オシャレな排泄物
5分で読めるSFショートショート。
ここは六本木にあるオシャレなクラブ。時刻は深夜11時。そこのDJに元常連の女性が話しかけていた。
「あれ、久しぶり。結婚して子供も産まれたって聞いたからもうクラブ通いはやめたと思っていたよ」
「それよりもさー、ねー、見てみて。これ何だと思う?」
女性が差し出したのは赤、青、緑などカラフルな色で彩られた小粒の錠剤型のミルクチョコレートそっくりな代物だった。
「新しいお菓子?」
「ブー。正解は排泄物でしたー」
「汚いな!」
「汚くないよ。清潔だよ。トイレで用をたしてウォシュレットでお尻を洗って紙で拭いても少し茶色い色は残るときはあるでしょ?それって汚いでしょ?最新式の整形手術でこの問題を解決したの。まだ試験段階だから、世界でも実験台になった私1人だけ」
「どう手術したの?」
「小腸と大腸を人工の物に取り替えて、腸の中で圧縮、水分の除去、臭いの除去、カラフルに成形を自動でやっちゃうの。あ、そうそう。腎臓と膀胱もついでに改造しちゃったわ」
「どう変わったの?」
「香水の香りになるようにしたの。自分の体の中に排泄物があって臭いって耐えられないしね。これからは排泄物もオシャレな時代よ」
「そこまでする必要あるかなー?」
「女性は清潔大好きだし、今に若い女性の間で大ブームになるわよ」
数日後
改造手術をした女性が表参道でランチをしていた最中に、お腹に違和感を感じた。
「あ、排泄物が溜まったんだ。捨てないと」
お腹をめくり、人工肛門から出てきたカラフルな排泄物をバッグの中にしまってあったビニール袋に放り込んで店のゴミ箱に捨てた。
「やっぱり便利よ。いちいちトイレ探さなくて良い上にコンパクトで臭わないし清潔だし」
数日後
改造手術をした女性は、メンテナンスとアンケートに答えるために、子供をつれて改造をした整形外科病院に来ていた。
「ちょっとお母さん、先生とお話してくるからいい子で待っててね」
と言い残して診察室に入ろうとしたときに、また排泄物が溜まったサインが出たので、ビニール袋も面倒くさいので直接待合室のゴミ箱に捨てて診察室に入った。
「先生、このオシャレな排泄物便利よ。清潔だし」
「そうですか、それは良かったですね。何か問題点などは?」
「特にないわ。早くみんなこれに切り替えれば世界は清潔になるのに」
と医師と面談をしていたときに、診察室の外から看護師の大声と、子供の泣く声が聞こえた。
「何かしら?ちょっと先生、見てきますわ」
外に出た女性が見ると、看護師が必死になって子供の口に指を押し込んで吐かせようとしていた。
「何があったの?」
「さっきあなたがゴミ箱に捨てた排泄物をお菓子と勘違いして、この子が食べてしまったんです!」
「ちょっと!いくら表面は清潔で小型化されていても、中身には食べかすや老廃物や雑菌が詰まっているのよ!早く吐き出しなさい!」
騒ぎを聞きつけた医師も診察室から出てきて、一部始終を眺めていた。
「やっぱり、排泄物は見た目と臭いと本能で、食べては駄目なものと分からないと危ないですね。この手術は失敗でした」
「ちょっと、先生!私の体を元に戻してよ!」
「いや、改造手術をした時に元の小腸と大腸は捨ててしまいましたから、無理ですよ。良かった。実験台で試したおかげで問題点が分かった」
「私はどうなるの?」
「あきらめて、このまま生きてください」
潔癖症も考え物。