても攻略までに一日もかからない。

 途中遭遇する魔物に手こずった場合はどうだかわからないが、それでも途中何となく休憩しながら進んだとして、クリアまで三時間から五時間かかるかどうか、といったところだろうか。

 魔物が出る可能性のあるフロアで休憩するとなると、安心して休めるはずもないが。


 ステラたちは別にフロアを隅から隅まで移動しようとしたわけでもないし、普通に最短ルートで進んだので一時間半くらいで帰ってくるけれど、探索者になったばかりの初心者がクリアするとなればそれくらいの時間がかかるかな、というのが目安としてギルドの方でも情報誌に載っていた。

 それ以外の初心者向けダンジョンも大体似たような感じらしい、というのもギルドで購入した情報誌にあったので、とりあえず初心者向けダンジョン特集、みたいな感じの情報誌を適当に眺めていく。


 一律十階層、というわけでもなく場所によっては五階層しかない本当にすぐ終わりそうな所や、十五階層まであるやや時間のかかりそうなダンジョンもあった。

 初心者向け、ではあるけれど一番最初に攻略するダンジョンとしては向かないダンジョン、なんてのもあった。なんでも出てくる魔物はそう弱くはないけれど、入るたびに内部構造が変わるタイプのダンジョンらしい。他の初心者向けダンジョンを探索して慣れてきたけど、まだその次に行くダンジョンには早いんじゃないかなぁ、という慎重派な人向け、とか書かれていた。


 確かに地図が既にあるタイプの道がわかるダンジョンなら途中で引き返して帰る事もそう難しくはないだろうけれど、内部構造が毎回変化するダンジョンはギルドで売ってる地図が役立つはずもない。最下層のボスを倒すまで帰ってこないぜ、とかいうならともかく、そうでなくとも不測の事態で引き返す可能性もあり得るならそういったダンジョンは自分で地図を描いておくしかない。


 ボスを倒すまで帰らないぜ、で意気揚々と地図も描かずに進んだ結果、途中の階層で思わぬ怪我をして薬もなくてこのままボスに行くには厳しいぞ……? 引き返すか、となった場合に通った道を全部把握しているならともかく、そうでなければ帰りにうっかり別のルートを通って結果迷うなんて事もあるのだ。

 落ち着いて来た道を思い出そうにもそういう時に限って出てくる魔物。襲い来る魔物との戦闘で立ち回っているうちに下手したらどっちから来たっけ? なんて事にもなりかねない。


 ある程度経験を積んだ探索者ならそんな事もほぼ無いけれど、初心者向けと侮ってまぁどうにかなるの精神で突っ込んだ相手が過去ダンジョンから戻ってこなかった、なんて話もギルドの職員から聞いた。

 舐めプは己の実力と相談してやりましょうって事よね……と声に出さずに納得したステラは、他の初心者向けダンジョンの内部が変化しないタイプの地図を見て、まぁ多少の変化はあれど、そこまで大きく異なるって感じでもなさそうね……? という感想を抱く。


 情報誌にはダンジョンの中で過去入手したアイテムなんて物もいくつか記されていて、これが欲しけりゃここが高確率、みたいにご丁寧に載っていた。

(ますますゲームの攻略本じみてるわね……とはいえ、必ず宝箱が出る場所だとかはさておき、それ以外の宝箱は出るかどうか運みたいな部分もあるようだし、ついでに今まで出たアイテムから、確率的にこういうアイテムが出る傾向にありますよ、くらいで攻略本と比べればランダム要素強めではあるけど)


 ギルドで作った探索者としての身分証明カードはギルドの特殊な機材でその探索者が過去どのダンジョンを攻略し、どんな魔物を倒したか、はたまたどういうアイテムを入手したかというのを知る事ができる。

 とはいえ見た目は普通のカードだ。

 大きさとしては片手の平に収まるようなサイズで、ちょっとしたメッセージカードくらいの大きさと言えばいいだろうか。

 そこに探索者の名前と探索者ランク、みたいなものが表示されているだけの至ってシンプルなものだ。

 けれども機材で読み取るともっと詳細な情報が出てくるそうなのだ。


 これに関してはステラの世界の冒険者ギルドのギルドカードよりも凄いな、と思えるのだが。

 仕組みがどうなってるのかは職員も全員が全員理解しているわけではないらしい。


 ダンジョンの中に本来あるはずのなかった隠し部屋を作り、そこで得たという事にしてあったステラが作った道具の数々はもしかしてこれにカウントされないのではないだろうか、と思っていたが、いざ読み取ってみればちゃんと入手アイテムとして表示されていた。

 とりあえずダンジョンの中で入手した、という事実があれば問題ないらしい。


 適当に作ったアイテムをダンジョンに行く前に分配しなくて良かった、と思った瞬間である。


 ステラたちは既に初心者向けダンジョンと呼ばれているそこから次のランクのダンジョンへ足を運んでいるが、中堅者向け、と言っても一言で収まるはずもない。


 ゲームで例えるならば、RPGで中盤に差し掛かったあたりの主人公のレベルが30くらいだとしよう。けれども中盤がそろそろ終わって終盤に差し掛かるころ、となれば当然レベルはもっと上がっている。50かもしれないし、もっと上の80までいっているかもしれない。

 ここら辺全部を中盤、とすると範囲がかなり広いわけで。

 ダンジョンをそれに当てはめると初心者向けダンジョンを出たばかりのまだ若干初心者、みたいなのが中盤も終盤に差し掛かっただろう感じのダンジョンにいきなり行くのは無理がありすぎる。


 というかどう足掻いてもゲームだったら敵強すぎてどうにもならない事にだってなりかねない。

 ゲームであればまだ低レベルクリアとかできるタイプならリセットと要相談という感じであってもどうにかなるかもしれないが、現実のリセットは流石にシャレにならない。


 ダンジョンの転移機能は自分がクリアしたダンジョンなどから大体ここら辺なら行ってよし、という判断が出るのかそこまで自分のレベルに見合わないダンジョンへ行く事はないはずだが、それでも極まれにどうしてここに行けるってなっちゃったの!? と言うような場所が混ざる事もあるらしい。


 どういう基準で判断されているのか……ギルド職員も理解できているわけではないので、ヤバいと思ったら即撤退も有りです、と言われたものの……撤退しようにも間に合わないパターンもあるのではないだろうか。

 ステラはそう思ったけれど、流石に口には出さなかった。

 だって出すまでもなく過去そういう話があったから今そんな風に言われているという事なのだろうし。


 ともあれキール達が今訪れているダンジョンと同レベル程度のところに行けるようにはなったし、ここからはステラたち四人ではなくキール達も含めてダンジョン攻略をする事にもなるわけだ。



「とはいえ、あまり大人数になると魔物がやたら襲ってくるのよね。私たちのチームと、キール達のチーム。

 こっちは四人全員行くわけだし、そうなるとキール達は」

「同じ四人か、それより少人数にしておいて欲しいというのが私の言い分になるかな」

 ステラの言葉にルクスが先を続けた。


「……今行っているダンジョンは一応攻略できるけれど、それはあくまでもぼくたちが六名、一組で行って大量の魔物に襲われないギリギリの人数だからだ。

 いくらきみたちと一緒とはいえ、こちらの人数を減らすのは」

「数が多いとその分守りに間に合わない。問題があると思えば途中で引き返す、でいいんじゃないか?」


 難色を示したキールにそう言ったのはクロムだった。

 そもそも守りも何も魔術師たちが敵の前に考え無しに突っ込んでいく事がなければ何も問題はないはずだが、奇襲攻撃がないとも言い切れない。そうなった場合彼らがどういう行動に出るかもわからないので、できるだけ少数の方がこちらも対処しやすいというのは事実だ。


「まぁ、まずはお互い協力体制を、という事でお試しで行くだけ行ってみればいいじゃないか。

 その上で、人数を増やすかどうか決めるという事で」

 にこやかにルクスが言えば、お試し、という言葉に一応納得はしたのだろう。仕方ないな、という感じではあったがひとまず同意された。


「それで、こっちは何名で行くのがそっちの希望なんだ?」

「そうね、初回だしお試しだしで、キールと他にもう一人、二名ってところかしら」

「正気か!?」

「正気よ。あんま沢山いてもこっちだって手に余るわ。二人なら最悪私たちの間に挟まってくれてればうっかり魔物が背後から忍び寄ってもいきなり攻撃を食らう事はないでしょうし、私たちだってまだどうにかできるもの」


 一応同意したばかりとはいえ、キールの表情が強張る。何かもう今の言葉撤回するとか言い出しかねない雰囲気だ。

 けれども、召喚した勇者がどれだけの実力を持っているか、それを確認する必要はあると思っているのだろう。何せキールとダンジョンに行ったのは、本当に最初の頃だけだ。

 あれから一月と少しが経過しているし、その間に彼らは既に自分たちと同じランクのダンジョンへ足を運ぶまでになっている。


「危険だと判断したらすぐ戻る。いいな?」

「勿論よ」


 キールとしてはかなり内心で妥協した感じで言ったのに、あっさりと返されてどう反応していいのか悩む。

 もし魔物の大群と遭遇して乱戦にでもなった場合危険なのは間違いなくキール達だ。だからこそ、この決断をした今もどこかで答を間違えたような気がしてならない。

 それとは逆にあっさりとした反応のステラたちからすれば、まぁこの程度のダンジョンならまだまだ全然余裕ですけど? といった具合なので、キール程の悲壮感とかそういったものがないのは当然と言える。


 召喚した初日にクロムにボコボコにされたとはいえ、どうにも幸運なルーキーとして噂になってしまった方のイメージが強いが故か、キールはこちらの実力を見誤っている節がある。

 そう仕向けたのはこちらなので、キールに文句を言えるわけもないのだが。


 まぁ、ともあれ。


 拠点から出てダンジョンへ行き、転移機能を利用して他のダンジョンへ。

 キール達が拠点としてあるグリオ農村から、次に目指すのは樹林街ポルトカリである。

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