49話 小遣い稼ぎ
イルさんと出会った翌日。
私とエミィさんはギルドで依頼を吟味している。宿でゆっくり朝ごはんを食べてきたから、ピークの時間から少しずれた時間に来ている。村で育ってきた私からすれば十分人が多いが、まぁ昨日ほどじゃない。
なお、ルカはミオ姉さんと連れ立って沿岸町へと繰り出している。シューユの交渉を頑張ってきてほしい。
「エミィさん、良さげの依頼ってありましたー?」
「うーむ、ないな……やはり時間が時間だからな、残ってるのは町の中の雑用系ばかりだ」
「そうですね。屋敷の掃除とか、お使いのお願いとか、忘れ物の捜索? なんてのもあるんですねぇ」
私たちは依頼が張り出される掲示板とにらめっこをしている。皇都にいる間は暇を見ては依頼をこなしていこうと思っている。そうしてその報奨金は路銀の足しにする。
私の場合はエミィさんを護衛として雇うのだから、エミィさんの分の路銀も負担しないといけないのでそこそこ必要なのだ。「お金が足りないのなら、お金を払って雇うという形ではなく、お金のやり取りなしでただ単に一緒に旅するだけでもいいじゃないか」とは言われたものの、私としては最初にエミィさんと約束した筋を通したい。
「あ、これいいかも。倉庫の整理、報酬大銀貨5枚」
ちょっと前に貼り出された依頼だろう、他の最新の依頼に埋もれる紙を見つけた。
「大銀貨5枚? ちゃんと中抜きされた後の金額か?」
「認可の印が押されてますし、ギルドを通ってきているとは思いますよ」
「じゃあ何か特別な条件付きなのか、事情があるのか?」
「んー、どうなんでしょう。これなんですけど」
エミィさんが首を伸ばしてきたので、依頼書の前を譲る。
「……ブラウ伯爵家の依頼、重量物あり、危険物あり、古びた倉庫で床が抜ける可能性あり、体重が軽い人推奨……私は無理だぞ」
ありゃ、ダメなのか。
エミィさんってすらっとしているし、なんか獣人の人って軽そうだなーっていう勝手な偏見があったので、エミィさんも軽いのかと。
などと、私はエミィさんの断る理由が体重によるものだと思ったのだが、どうやらそうではないらしい。
「ブラウ伯爵家の依頼っていうのが難癖だな。あまり関わらないようにするのが吉だろう」
「あんまり良くない家の貴族様なんですか?」
「良い悪いじゃないぞ、こういうのは。何もこの家に限った話じゃない。貴族相手に何かヘマをしてみろ、ただじゃすまないからな」
んー、まぁそれもそうなのかな。私が実際にみたことがある貴族ってエトムントさんしかいないけど、そのエトムントさんは変わり者だって自称してたし。
ぶっちゃけると私はこの国の貴族制度をよくわかってない。私たちがいた村は貴族領地じゃないから、身近な存在でもなかった。
「じゃあ別のに……あれ? ユリアさんだ」
ギルドの入り口からユリアさん――エトムントさんの従者で、私がお風呂場で気絶させた方――が入ってきた。私服を着ていて、歩き方もどこかだらしない。今は従者モードではないらしい。
と、向こうもこちらに気付いた。途端に背筋を伸ばし、一挙一動が洗練された動きになる。凄い切り替えだ。そのままこちらへやって来た。
私はユリアさんに向き直り、先日の礼も含めた挨拶をする。
「ユリアさん、おはようございます。3日ぶり? ですね。その時は色々ありがとうございました。……あとすいませんでした」
「ユヌ様、エマヌエーラ様、お早うです。風呂場のことは気になさらないでください。御二人は依頼をしに来られたですか?」
「あぁ、そんなところだ。だがあまり良い依頼がなくてな」
「報酬が良さそうのだと、お貴族様の依頼だけで。エミィさんからそれは止めておこうって言われてたとこです」
「あ、それウチのです」
「へ?」
「エトムント様の従者は私たち姉妹だけなので。倉庫の整理をしてくれる人がいればお任せしたかったのです。……よろしければ御二人がしませんか?」
私とエミィさんは顔を見合わせる。
お金を(ホセアさんが)払ったとはいえ、お世話になったことに変わりはない。その恩返しと思えば、断る理由はなかった。
「それじゃあ私たちにお任せください!」




