9わん!
あの日から、僕は変わった。
もう、この世にはいないカワズのことを、もっと良く知りたくて、知るために、僕は変わった。
僕の行動理由はすべてカワズのためになり、今まで僕のために使っていた人生の時間は、カワズのために浪費するようになった。
僕の人生はまるで、カワズにのっとられたかのように、カワズだらけだった。
「カワズ? あぁ、あの病弱だった子か。確かにあの子とは小学生のとき同じクラスだったよ。え? どんな子だったかって? 話したことないから知らないよ。当時から学校にはほとんど来てなかったし、来ても一人でずっとうつむいて黙っていたよ」
カワズのことが知りたくて、カワズと同じ小学校だった人に片っ端から声をかけた。
「あぁ、あの根暗だったやつか。あいつ根暗なくせに気が強くてさ、昔給食のカレーをひっくり返して暴れたことがあったな。あれ以来、誰もあいつに話しかけなくなったんだよ」
他人の口から語られるカワズの話を聞くのはすごく嫌だった。自分の知らないカワズを知っているということが、何だか許せなかった。それと同時に、こいつらはずっと前からカワズと出会うことができたのに、何で僕はもっとはやくカワズと出会えなかったのだろうと、どうしようもない後悔が胸を襲った。
「カワズ? あぁ、あの子だったら、確か高桑さんと仲良かったよね?」
「そうそう、私たちにはすごい警戒心を抱いていみたいだけど、高桑さんだけには普通に接していたよね」
高桑? 十数人に聞き込みをして初めて聞いた言葉だった。
「その高桑さんって、何組?」
「あぁ、高桑さんは小学校5年の時に転校したから、この学校にはいないよ」
「……高桑さんがどこに転校したか、わかる?」
カワズのことをもっと良く知るための手がかりを僕は手に入れた。
「高桑さんなら確か……」