25話 ポルト出発
エミィさんが旅に加わることが決まった次の日。
本来ならば早朝にポルトの町を発つ予定だったのだが、エミィさんの準備のため、その出発はお昼ご飯のあとまで遅れてしまった。
「ホセアあぁぁぁ、また行ってしまうのねぇ。母さんは寂しいわ!」
「離してくれお袋! ただでさえ遅れてるんだ、出発させてくれぇ!」
ホセアさんのお父様と弟さんである、アーロンさんとエイブさんとは朝のうちに別れを済ました。
そして、残るお母様との別れをホセアさんは満喫している。
ホセアさんは恥ずかしさから顔を真っ赤にしてもがいているが、強化魔術を使っているアンナさんを振りほどくことは叶わない。
暫くの間ずっと抱きついていたアンナさんは、ようやく満足げな顔でホセアさんを解放する。
「ホセアチャージ完了っと。これでまた1週間は頑張れるわ。1週間したらまた帰ってきてね?」
「あれだけ抱きついて1週間だけか。そんな短い期間じゃ皇都まで往復もできん」
「うふふ、まぁ半分は冗談だから。さて、ユヌちゃんにルカ君、ホセアをよろしくね。いってらっしゃい」
「はい、お世話になりました、アンナさん! 行ってきます!」
「ご飯とっても美味しかったです、ごちそうさまでした。行ってきます」
「二人の旅路が幸あることを祈ってるわね」
別れの言葉を交わし、馬車に乗り込む。
互いの距離が開いていく中、私たちは笑顔で手を振りあった。
町のはずれの小さい食事処の前で、エミィさんはヴェロニカさんと話をしていた。
私たちが馬車から様子をうかがっているうちに別れがすんだのだろう、こちらへ向かってきた。
まずは御者席にいるホセアさんの方に行って、視界から隠れてしまうが、それからまたすぐに荷台へとやって来て馬車に乗り込む。
乗り込んだエミィさんと私たちとが軽く手を上げて挨拶を交わしあったところで、ちょうど馬車が動き出す。
「改めて挨拶をさせてもらおうか。エマヌエーラ・ビーシア・ヴォルテ、16歳の獣人だ。エミィってよく呼ばれてる」
「ユヌ・ヴェルトゥです。12歳の人間です!」
「俺はルカ・ズィルバーンです。同じく12の人間。……自己紹介で人間って面白いな。まぁ皇都までよろしく」
「あぁ、よろしく。……ん? ルカは皇都までなのか」
「俺はユヌとは違って、皇都に行くのが目的ですから」
「ほう。ではユヌはどこまで行くんだ? リシッサが通過点らしいということはわかっているが」
「私はですね、いろんな景色を見に行くんです!」
他愛のない話をしながら、私たちの乗った馬車はポルトを発った。
「今日はここらで休むぞー」
空が赤くなる頃、ホセアさんは馬車を止めた。
ポルトの町を出てからは街道があって、揺れがとても少なくて快適だった。
今までの山道はでこぼこだったけど、これから皇都まではずっと街道だ。
もうお尻が痛くならない。
そんなことに感動を感じつつ夕食の準備が進むのを眺めていると、ルカが私を呼び出す。
「おーい、ユヌー。アンナさんに言われた事するぞー」
「えー。……やんなきゃダメ?」
「自分のためなんだから頑張れ」
まぁそうだよね。
私はとぼとぼとルカがいる街道脇の開けた場所へ行く。
「エミィさんもやりません? いや、というより、エミィさんも一緒にユヌを鍛えましょう!」
「鍛える……? 二人はこれから何するんだ?」
「私が自衛できるように特訓するんです……」
「ほお、ならばアタシも参加しよう」
私は強化魔術の連続運用に慣れていない。
そこで毎日のように使うことで、その感覚に慣れようという話になり、さらにどうせだからルカと手合わせすることで実践経験を積もうということになった。
「エミィさんはどっちの味方します? それとも最初は見学しときましょうか?」
「最初は見学させてもらおうか」
「わかりましたー、んじゃ俺とやろうか」
「うー、やだなぁ」
「文句言ってないで覚悟決めなって。まずは毎日3秒からでもやっていこう?」
3秒かぁ、それならまぁ……
「さ、いくぞー、5、4、3……」
「え?ちょっ、待って!準備できてな――」
「……スタート!」
その次の一瞬、私は空中に現れた水にお腹を殴られた。
私用により明日の投稿は休みます




