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第九話

「恩恵って?お前それ欲しさに僕を女王に会わせたの?」


何を今更?と言うようにピィは小首を傾けた。

この首を傾ける仕草は鳥の頃と何にも変わっていないのに、今目の前に立っている女の子は僕の知っているピィじゃない。


「僕はただ早く元の世界に返りたいだけなんだ。早く元の世界に返って父さんが生きているかを確認したいだけなのに」

あれ?

目頭が熱い。

男のくせに涙とか…。

でも…。

「君たちにとっては父さんは魔王だったのかもしれない。でも僕にとっては優しい父親だったんだ、母親がいなくなった後、必死で僕を育ててくれた大切な大切な父親だったんだ」

母親がいないことで、僕が寂しい思いをしないように、たくさんの愛情を注いでくれていた。

「僕は父さんが死んだなんて、認めて…」


あれ?何だろう?急に吐気と腹痛が同時に襲ってきた。

毒でも喰わされたか?


「アイトさま、どうなさったんですか?」

視界がぼやけてきた。

意識が保てない。


ああ、やはり僕は父さんを殺してしまったのかな?だから、今その報いがきてるのかも…。



------------------


『ただいまー』

小学校からの帰り道、泥だらけになった靴を脱ぎ捨てて、家に入る。

いつもだったら、キッチンにいる母親が振り返って、ちゃんと靴を揃えなさいとかちゃんと手を洗いなさいとか小言を言うのに、その日はそれが無かった。

と言うか、母さんがいなかった。

変わりに、スーツ姿の父さんが目に涙をたくさん溜めて僕の帰りを待っていた。


『アイト、すまない、すまないアイト』

何で、父さんが謝ってるの?

どうして父さんが泣いてるの?

『母さんを守ってやれなかった、すまない』

何を言ってるの?

母さんはどこに行ったの?

何にも分からない僕はただただ父さんに抱き締められたまま動けなかった。

『アイト、これ母さんが』

父さんがポケットから出した物は、母さんがいつも付けていたペンダントだった。

ペンタゴンの型をしたクリスタルブルーのペンダントは、昔、父さんにもらったものだと嬉しそうに話していたのを聞いたことがある。

『アイト、いつか、母さんを救えるような強い男になれ』

父さんの言葉の意味は全く分からなかったけど、僕はペンダントを握り締め、首を縦に動かした。




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