第三話
「家に帰りたい?は?そんなこと無理です。これから貴方はこの世界で生きていくのですから」
何をバカなことを言ってるのだろう?
と言う感じで、ピィは肩を竦めた。
「な、何を言ってるんだ?僕は元の世界に戻って父親が本当に死んでしまったのか確認しなければならないんだ。もし本当に父親を殺してしまったのなら罪を償わなければいけないんだ」
ピィはポケットにしまっていた虫を一匹取り出すと口の中に入れてペロリと食べてしまった。
見た目はこんなに可愛い女の子なのに、そんなことするなんて、鳥だった時の習性が残っているのかもしれない。
「あ!私としたことが!この虫だって売れば多少の銅貨になったものを…。いや、でも、これから女王さまのところにこの勇者を連れて行けばそれ相応の対価はもらえるはずっ」
それから、じーっと僕の方を見て、ふぅんと唸った。
「何て言うか貴方平凡ですね、全然勇者っぽくないです!まず格好が全然勇者っぽくないです!そんな格好では女王さまに会わせる訳にはいきません、仕方ない、取り合えず、私が住んでいた村に行って色々買い揃えますか」
そんな格好って?
僕のこの学生服がそんなに変なのだろうか?
「人の話し聞いてたか?僕は父さんの元へ戻りたいんだ」
「…、…、さっきから父さん父さんって…。貴方は一体何を言ってるのですか?あの物は魔王で貴方の父親ではありませんよ」
やっぱり。ピィの言うことは全く理解できない。
「とにかく、僕は元の世界に帰る」
僕はさっきまで歩いてきた道を戻ろうとした。
「ごくごく普通の人間が時空を移動できる訳なんて無理です。うーん、そんなに帰りたいのですか?仕方ないですね。では、一度女王さまに謁見されてからその後帰ると言うのはどうでしょうか?」
確かに、どうやったら元の世界に戻れるかどうか分からない。
多少遠回りしてしまうかもしれないが、ここは大人しくピィの言うことを聞くとしよう。
「…。分かった、女王に会ったのなら必ず元の世界に返してくれるんだな?」
「はい、もちろんです。それでは、まず服を選びに行きましょう」