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第二話

どこまでも続く野原。

歩いても歩いても景色の変わらない風景。


「歩くの遅いですよ、アイトさま」

前を歩く青い長髪の女が振り返り、大きく首を傾けた。

これが先程までうちに飼われていた『ピィ』と言う名前の鳥だったなんて全く信じられない。


父親を殺してからまだ一時間も経っていないのに、既に世界は大きく変わっていた。


普通なら今頃警察に取り調べを受けて刑務所に連れて行かれているはずなのに、僕はこうしてこんな訳の分からないところを歩かされている。


一体何がどうなったんだ?


「おい、ピィ、ちょっと頭を整理させてくれないか?」


ピィはムッとした顔で僕を見上げた。


「私はピィじゃありません、『エレン』と言う名前があります」


強気な態度でそんなことを言っているけど、大きな藍色の瞳はピィの時のままなだった。


「何でピィが女の子になったんだよ?」

鳥が女の子になるとかそんなこと常識的に考えたらある訳ない。

しかも、こんな可愛い女の子になるなんて。

「私は元から女の子です、貴方の父親に鳥の姿に変えられていただけです


僕の父親…?

僕の父親は普通のサラリーマンだった。

いつまでも出世しない万年平社員の父親。

その父親が…。


「そう、貴方の父親は悪の魔王なのです、それを倒した貴方こそが勇者なのです魔王に苦しめられていた我が国の勇者なのです」


ダメだ…。

全く理解出来ない。


と言うか…。ここは一体どこなんだ?

ついさっきまで自分の家の居間で倒れていた父親の傍らにいたはずなのに。


「ピィ、父さんは本当に死んだのか?」

あ、しみじみと思い出したら涙が出てきた。

小さい頃、ある日急に母さんが家を出て行ってからずっと僕を育ててくれた父さん。

そんな父さんを僕が殺すなんて…。

殺すつもりかんて全く無かったのに。

だいたい、トマトを投げつけただけで人って死ぬものなのか?

打ち所が悪いとかそう言う問題じゃないよな。

そうだ、きっと父さんは死んでなんかいない。

もう一度家に帰って確認しよう。

きっと生きているはず。


「ピィ、もう一度家に帰りたいんだが…。あれ?」


さっきまで前を歩いていたピィの姿が無かった。

あ、いた。


ピィは道から外れ、草むらの中で草を掻き分けて何かを探していた。


「何してるんだ、ピィ?」


僕の声にピィはビクッと肩を震わせて、ペロッと赤い舌を出した。


「何かピカッと光るのが見えたから、ゴールドかと思ったら違ってた。でも、この辺り珍しい虫がたくさんいるから売ってお金にしよう!」

「え?」

「貴方を我が国の女王に会わせるのはその後にしましょう」


ピィはポケットに数匹の虫をしまった。


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