山田という男
なんやかんやで一ヶ月経ちました。
「紺野ぉおおおお!!!」
「えっ!? 何?」
僕と絵里さんが出会ってから1ヶ月ぐらい経ったある朝、教室に入ると、山田くんが僕に向かっておたけびをあげながら走ってきた。
なにやらものすごい形相だ。
「紺野ぉ。ハァハァ・・・」
「えっ、何、気持ち悪いんだけど・・・」
「キモイとか言うな!」
朝からなんなの?
「そんなことより昨日、加藤さんと一緒にご飯を食べたって本当かっ!?」
僕はまだ登校してきていない加藤さんの机を見た。
「あー、うん。ってゆーかほとんど毎日食べてるけど」
「うらやましすぎるだろコノヤロー!」
「じゃあ山田くんも来ればいいのに」
「行っていいのかよ!」
「えっ、うん。だっていつも一緒にご飯食べてたでしょ?」
「紺野・・・お前ってやつは・・・」
涙ぐんだ目で僕のことを見てくる。ちょっと暑苦しくてキモイ。
そして僕の手を握ってこう言った。
「お前は女神だ!」
「男だよ!」
最初の授業が終わった休み時間に、僕は絵里さんの元へと向かった。
「というわけで、山田くんも一緒にご飯を食べたいって言ってるんだけど、大丈夫かな?」
「山田って、あのうるさいやつだろ?」
「あれ? 知ってるの?」
「知ってるも何も、聖を呼びに行くときに、しょっちゅう騒いでるから嫌でも覚えるよ」
「へぇ・・・」
山田くんって結構有名人なのかなぁ?
まぁ明るい・・・を通り越してうるさいけど、悪い人じゃないし、誰にでも差別無く接してくれるし、人懐っこいし。残念なことに顔はそんなに良くないけど、性格はいい人だと思う。
「まぁ聖の友達なら別にいいんじゃないか? 断る理由もねぇし」
「そっか。じゃあお昼休みに連れていくね」
「あっ。あたしはいいけど、彩には言っておけよ? もしかしたらあいつが嫌って言うかもしれないし」
「もちろん言っておくつもり。じゃあまた後でね」
「おう」
そしてそのまま加藤さんの元へやってきた。
とはいえども、自分の隣の席だから、着席してから話しかけた。
「ということなんだけど」
「絵里さんがいいって言うならいいんじゃないの? 私も参加させてもらってる側だもん」
さすがに一ヶ月も経つと、加藤さんの周りの人も少なくなってきていて、平穏な日々が続いている。
それでも加藤さんの人気はあるみたいで、廊下から加藤さんのことを見ている人がいるときもあった。
「じゃあお昼に山田くんと三人で絵里さんのところ行こうか」
「そうしましょうか」
そして昼休みの屋上にて。
「今日からお昼ご飯を一緒に食べさせていただく山田というものです! どうぞよろしくお願い致します!」
「うん。知ってる」
「よろしくなー」
「こちらこそ」
僕、絵里さん、加藤さんの順番で返事をした。
いつも3人でのんびりゆったりと食べていたお昼ご飯に、山田くんという刺激物が混入するだけで、ここまで騒がしくなるのか。
もう連れてこないほうがよかったのかなぁ?
「こら紺野。俺を連れてこないほうが良かったとか考えてただろ」
「ギクッ」
「おっ。聖のソレ、久しぶりに聞いたな」
「紺野くん可愛いですねー」
「可愛くないよ!」
こんな感じで僕は女子二人からいじられていた。
もう慣れっこですよ・・・
「俺だってこんなに騒がしいのは今日だけで、明日からは重箱に入った弁当とかサービスしちゃうんだからな!」
「新しいタイプのツンデレですか?」
「まさか加藤さんの唇からツンデレという言葉が出てくるとは!」
「加藤さんは結構キテるよ」
「ちょっと紺野くん。変な言い方はやめてください。私はそういう知識もあるだけですー」
「だって前にノートに」
「ああああああああああああ!!聞こえない聞こえないあああああ!!!」
加藤さんが耳を塞いで発狂し始めた。
そんなに隠したいのかな?
加藤さんはオタクだった。本人は『まだまだですよー』なんて言ってるけど、一般人の僕から見ると、かなりの重度なオタクだった。
まぁ僕もマンガとか読むし、ゲームもするからわかるんだけど、絵里さんがこの手の話に全く付いてこれなかった。
今は加藤さんに色々借りて勉強中らしい。ホント真面目だなー。
「加藤さんはオタクなんですか!?」
「違います」
「オタクだよ」
「ちょっと絵里さん!」
「へぇ・・・意外だ」
「ほら、こうやって引かれるから嫌なんですよ。絵里さんのバカー」
頬を膨らませて拗ねる加藤さん。
絵里さんがその頬をプニプニと触って『怒るなよー』と言っている。
「あっ、俺は別にオタクだろうが大統領の娘だろうが女っぽい男だろうが気にしない!」
「さりげなく僕のこと入れないでくれる?」
「むしろそんないろんなタイプの人と仲良くなるのが俺の目標だ!」
すごい良いこと言ってるんだろうけど、なんか暑苦しい。
絵里さんなんかパン食べながら聞いてるし。
「それはすごい! 山田くんはいい人だったんだね!」
「そんな! 加藤さんに褒められると俺、もらしちゃいそうです」
「山田くん。食事中だよ」
「すまんすまん」
僕は山田くんに注意をしながら、今飲もうとしていたお茶をお弁当の横に戻した。
今の流れで飲めるような精神をもっていないんでね。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
投稿が遅くなってしまいすみませんでした。
というわけで、一ヶ月経ちました。
その間に色々あったんですが、諸事情によりカットさせていただきました。
そして今作では加藤さんが餌食になりました。
これから仲良くしていこうね、加藤さん。
次回もお楽しみに!