投獄(2)
「ほらっ、最後の飯だ。ゆっくり味わって食べるんだな。」
兵士が乱雑にパンを放り投げてきた。ここに捕らえられて3日…。この少しカビ臭い固くなったパンでなんとか生き長らえている。辛いことだが、この世界で罪人に基本的人権は行使されないらしい。
「水分がないと食べれないのだが、もらえるかな?」
「はぁ?何だとこの猫がぁ!!」
兵士が鉄格子を蹴り着ける。甲冑がぶつかり、かなり大きな音が牢屋内に響き渡る。
「水なら朝やったので最後だ!罪人ごときが口を挟んでくるな!!」
「朝の水?それなら、あなたが倒してしまったではないか?私は貰っていないぞ?」
兵士はこちらを嘲るように指差してくる。
「あー、そうだったな。罪人に飲ますより、床に撒いた方がましと思ってなー。そんなに欲しければ猫らしく床でも舐めてりゃいいじゃねーか。」
「……!!」
「!!オズワード様!押さえて、押さえてください。」
怒りに震える私をあたふたしながらフランがなだめてくれている。
「まぁ、あと数時間でお前の処刑の時間だ。パンとか水とか、もーどうでもいいだろ?」
兵士は踵を返し、後ろ手を振っている。嘲りか侮辱か…いい意味ではないのは確かだった。
兵士が去ったあとは、ただただ静寂のみがあった。
「オズワード様、すいません。こんな大事なときにフランは、何も出来ません…。」
フランは、今にも泣きそうな顔をしている。投獄されてから3日、いろいろと出る手段を考えてはいるが何も良案は浮かばなかった。出来ることといえば、見張りの兵士に小言を言うくらいか…。
「フランのせいではないさ。私もこの世界の事情を知りもしないのに考え無しだったよ。反省している。あのレスリオとかいう祈祷師が言っていた処刑までの期日はもうすぐだ。諦め時かもしれないな。」
昨日の事だった。
レスリオが薄ら笑いを浮かべながらここにやって来た。
「喜べ猫野郎!投獄生活も明日で終わりだ。嬉しいだろ?」
「……。」
「やりました!やりましたよオズワード様!!釈放です。やっぱり、分かってくださるかたはいるのですね。」
レスリオの笑い顔はそのままだ。言葉の通りなら釈放なのだが…、それはレスリオの望んでいる展開ではない。何か裏があるはずだ。喜ぶフランとは対象に、私は怪訝な表情で相手を見る。
「…。釈放?まぁ出られるとは言ったが、生きて出られるとは言っていないぞ!」
「えっ?」
「お前たちは、処刑になったんだよ!良かったなぁー出られて。死んだ後で!だがなぁ!!」
レスリオは、私とフランの絶望した表情を見ると満足したように高笑いをしながらその場を去っていった。
「処刑?そんな!オズワード様もフランも何も悪いことしていないのに…。」
絶望的な状況からさらなる絶望へと落ちていった。しかし、弁解の場もなくすぐに処刑など、何かの陰謀が働いているとしか思えなかった。
考えられるとしたらレスリオしかあり得ないだろう。あの男の性格ならやりかねない。
しかし、それよりも驚きなのがやつがやっている祈祷師…いや、その組織であるマテリアル…か。
この世界の司法にまで関与できるとなると、かなりの闇が隠れているかもしれない。