幼馴染と一緒
「―――はぁ・・・つ、疲れた、そして着いたあぁああああああああ・・・・・」
あれから俺は想像通りの結果で、ずっとツッコミ続けたため公園から30分くらいで着いたが、1時間かかったような気がする・・・。
それはともかくとして――――
「んで、まず何を買うつもりなんだ?」
隣に居る幼馴染みこと小鳥遊姫乃に問いかけてみる。
「ん?えぇっとね・・・。まずは春物の服買って、足りないものも買って、昼食をとってから今日の夕飯を買うという感じかな」
「あれ?姫乃って自分で料理するんだっけ?」
「失礼ね。じゃなきゃ生活出来ないでしょ」
そういえば独り暮らしだったっけ?そりゃあ出来なかったら無理だな。そうだ!
「明日、姫乃ん家行ってもいい?」
姫乃は少し考えてから言った。
「うん。べ、別にいいわよ。今ちょっと寂しいなと思っていたところなの」
「わかった。んじゃ明日行くからな」
いやぁ、こんなにあっさりOKされるとは・・・。まあ、口論になるよりは随分いいけどな。
2人で会話を交わししつつ、洋品店のある4階へ向かうため、エレベーターに乗り込んだ。
うーん、やっぱり混んでるためかエレベーターが文字通り箱詰め状態だ。あと1,2人乗り込んだらブザーが鳴り響き始める程に・・・。
しかし、2階3階と着く度に人が次々と出て行った為か、随分とエレベーター内に次々と隙間が出来ていった。
そして俺と姫乃は4階で降り、目的地へと歩き始めた。
隣で歩いている姫乃が俺に話しかけてきた。
「ねえ春夜、あんたはなんか買ってくの?」
「んっ?・・・まあな、今日発売のゲームがあるからな」
「やっぱりゲーム目当てなんだ」
「ったり前だ!」
そんな他愛のない会話をしながら歩いていたが。
―――いたんだが……
「んだぁーっ!!なんなんだこの人の多さはぁ!?」
どこを見ても人、人、人だ。今までいろんなイベント(もちろんアニメとかゲームとかだ)に行っていたが、やっぱり人ごみって慣れないもんだな……。だって歩くたびに人と肩がぶつかったり、「すいません」なんて言いながら人と人の間を通らないといけないんだぞ?俺、すげぇ疲れた……精神的に。
「知らないわよ、そんなこと……。でもこれは私もちょっと……」
「ここまでくると三○無双のようにこの人たちを蹴散らしたい」
「それはわかる」
てなわけでどなたか武器を私にくれませんかぁ!!これからゲージ全部使いたいんですけどぉ!
そう心で叫びつつ携帯を開く。時間を確認するためだ。
「さて―――――なっ……!?」
それを見て俺は絶句したね。だってデジタル表記で[11:50]だもん。あれからそんなに経ったんだ……。
「……ん?どうかしたの、春夜」
不思議そうな表情で俺の携帯の画面を覗き込むように俺の肩に顔を乗せてきた。ぴったりとくっついて俺の顔の横に姫乃の顔がある。
ちょっと姫乃さんっ!?そんなにくっつくからあなたのなんとも言えない感触の双丘がおもいっきり当たってるんですけどっっ!?
「あ、あの……姫乃、さん?当たってます……よ?」
俺が苦し紛れに呟く。その瞬間姫乃はいたずらな笑みを浮かべた。
……正直、今悪寒が………。
「何?もしかしてハルって私で興奮しちゃってるのかしら」
「マサカ。ソンナコトアリマセンヨ?HAHAHA☆」
気のせいかな。姫乃さん、なんか楽しんでませんか?というか久し振りに「ハル」って呼ばれた。
「あら、そんな反応をするって事は図星なのかしら?」
やめてぇ!?顔、そんなに近ずけるからその艶やかな黒い髪から甘い花の香り俺の鼻腔に入ってきて変に意識してしまうじゃないか!?
姫乃はしばらく俺にのし掛かっていたが、「ふふっ」と笑ってから離れた。
「まあいいわ。それって私のこと女として見てくれてるって事だものね」
「……………」
離れたことを助かったと思っている俺と残念がっている俺がいる。ちょっと複雑な気分だった。
× ○ × △ ×
「あ~食った食った~!」
「そうね。割とよかったわね」
あの後俺と姫乃はショッピングモール内のレストランで昼食を済ませてきた。味の感想はご想像にお任せします。
そして俺たちは一通り買い物を済ませ、姫乃の服を買いに洋品店に立ち寄っていた。←イマココ!
女物の店らしく、客層は10代の女性やカップルばかりだった。
「……なあ、なんか場違いな気がしますが」
「大丈夫よ。男の人もちらほらと居るし」
それが全然大丈夫じゃないんですよ。店内にいる男の人はどの人も眼で「助けて」っていってるもん。目が合う度、おつです的な会話をアイコンタクトでとってるし。あっ、今「そちらも大変ですね」て言われた―――気がする……。
姫乃が服を選んでいる間、そんな感じでちょっとした同士とのコミュニケーションをとっていると、奥から姫乃が服を持って帰ってきた。
「おかえり。いいの見つかったか」
「ただいま。ええ、でもちょっと悩んでるのよ……」
んっ?なんだろうか。
「ねえハルはどっちがいいかしら?」
そう言って姫乃は2着の服を見せる。あぁ、服のことだったのか。
右に持っているのはシンプルな白のワンピース。左はあの肩が出ている服だった。
「う~ん。俺的にはどっちも似合うと思うんだけどな」
「……それって本気で言ってるの?」
「もちろんだとも!!でもどっちかと言われると俺はワンピースの方かな?」
「そう?じゃあちょっと試着して来るわね」
そう言うと姫乃は近くにあった試着室に入った。
「覗いたら殺すわよ」
恐ろしい一言を置いて……。
「りょ、りょーかいです……」
まあ、そんなことはしないけどな。てな訳でカムヒアージェントルマン!!この俺にジェントルマンソウルを与えたまえっ!!そして我の煩悩を消失させたまえッッ!!!
よし!(多分)ジェントルマン魂の降臨に成功した。
とはいえ、
「先に店の前で待っt―――」
先に店に前で待ってるよ。そう姫乃に言おうとしたが、俺の紡いだ言葉は途中で止められる。
何故かって?
「―――えっ、ちょっ……」
突然後ろから押されたからだ。走っていた子供がぶつかってきたとわかったのは、俺が姫乃の着替えている試着室に上半身を突っ込んだ後だった。
「……え、ええ、えぇ……」
まだ着替えていたのか、白の下着に身を包んだ姫乃が俺を視界に入れるなり顔を真っ赤に染め、俺の顔をじぃっと見つめていた。
……これってマズくね?
「い、いいいいやこれは別にわざととかではなななくてですねっ!ええっと、その、ふ……不可抗力といいますか―――――」
無駄だよなぁ、と思いつつも弁明を始め、顔を上げる。
―――うわぁ……服の上でもすごいなとは思ってはいたが、ここまでとは……
って、胸の感想を言っている場合じゃねえだろ俺ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!
「……、、、」
姫乃は服を抱えながらプルプルと震えだした。心なしか、悪寒が……。
「……え、えっと………」
「―――――こ」
「こ」?
「この―――」
「えと、姫乃、さん?」
「こんのドスケベがぁああああああああああああぁぁぁぁッ!!!!!」
「いやちょっっぬぶッッ!?」
ものすごい声を上げると、フリーだったその白くやわらかそうなおみ足で俺の顔面を蹴飛ばしてきた。こんなことになっているのに「今の格好はちょっとエロかったな」なんて考えている俺だった。
この後の記憶はあまり無いけど、さっきの姫乃の姿は俺の脳内に永久保存してやったZE☆――たぶん……