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お父さんと明美さん

「目の周り赤くないよな?」

「何言ってんの。あんなに泣いたんだから真っ赤だよ」

「うわぁ・・・ちょっと帰ってもいいかな?」

「明美さんに怒られてもいいなら帰れば?」

「明美さんに嫌われるのは嫌だ」

「じゃあ観念しなさい」

「うぅ・・・」


ひとしきり僕の胸で泣きまくって目を真っ赤にした絵里さんと一緒に階段を降りていた。

もちろん夜ごはんを食べるためだ。

リビングのドアを開けると、お父さんが新聞を読んでいた。


「お父さん。おかえり」

「ただいま。もういいのか?」

「うん」

「じゃあ晩ご飯にするか」


よっこらせと立ち上がると、お父さんは食卓へとついた。

すでにご飯は準備されていて、明美さんが持ってきたそうめんを置いたら全部のようだった。

僕と絵里さんも席に着くと、明美さんも席に着いていただきますとご飯を食べ始めた。


「あの・・・」


お父さんと明美さんがそうめんをめんつゆの入った自分の器に入れたところで絵里さんがおずおずと言った。


「ご迷惑かけてすみませんでした」


さっきまで泣いたことを謝っているのか、それとも待っていてくれた二人に謝っているのか。それとも僕の家に来てからのこと全部に謝っているのか。多分、絵里さんのことだから全部だと思う。


「まぁ・・・とりあえず、ご飯にしよう。冷めたら美味しくなくなっちゃうから」


お父さん・・・茄子の揚げ出しも冷奴もホッケの開きもそうめんも冷めないじゃん。



夕食はいつも通りに食べ終わった。

とはいっても、特に賑やかに食べているわけでもないので、和やかに食べたという感じだった。

絵里さんはというと、やっぱりどこかシュンとしてしまっていて、楽しそうという感じはなかった。

まぁ昨日の今日で『元気出せよ!』って言われても無理ってもんだ。

などと考えていたら、明美さんが食器を片付けながら話し始めた。


「絵里ちゃん。私ね、絵里ちゃんがそうやって暗い顔してるの、あんまり嬉しくないな」

「父さんもだ」

「ちょっと二人とも・・・」


あまりにも無神経でしょ。

それを聞いた絵里さんはさらに落ち込んでしまった。

明美さんは構わず話し続けた。


「あのね、絵里ちゃんはもっと甘えてもいいと思うの。だって子どもなのよ?」

「それはさっき聖にも言われました」

「じゃあもっと子どもらしくしなさい」

「明美。何言ってるのかわからなくなってるぞ」

「あっ」


お父さんに言われて軌道修正する明美さん。

ってゆーか明美さんがここまで言うなんて初めて見たかも。


「ごめんなさいね。だからうちの子にならない?」

「「えっ!?」」


僕と絵里さんの声が被った。

何言ってんの?


「明美。もう黙ってなさい」

「ごめんなさい」

「絵里ちゃん。絵里ちゃんは私や明美のことをどう思ってるんだい?」

「聖のお父さんとお母さんは優しいお父さんと優しいお母さんだなぁって感じです」

「それはよかった。私も明美も絵里ちゃんのことは、自分たちの娘のように思ってるよ。だから、私達を本当の親のように思ってくれてもいいんだよ?」

「・・・・・・」

「別に籍を入れようとかどうしようなんて考えてるんじゃない。ただ気持ちだけでもそう思ってもいいんだよってことだ」


つまり・・・どういうこと?


「つまりどういうことですか?」

「うちに住まないかい?」

「えぇ!?」

「聖は嫌か?」

「嫌ってゆーか・・・ねぇ?」


複雑すぎるわ!

絵里さんと一緒にいられるのは嬉しいけど、一つ屋根の下で暮らそうなんて考えたこともないし。

そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、お父さんはさらに続けた。


「どうかな?」

「お気持ちは嬉しいですが、お断りします」

「どうして?」

「お父さんも明美さんも聖もみんないい人だと思います。でもあたしにとっての両親はあの二人だけだし、家族は両親・・・と兄貴だけです」

「そっか・・・まぁそうやって言うと思ってたわ」


自分の提案が却下されて落ち込むかと思っていたけど、ケロッと態度を変えて笑顔を見せた。

お父さんの言葉に絵里さんも思わずポカーンと口を開けてしまう。もちろん僕も。


「いやぁ、明美さんから話を聞いて、絵里ちゃんが悲しんでたって言うじゃないか。たしか聖が『絵里さんが実家に帰るからー』みたいなことを言ってたのを思い出してね、実家で何かあったんじゃないかと睨んだんだ。カマをかけてみちゃったわけなんだけど、許してね」

「はぁ・・・」


何故か楽しそうなお父さんと明美さん。

僕と絵里さんは顔を見合わせて首を傾げた。


「ここまで言っても絵里ちゃんがご両親のことを大切に思ってるんならまだ大丈夫だよ。だからもっと自分の選択とかにも自信を持ちなさい」

「そうよ。お兄さんだって絵里ちゃんのこと心配してるわよ?」

「えっ、兄貴のこと知ってるんですか?」

「ん? 知らないわ。ケンカでもしてるの?」

「・・・フフフ」

「え、絵里さん?」


お父さんと明美さんの謎の空気に当てられたのか、絵里さんが小さく笑い始めた。


「アハハハハハ!!」

「絵里さんが壊れたー!!」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると嬉しいです。


過去最大の間隔での投稿となりました。

てへぺろ☆


次回もお楽しみに!

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