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プロローグ
空に舞う蒼い髪。
真実を映し出す白銀の瞳。
どこまでも続く砂漠を見渡す崖の上、鳳凰の守護を身に受けし一人の男。
風を制する孤高の王。
濃い血の臭いを身にまとい、それでも圧倒的な存在感は失わない。
機能を止めた感情を心の奥底に投げ捨てて、ただ生き残る為、自分に牙を剥くモノを殺す。
一陣の風。
それさえあれば大抵のモノから身を守れる。
荒野にあってもそこに風さえあれば生き残ってゆける。
風は武器であり糧であり身を守るもの。
キキィ
小さな、腹だけが出ている餓鬼が足元にちらつく。
一匹、二匹……
(10いるな)
目を閉じる。
シャアアアアア
鋭い風が吹き、餓鬼を切り裂いて地に戻す。
今になっては珍しくもない生き物。
聖なる生き物は天上界などの地に逃れ、いまや邪悪な生き物の生息数の方が多い。
殺しても殺しても、次から次へと増え、一向に減る事はない。
自分一人で何をしても無意味な事。
ならば時が経つのをこうしてみているだけ。
運命の気まぐれが時を動かすその時まで。