第一話
気が付いたら、父親を殺していた。
床に仰向けに倒れてる父親の顔は赤い血のりのような物がついていて真赤だった。
誰も見ていないのについているテレビ以外の音は全く聞こえない。
静かな夜だった。
これはやばい…。
確実に殺人犯だ。
高校も辞めなければ。
これまで無遅刻無欠席で積み上げてきたのに。
明日の朝刊のトップニュースになるかな?
いやいや、そんな冷静に考えてる場合じゃないだろう。
そもそも、何故父親は死んだのだろう?
ピクリとも動かなくなった父親の周りには粉々になったトマトの残骸が…。
学校から帰ってきて、些細な事で言い争いになり、頭にきたオレは夕食に食べようとして買ってきたトマトを父親に投げつけただけなのに。
そんなので死ぬ訳ないじゃないか!
オレは父親の死体に近付き、胸に耳を充ててみた。
やはり、心臓は止まっている。
トマトで人が死ぬのか?
『死んだ、死んだ、魔王が死んだ』
パタパタとうるさい羽音を立てて、居間にぶら下がっている鳥籠が大きく揺れていた。
え?この鳥喋れたの?
父さんがずっと大切にしていた青い羽の美しい鳥。
あまりにも綺麗な鳥だから、小さい頃これは何の種類なの?と父親に聞いたのに、『何だっけなー』と教えてもらえなかった。
父さんはこの鳥をとても大事にしていたくせに、何故か名前をつけなかったから、僕はこの鳥の事を、『ピィ』と呼んでいた。
父さんが死んで哀しいのかな?
僕は鳥籠に近付き、ピィを外に出した。
ピィは迷うことなく父さんに近付いた。
別れを悲しんでるのかな?
ごめんよ、ピィ、僕も殺すつもりなんて無かったんだ。
しかし、ピィは別れを哀しんでいる訳では無かったらしい。
『やったー、これで私は自由の身だわーーーーーー』
ピィは女の子のような高い声を出したかと思うと、目映いほどの金色の光に包まれた。
う、何だこれ?
一瞬後、父親の横にいたのは青い髪をした小さな女の子だった。
え、え、えーーーーーー?
何だ、これ?
「私を救ってくれてありがとう。魔王を倒してくれてありがとう」
女の子は僕の両手をぎゅっと握りぶんぶんと振り回した。
な、何?魔王って?てか、この子一体誰?
ポカンとしている僕に彼女は更に訳の分からない事を言った。
「我が国を救ってくれたお礼に貴方を我が国に招待いたします、貴方こそ我が国の勇者に相応しい方です」