赤ずきんとオオカミ
「オラ、さっさと命乞いしな」
「だ、誰が貴様なんぞに……!」
「うちの孫は威勢がいいねぇ」
「ババァ、黙って見てねぇでさっさと用事を済ませろよ」
「年寄りは優しく扱えってんだ」
「グヌゥ……ここは!」
「おん?」
「我ら誇り高きオオカミの一族! 貴様ら人間の手にかかるくらいならば自ら命を絶つ!」
「ほう、言うじゃあないか。んじゃ選ばしてやんよ。今ここでそのクソみたいな生を終わらせるか、俺達と共に生きるか」
さぁ、選べよ。
この俺の銃がお前の命を奪う前にな。
「我が主! 我らが狼王よ! また仲間が!」
「……ここまでだな。我が同胞よ、剣をとれ! かの憎き人間共を滅ぼす時が来た! 我が同胞よ、先に散った我らが仲間の無念を晴らす時が来た! さぁ、雄叫びをあげよ! 我らが勝利を掴むために!」
「「「オオオオオオオオオオオオ!!!」」」
「先祖よ、我らを見守り給え。我らは人間を滅ぼし、世界の頂へと参る」
その覚悟はとうにできている。
「赤ずきん、大変だ! ついに狼王が出張ってきやがった!」
「へ、やっとでてきたか」
「ふぅー……あん? 犬っころが出張ってきたのかい? 赤ずきん、あんたに任せる」
「ババァ……葉巻を吸うのはいいが、もう少し離れて吸えってんだ」
「カッカッカッ。老い先短いババァの唯一の楽しみだ。少しは我慢しな」
「お、おい赤ずきん……」
「あ? あぁ、狼王だったな。ソイツは任せろ」
この頭巾が赤い理由をその身体に叩き込んでやるからよ。
「おい……ババァ」
「あん? どうしたんだい?」
「なんだってこうなったんだ?」
「さぁてね。神様の考えることなんぞあたしゃ知らないからね」
「お、おい赤ずきん」
「手前は黙ってろ。おい、ババァ。なんで俺を庇った」
「可愛い孫を守るのが年寄りの役目さね。老兵は静かに去ろう、と思ってたんだがこうなっちまったわけさ」
「意外にもしぶといものなのだな。特製の猟銃を撃ち込んだんだが」
「狩人、あんたと一緒にあの世へ逝けないのが少しばかりの悔いだが……まぁ、そこはあんたらに任せるよ」
「ババァ」
「じゃあな、赤ずきん。先にあの世で待ってるよ。寂しいからって追いかけてくるんじゃあないよ」
「ばぁちゃん……俺、まだなにもできてねぇのに」
「カッカッカッ。男の子が泣くんじゃあない」
だが、最後にその言葉を聴けてあたしゃ満足さね。
「グフッ! クソッタレ……」
「赤ずきん! なぜ……なぜこの俺を庇ったのだ!」
「うるせぇ……身体が勝手に動いたんだよ……!」
「視界の端でゴミがチョロチョロと……」
「おい、赤ずきん! しっかりしろ!」
「いいか狼王……俺の頭巾とこの銃を貸してやる」
「そんなことは」
「どうだってよくない!! いいか! 今ここであのクソ野郎を倒さねぇと俺たちに明日はねぇんだ! ババァもいねぇ。俺たちの仲間もほとんどがあっちこっちにバラけてるかオオカミと戦って消耗してる」
「それは……」
「だからお前が決めろ。昔から続いてるこの負の連鎖をお前が打ち砕け」
「赤ずきん」
「あぁ、1つ教え忘れてたな」
頭巾が赤い理由。
「……わかった。頭巾、銃、そしてお前の思い、全部丸めて貸し受ける! 狩人、これが俺の、俺たちの覚悟だ!」
「かかってくるがいい、害獣風情が」
「お前を倒して俺達は……平和を目指す!」
「人間は、生物は、我々に管理されることだけを考えればいいのだよ!」
「これで良かったのか」
「いつまでグジグジやってんだ」
「……」
「俺たちが選んだ道だろ。だったらさっさと前向いて歩け」
「お前はいつもそうだな」
「あん? 前向く以外に何があるってんだ? 後ろなんぞいつでも振り向けんだろ」
「……そう、だな」
「んじゃさっさと行こうぜ」
「ああ」
平和な未来はすぐそこに。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
思いつきって怖いね。
久しぶりに書いてみましたが……これでいいのかどうか。
真面目に書こうと思えば書けますが……需要があれば書きます(という言い訳)
ではまたどこかで。