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第18話

『ピィー?』


歩を止めてしまい全く動かなくなったボクの肩の上でピィは小首を傾けたまま小さく鳴いた。


「ああ、ごめんねピィ。せっかくピィが逃がしてくれたのにボクはどこに行ったらいいか分からないんだ」


ボクの向かうべき道はどこなのか?

真っ直ぐにどこまでも続く道に行くべきか、折れ曲がってる道を行くべきか?

ボクはただ突如消えてしまった父親との平凡な日常をもう一度取り戻したいだけなのに。

何でこんな目に合わなければならないんだ?

こんな現実離れした世界に連れて来られて、勇者だのもてはやされて挙げ句の果てに訳の分からない猛獣に襲われ情けない事に女の子に守ってもらうとか。

そして、今、その女の子に追われて逃げているとか。

一体何なんだよ!


「おい、何も取って食う訳じゃないんだから逃げる事ないだろう!」


呼吸をする度に彼女の着ている鎧がカタカタと音を立てていた。


「私の名前はアイリス。別に怪しい者じゃない。訳あってさっきの獣の生態を調べている。あそこら辺りに獣の住み処があると聞いてしばらく張っていて今日ようやく獣を見付けたのだが…」


その獣をボクが跡形も無く消してしまったんだ。


「……ごめん」


口から出たのは乾いた言葉だった。

罪悪感からと言うより取り敢えず何か言っておけみたいなそんな安易な言葉だった。

今のボクには深く考える事なんてできないから。

ただ目の前にある道にさえ踏み出す事を躊躇してしまっているボクは何も考えられない。考えたくない。


「な、何を謝る?」


今まで常に冷静を保っていて獣に襲われた時でさえも自分を見失っていなかった彼女が目を見開いてボクの顔を覗き込んだ。

彼女の二重の茶褐色の瞳を反らす事無くボクを映し出した。


「お前どこかで会った事無かったか?」


「え?」


意想外な言葉にありふれた返信が出た。

もちろん、彼女とは会った事は無い。

だがこうして彼女をマジマジ見ているとその言葉に交情を感じてしまう。


「気のせいか、失礼。きっと他人の空似だな。…さっきは助けてくれてありがとう。私が言いたいのはそれだけだ。気を付けて帰れ」


いつまでも無言のボクにしびれを切らしたように身を翻したアイリスの方へパタパタと羽根を拡げピィが飛び乗った。


「ピィ?」


『ピ、ピ、ピィ』


アイリスの深紅の後ろ髪をついばみグイグイと引っ張った。


「な、何だ?この鳥?」


それはピィが行って欲しくないと訴えている時の仕種だ。

---------もっと側にいて欲しい。

そんなピィの心の声が聞こえた。



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