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 とある幼馴染みと帰宅物語

 あの後俺は何度も姫乃ひめのorzどげざで謝り、なんとか解放されたあと、姫乃が「夕飯の材料買わないとだから」と、買い物に行っている間にゲームをする。

「お待たせ―――てやっぱりやってたのね」

「当たり前だ。ゲームは心の栄養って言うだろ?」

「言わないわよ!?」


 帰路に就くといつの間にか空には嫌な雲が青いはずの空に広がっていた。

 ……こりゃあ、一雨くるな。

「雨降りそうね……」

 俺と同じ事を思ったのか、ふいにそんなことを 呟く。

「……そうだな。それもどしゃ降りかな」

「やだっ!せっかく干した洗濯物が濡れちゃうじゃない!!」

「主婦かお前はっ!?」

「春夜は結衣ちゃんがいるからいいわよねー……」

「なにおう!俺だって毎日しっかり家事やってんだぞ!失礼な」

「ほんとにぃ~」

「マジだっつうの。メシ作ってんの俺だぞ」

 あとは浴槽掃除したり、洗濯機まわしたり、洗濯物干したり……って、俺って家事のほとんどやってる気がする……

「………むしろ結衣がやってる事の方が少ない気がする――……」

「……そういえばそうね―…。私たちが一緒に住んでた頃、殆どハルがやっていたような気がするわ……―」

 そうなのだ。

 その前に、先程姫乃が言った「一緒に住んでいた」というのは言葉通り、以前俺と双子の妹である結衣、そして姫乃の3人で姫乃の義母である小鳥遊夢奈たかなしゆめなさんの家に住んでいたのだ。

 その頃に夢奈さんに

「家の家事は男の子の仕事なんだよ!」

と、そう言われ、まだ小さかった俺はその言葉に従って家事の殆どをになっていたわけだ。

 そもそもなんで俺たちが一緒に住むことになったかだが―――

(ほんと……なんだかなぁ……―――)

 今はノーコメントって事で。―――まあ、その内話すと思う。

 とにもかくにも、その頃から俺は家の家事が自分の仕事だった。


「――……あの人のせいで体に染み付いちゃったからなぁ……。そう簡単には抜けないわな」

 俺としては、まぁ悪かないと思わんでもない。だってそれがあったから今の自分ある訳だし、料理まで出来るようにもなれたし―――

 ………とはいえ嫌な事も多々あるわけなんだが――

「ただ自分でやるのが面倒くさいだけだったのよね……うまく言いくるめられたわね」

「しゃーないさ。まだガキだったんだし、おかげで社会に出ても恥ずかしくないくらいにはなったかなーなんて思ってないわけでもないし」

 なんて言ってると、突然俺の頬に大粒と思われるサイズの雫―――つまり雨が降ってきた。

「くっ……まずいな。ここから姫乃んちが近いとはいえ、まだ距離があるってのに―――」

「どうする?確かこの辺に本屋さんがあったと思うけど」

 本屋か―――

 雨宿りついでになにか買ってくか。

 俺はフードをかぶりながら姫乃にそう伝えた。

「わかったわ。えっと確かこの道をまっすぐ行ったところのはず……。――あら、さらに強くなってきたわ」

「やばっ!走るぞ!」

 そう言って姫乃の手を掴んだ。

「――ッ!」

 その瞬間、心無しか姫乃の頬がリンゴよろしく真っ赤に染まっていた。

「――ん?どうかしたか?」

「な、なんでもないわよ!!―――って、ちょっと!!」

「ほら行くぞ!じゃなきゃ風邪ひくぞ」

 姫乃がなにかふぶつぶつ呟いていたが、握る手を強くし、引っ張るように走り出した。




「……雨、みそうにないわね」

「そうだな。どーすっか」

 あれから俺たちは、水が跳ねないように気を付けながら走り続け、目的地の本屋へ飛び込むことに成功した。雨が止むまで雑誌やらマンガやらを買うなり読むなりして思い思いの事をして時間を潰していた。

(かれこれ10分くらい経ったはずだけど……止む気配無いな)

 むしろ雨脚は強まるばかりだった。

「ったく、天気予報は今日一日中晴れるっていってたのになぁ――」

「あんまり当てにしない方がいいわよ。私、ああゆうの信用してないし」

「人間不信にも程があるよ」

「そんなんじゃ無いわよ!?」

「わかってるよ。冗談だよ」

 姫乃の事をそんなふうに思ってる訳ないじゃないか。

 ―――とはいえ………

「……マジでどうするか………」

 バスという手もある。確かここからだと俺んち辺りで 350円だったな。

「なあ姫乃」

「なによ」

 何故か不機嫌そうに、こちらに振り向いた。

「どうかしたか?」

「ハルはこういう雨の日ってイライラしてこない?」

「うーん……わからなくはないけどな。別に俺はそんなことないぞ」

「そう。 んで、何かしら」

「―――おおう、そうだった」

 つい忘れそうになってもーた!!

「バスで帰るか?」

 そう訊くと姫乃は少し考えるような仕草をした。一頻ひとしきり唸ると、バッと顔を上げた。

「いいわよ。なら役所辺りで降りましょ。そこなら私の家の近くだし」

「だな―――――えっ!?」

 今の言葉から察するに姫乃の家へ行くってことだよな?

「ん?どうしたのよ?」

 そんな俺の反応を見て、不審に思ったのか上目遣いで俺の顔を覗いてくる。

 思わず視線をそらす。………その目、反則だろ……。

 でもこのまま黙っていてもしょうがない。

「いや、何でもないよ。そうと決まればバス停まで急ごう!

「そうね。遅れてしまっては元も子も無いわね」

 よかった。あまり気にしてなかったみたいだ。

 そんな姫乃を見てホッと胸を撫で下ろす――――

「ほら、なにやってんのよ!!置いてくわよ!!!」

 んなっ!?何であいつそんなとこまでいるんだよ!?

「ちょっと待てよ!!!いくらなんでも急ぎ過ぎだろ!―――――って待ちやがれ!!」

 叫んでる間にも俺と姫乃き距離が離れていく。まったく、そういうのも昔から変わってないな……。未だに降り続ける雨の中、俺は姫乃の背中を追うように走り出した―――――――――

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