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83話 わちゃわちゃ

 親方に手を振って材木屋を後にする。

 まだ日が沈むには早いので、すぐにオスヴィンさんたちの家のほうに戻ってしまうのではなく、村をぐるっと一周してから戻ることにした。

 こうして見て回ると、結構大きい村だなぁって思う。試しに家の数を数えながら散策を続けてみたんだけど、どうやら50は超えている。100戸近いかも。私の村は30戸くらいだったはずだから、その倍以上だろう。やはり辺鄙な山奥と皇都に近い原野、という場所の違いが大きいのだろう。

 それにこちらには立派な門と壁が建設されている。この門と壁、最初見たときは村全体を囲っていると思っていたのだけど、本当は森に面した方向くらいしかない。村の全周の3分の1をちょっと超える程度だ。


「昔はここの森でも魔物の大量発生があったんだよ、それに対抗するためだな」


 とは親方の弁。森の魔物を警戒しての対策だと言っていた。まぁそれは昔の話で、ここ数十年そんなことは起きてない。ただ、北の方で魔物の大量発生があったから、こっちでも警戒するべき、なんて声もあるみたい。魔物の大量発生のメカニズムはよくわかっていないから、みんな心配なのだろう。


 ぶらぶらと村の中を歩き、オスヴィンさんたちの家のところまで戻ってきてしまった。ポルトの町や皇都と違って、村の中にお店がほとんどなく、あるとしても材木屋や建設事務所みたいなのばっかりだった。私が思い浮かべるような、普通の買い物は行商で済ませるのだろう。そんなんなので特に見てみたいような場所もなかった。


「ただいま戻りましたー」

「あらユヌちゃんにエミィちゃん、二人ともお帰りなさい」


 離れの戸を開けて中へ入る。中にいたのはフィリーさん一人だけだった。床に色んな荷物を広げて、それを一つ一つ丁寧にリュックの中へ入れている。

 まだフリッツ君とニーナちゃんは帰ってきてないのかな。疑問に思っていたらエミィさんが私の心の代弁をする。


「フリッツとニーナは?」

「あの子たちは魔法訓練してるんじゃなぁい? お昼は村の北側の原野でやってたみたいだからぁ、多分今もそこにいるんじゃないかしら」


 あぁ、そういえば魔法の訓練するとかって言ってたっけ。ぶらぶら歩いてきたのは森のある南側中心だったから出くわすこともなかっただけのようだ。


「明日からの予定なんだけど――」


 私たちも床に腰を下ろしたところでフィリーさんが喋り始める。


「――またしばらくは平地を北へ進むことになるわ。大体2日間かしらね。だんだん草原から荒れ地みたいな感じになっていって、大きな川に着くの。ここの川の畔には宿場町があるからそこでまた一泊して。川の向こうは、もうすぐに魔物のいる森になるわ」


 おお、ついに魔物がいっぱいの森に着くのか。皇都からだと歩きで一週間と少しで着く距離ということだ。なかなか距離があった。


「森の中での行動はまた宿場町で教えるとして……この森を抜けるのにまた2日費やすわ。そうすれば霧の中の町、ネーベルに到着ね。ここで、あなたたち二人とはお別れ、で良かったのよね?」

「あぁ、アタシたちはまだまだ北へ行くからな」


 あ、そっか。魔物がいっぱいの森にもうすぐでたどり着く、ということはもうすぐフィリーさんたちとお別れになるわけでもある。私とエミィさんはそこからさらに北にある、獣人が住まうという地、リシッサへ。フィリーさんたちはそのネーベルって町を拠点にして森のファング狩りだ。

 そのことを思い出してちょっとしょんぼりしていると、頭の上にポンと手が置かれる感触がした。


「今すぐお別れというわけじゃないだろうに。こういうところは年相応だな、ユヌは」


 そのままエミィさんにわしゃわしゃと頭を強引に撫でられた。


「むぅ、髪の毛がぐちゃぐちゃになっちゃいますぅ!」


 エミィさんは私の抗議には耳を貸さず、その後もわちゃわちゃしまくった。

 そんなときにフリッツ君やニーナちゃんも離れに戻ってきた。私を一目見たら顔を背けて、2人とも肩を震わせている。ちょっと、私今どんな状態なんですか! エミィさん、やめてぇ!

リアル事情により次回は一週間後になりそう

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