3話 新たな村へ
太陽がてっぺんに来る時間となった頃。
「よぉし、村が見えたぞー」
行商のおじさんが外から、荷台の中にいる私たちに呼び掛けてくる。
「朝も言ったが、この村で2泊する。一応村だがな、ここに宿なんてこじゃれたもんはねぇ。だから今日明日も野宿だ、いいな?」
「「はーい」」
「俺は今日中に村長やお得意様を回っておく。明日は露店を開くから、もしかしたら手伝いを頼むかもしれんが・・・まぁたぶん頼まん、一人のが気楽だ」
「はいはい!ってことは明後日まで自由に過ごせってことでいいですか、行商のおじさん?」
外からは見えないだろうけど、手を挙げて行商のおじさんに質問してみる。
「ああ、明後日の早朝に出るからな、それに間に合うならいい。・・・なぁ、俺ってユヌに自己紹介してなかったっけか」
「あー、そういえば行商のおじさんの名前知らないです」
「今更感はあるが、ま、しとくか。俺はホウズィーア・ポール・ブルーノってぇ名前だ。ホセアと呼んでくれ」
「一応私からも。ユヌ・ヴェルトゥです。皇都までよろしくお願いします、ホセアさん」
「おうよ!さ、村に到着だぁ!降りるぞー、準備しろ準備ぃ」
いつも村に来た時も行商のおじさんとしか呼ばなかったし、皆もそう呼んでたから名前を知らないって意識がなかった。
何はともあれ、馬車は村に着いたようだ。私にとって初めての外の村である。
折角自由行動時間があるのだから、いろいろ見て回るとしよう。
というわけでルカと一緒に村を一周したのだが。
「全っ然、うちの村と変わんない・・・」
「まぁ、まだ山間の村だしな」
私たちが今まで暮らした村と変わらない。
いくつかの違いがあるとすれば・・・なんだろ?教会の大きさ?あとは、そうだな、家の配置が違う。道行く子供たちが見慣れない子たちじゃなかったら、もしかして戻ってきたんじゃないかなってくらい似てる。
「さてと、ユヌはこれからどうする?まだ村の探検してみる?」
「んー、探検してもなぁ・・・かといって馬車に行ってもすることないじゃん?」
「まぁそうだよなー。んじゃとぼとぼ歩いて暇をつぶす?」
「そうするー」
いろんな景色を見るために旅に出たはずなのに、目の前には代わり映えのない村。
ちょっと、いや、かなりがっかりである。
さっきから子供たちが遊んでいるのをよく見かける。この村には学舎がないらしく、家の仕事のない子供は外に出て友達と遊んでいる。私たちの村では学舎が休みの日じゃないとなかなかこの光景は見られない。
だからうちの村とは違う村なんだ、と自分に言い聞かせる。
子供たちは6人程が鬼ごっこをしていて、2人が隅で玉投げをしている。
私も昔はよく玉投げしてたなぁ。
一方がボロ布を丸めてできた玉をもう一方に投げ、受け取った側がまたもう一方に投げ――ってことを延々と続けるだけなんだけどね、私は結構好きなんだよねこの遊び。玉投げで遊んでいた時期はまだ父さんがいたし、家に余裕があった。
そんなふうに懐かしんでいると、ルカが黙っている私に振り向いた。そして私が向いている先で、男の子と女の子が玉投げで遊んでいるのを確認して。
「玉投げしたいのか?」
「いや、別にそんなんじゃないんだけどね。懐かしいなーって」
「あぁ、昔、もう6年くらい前か?よくやったよな」
「だいたい私とルカでやってたよねぇ。ルカは鬼ごっこをしなかったし、私はいつも鬼ごっこはさせてもらえなかったもん」
「まだ根に持ってるのか・・・許してやれよ、皆だって楽しく遊びたいんだ」
「そうは言ってもなぁー。って、あ」
「お」
「あぁー、やっちゃったねあの子たち」
私たちが見る先で遊んでいた男の子が思いっきり球を投げたら、あらぬ方向へ飛んで行って木に引っかかってしまった。投げられた側の女の子はあたふたしてるし、投げた男の子は「あ、やっちまった」って顔して固まってる。
引っかかった場所は張り出した枝たちにうまいこと挟まっているようだ。
結構高い、子供の身長じゃどうやっても届くまい。
「助けに行こっか」
「そうだなー」
私とルカは困り顔の二人の方へと歩を進めた。