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メルヒェンランド  作者: 袋ラーメン☆好き男
魔法の国編 序
14/36

謁見キャンキャキャン

 ――かーかーかー。ポッポポ。

 ――かーかーかーかー。ポッポポポ。

「アパチア君、大導師様が名前聞いてきてるんだけど」

「アパチア・タニンニキョーミナイスタ」

「君そんなファミリーネームだったんだ。性格そのまんまだね……そうじゃなくて、あのおじさんの名前。動物に夢中で全然答えてくれないんだよ」

「大概ガサツ」

 紫軍服着たぁ、天然パーマのいかにも頼りないってカンジの草系イケメンシュー君がぁ、また動物たち掻きわけて部屋を横断してぇ、紫のアホみたいに豪華な法衣着たぁ、法衣着てアホみたいな指輪全部の指につけたぁ、頬杖のつき方がなんか変な、しょぼい小さいおっさんの大導師のところへむかってる。

 ……つーわけで、Hi! 術子だょ。

 今玉座の間。謁見中。マジウケる。そして動物いすぎandくさすぎ。意味不明。まぁでも、くさすぎだけどぉ、そんなにキライじゃないんだよね動物。実は。つーわけで、こっちも紫軍服、銀のロングにお面みたいに無表情貼りつけた絶対少女アパティーが人艦につれてきたおっさんがなんかVIPだったらしくてぇ、そんでなんか途中色々あって今ココ。

 アパティーは玉間初めてみたいで、ひたすらなんか部屋物色してる。ボウズ頭に白ブリーフ一枚の露出魔系のアホのおっさんだけどぉ、人艦にきたときから意気投合してる術代と、部屋の中央あたりでひたすら動物とたわむれてる。そして動物嫌いの術美は、檻魔法を自分にかけて、部屋のはしっこでタブレットでメットしてる。メットオークション。多分。いつもだから。

 ――ぶーぶーぶー。ニャーニャチュー。

 ――けんけんぴよぴよ、テッペンカケタカ。

 大導師と話したシュー君が、また動物を掻きわけ、てかなんだょこの動物。何度でも突っこむょ。てかなんでこいつらしゃべんないの? しゃべんない魔法かかってんの? 掻きわけ、おっさんのとこ行った。

「ここ地球じゃないの!?」

 おっさんが叫んだ。超ウケる。おっさん目丸くして、シュー君と術代交互に見てる。

「すっげぇ」

 けどそれだけ言ってまた動物にもどった。リアクション薄っ。あー、まぁでも、やっぱぁリアルかぁ。そんな気ぃしてた。マジで。

「わかんない」

 シュー君が色々聞いてるけど、わかんないばっか言ってる。あっ、あきらめた。またアパティーんとこむかってる。アパティーがガラスケース見てる。なんか古い本が入ったケース。魔導書? ケースすごい見てる。てか開けようとしてる。大導師がなんか言ってる。全然聞こえない。声小さいんだよね。なんか喉元々やばいらしくて、まあ元々系はしょうがないんだけど。マジで。しかも何か最近めずらしく叫んだらしくて、さらにやばいらしい。てか動きもちっさ。動きは関係なくない? けど、ほら、普段ほぼ置き物レベルで動かないから、あれ多分、相当あせってるょ。そう、普段は衛兵がいて、衛兵がいたら自分で動かないでなんか指示だしてんだろうけど、玉間に入るときに、おっさん拘束しようとしてぶっ飛ばされて、全員医務室行ってっからいない。

 アタシはため息をついて、動物たちを掻きわけ歩きだした。

 こう見えて、アタシけっこう真面目だから……。

 ――ヒヒーンヒーン。ヒンヒヒーン。

 ――ヒヒーン。ヒヒーン。ボホッ? ブルル……。

「あっ、術子ー。大導師のところにある牛乳とってきてくれるー? ガー君が牛乳あげたいんだってー」

 おっさんと術代の脇通りすぎようとしたら、空気読めない術代がなんか頼んできた。

「いや、アタシィ、ちょっとアレ止めぇ……」

 てかケース開けおえてんだけど。

 てか二人で、止めてたシュー君まで一緒に魔導書のぞきこんでんだけど。

「うおおこれ、とんでもないよアパチア君。見てこれ。こんな苦労してたんだ魔法作るのって」

 なんかがっつりめなんだけど……。しかもぉ、アパティーがそんなに嫌がってないっぽい。やぶさかでないっぽい。なんだよ……。

 どうでもよくなったので、牛乳にむかう。

 すげー見てる。大導師がすげーアタシ見てる。すげぇ目で訴えかけてきてる。

「とりあえず……お借りします……」

 すげーおとしやかな口調を発した。牛乳パックとグラスをつかむ。まぁ、社長みたいなもんだからね相手。こうなるよね。自然。口調。

「どうにかして……」

 聞こえちゃった。言われちゃった。聞こえちゃったからしょうがない……。

「シュー君! ちょっとシュー! それやめて! 本読むの! そんで大導師様が話すすめろって!」

 動物がすごいむらがってきた。

 両腕を上にあげて移動。

 おっさんand術代までたどり着いたが、無理。跳ねまわってる。軍服に前足かけまくってる。そしてそんなアタシを見て二人ともすげー笑ってる。思うさま笑ってる。

「とまれ! てか爪たてんな! やばいよ術代、無理だよこれ。どうやってあげる気?」

 唐突に、魔力の広がりがおきた。

 すぐ近く。

 少量だけど、強烈に濃い魔力。

 動物がちょっとおとなしくなってる。おっさんの両耳が光ってる。想像ついた。アパティー……片手をこっちに突きだしてる。他には何もおきない。やっぱり補聴魔法だな。おっさんの聴力サポートは完成したが、例によって飛散魔力がまだ残留してるんで、頂いて、アタシも補聴魔をかけることにした。

 うーん……うーん……。

 補聴……うーん……。

 サポート……うーん……。

 あっ。

 パックが落ちた。

「きゃー!」

 おっさん頭に直撃し、おっさんに全部かかった。真っ白。うおおッ。動物が、動物、食われてる。食われてはいない。動物でおっさんが見えない。すげーむらがってる。

「ごめんおっさん!」

「やだー! ガー君! 大丈夫ガー君!」

「うきゃうきゃきゃ」

 笑ってる……。楽しそうだからいっか……。まあ、術代も笑ってっし……。

《ねえそれ触んないで……お願いだから……》

 早速大導師の声が入ってきた。大導師、シュー君とアパティーは補聴魔やってないから聞こえないょ。

《絶対あとで処分するからね……衛兵帰ってきたら……。あの、大概さん朕はね……ジュブナイル軍をね……一体どういう意図でもって……つまり、こうなんて言うか……》

「うきゃきゃ」

《つまり朕はね……あなたが敵なのか味方なのか……》

「うきゃきゃすぁう!」

 ため息をついた。

 それで思っきり息を吸いこむ。

「おっさん! ごめんね! とりあえず牛乳はごめん! それで、あー、人魚とか、ブロックとかおもちゃとか小鳥とか、ぶっ飛ばしたの何でかって聞いてる! 大導……あー、あっちの小さいおっさんが聞いてる!」

 突如、おっさんが飛びおきた。

 動物が鳴き声、吠え声をあげて一斉に散る。

 うおおッ。

 マジビビる。

 一応かまえた。

 魔力魔力……イマジン確保、シュー君もアパティーもかまえてる。術代はすわりこんでる。

 おっさんは飛びおきた格好のまま、けわしい顔で、斜め上を見つめている。

「多分、なんだけど……」

 しゃべりだした。

 攻撃じゃねえのか。

 よかったマジビビったぁ。

「多分なんだけど、あのときは、パーンっていう気持ちだったと思う」

 ……何?

 アホだこいつ。

 やべえ。

 知ってたけど。

 やべえ。

 ――キャンキャキャン。わんわーん。

 ――ケンケンガーガー、わん……ガフッ。ガフ、ン。

 大導師を、なんとなく見た。

 変な頬杖ついたまま動いてない。おっさんを見つめてる。

《朕はね……条件しだいでは……我が国の幹部に引……》

「うきゃきゃあ」

 振りむくと、おっさんまた床で動物に埋もれてた。

 そのアホの姿を、しばらく見つめる。

「くすぐったい! うきゃきゃあ!」

 ため息をついた。

「条件次第で、幹部にしてもいいってさ! おっさん! 聞いてる!? なんか条件ある!?」

 なんで補聴魔かかってんのに通訳しなきゃなんないの。マジ意味わかんない。こいつ、果たして状況を理解しているのだろうか。

 そして突如、二度目の飛びおきをかました。

 鳴き声、吠え声をあげて、動物がふたたび散る。

 一瞬体が硬直したが、イマジンは特に集めない。

 シュー君もアパティーも、ちょっと振りむいたけどすぐ魔導書読みにもどった。

「家族をさがしてる! 主にうれうちゃんをさがしてる!」

 理解してんのかょ! 

 おまえじゃあちゃんとしろょ!

 大導師を見る。

 こいつはこいつで全く動いていない。

 アホばっかりか。

《わかった……さがしたげるけど……先に、会議で手腕を見せてもらってからにするから……》

 ――モーモーモー。ホーロホロ。

 ――モーモーモーモー。ホーギャッ! ギャギャ! バサバサバサ……。

「コラー! 会議はつまんないからやだ! コラー!」

 よくわからんけど、悲鳴をあげて飛ぶフクロウを追いかけはじめた。動物逃げる逃げる。牛とかやぎとかの大型のは、なんかたがいにちょっとずつよけてゆずりあう。フクロウすごい逃げてる。

《……じゃあ残念だけど終わり。もうやだ。そこのなんとかっていう大佐……ああ……いや……そっちの……》

 アタシを見てきた。

《お姉ちゃん……連れだしてもうこの人……》

 お姉ちゃんて……え……やなんだけど……。

 あっ……。

「ちょっとおっさん! 前見て前!」

《早く……》

 無理……それより、両手をあげてフクロウ見あげて走るおっさんが、シュー君に突っこんだ。シュー君にぶつかられたアパティーが魔導書を落とす。

 魔導書動物たちのなかへ……。

《ああ……》

 踏まれて……るだろう。多分がっつり……いや、ちょっと見えた。かんでる。ヤギがはむはむしてる。なんでヤギ近くにいんだょ……。

《誰か……ちょっと誰か……》


「コラァ!」


 おお!

 アパティーがどなった! 初めてみた!

 表情はあんまり変わってない……あれ? 手……

 ああこれまずい。

 急激な魔力展開。

「アパティー!」


「『アンタッチャブル(初代大導師手記)』」


 動物たちが浮きあがった。

 ――わんわん! きゃんきゃん! モーヒンコンコーン!

 ――にゃーぶぶー! チューメメ―!

 ――テッペンカケタカ!

 浮きあがって、回りはじめた。

「なにこれ! すっげえ! なにこれ!」

 プラスおっさん。

「アパチア君! ちょっと! アパ痛ッ!」

 早くなっていく。

 魔導書が見えた。

 ほぼカバーonly化してる……。

「うわー。アパティーホントにすごいんだねー」

 早々に魔導書の隣に移動してる術代は、そのまますわってる。アンタッチャブルの対象の隣、安全圏。

 檻のなかの術美も、さすがにメットをやめて部屋の様子を見つめている。

 周囲の動物も引きずられはじめた。まだ渦が拡大してる。怒りすぎ。

 渦がさらに広がる。

 危険すぎる。腕で顔をおおいながら、壁際まで下がった。

 大導師……変わってない。同じ姿勢。さぁすが。大導師の周囲で火花が散っている。見えないが防壁っぽい。風、物、動物すべてが大導師の周囲で弾かれている。

 そして一つだけ巨大な物体……おっさんが、

「ちょっ……やだッ! やだぁー!」

 術美の檻を直撃した。

 半壊した格子の隙間へ動物が突っこむ。

「やだ、ホント、マジ無理、やだって! やだ! 嫌ッ! マジ無理!」


「『アルコール魔法』」


 バァカ術美、よりによって一番どうしようもないの発動しやがった!

 本能か。それがお前の本能か。

「嫌ー!」

 悲鳴を上げながら柵を飛びこえ、術美は部屋を飛びだしてった。アルコール臭。くさい。獣臭とまじるとキモい。よくない。てかこれなんだょ。なんだこれ。なんだこの状況。いや、ちょっとおさまり気味? おさまってきた? ああ、弱まってる。ようやく気がすんだかアパティー。天井近くを部屋めいっぱいでまわっていた動物たちが……

 ――がーががぴょぴょぴょぴょ! コケー! ブボウッ!

 ――ポッホー! ピーケン……ピーケン!

 床につくなり叫びたおし走りたおしはじめた。

《あ……あ!》

 そして柵に突っこみはじめた。もうなりふりかまわず突っこんでる。なんだょ、酔ってんのか? あー酔ってんだ。だからか。全動物が突っこめばひとりたまりもない。柵は見る間にひしゃぎ、そして倒れた。

《あー……! やだちょっと……! やだあ……》

 そして術美が開けたままのドアから全部出てった。

 しばらく動物たちの出ていったドアを見つめ、そんで、とりあえずシュー君、アパティー、術代……あれ? 術代とおっさんがいない。あ、いたかも。動物たちに巻きこまれて出てってた気がする……。まぁいいや。とにかく残ったメンツ――シュー君、アパティー、大導師――と順番に顔をあわせた。

 全員無表情。

 アパティーが無言でカバーだけ魔導書を拾い、ケースにもどした。そしてシュー君がうやうやしい手つきで、そこにガラスケースをのせた。そして、二人そろって大導師のほうをむき、一礼し、二人そろって……ちょっとぉ待ってぇ! アタシ一人じゃんか! ちょっとぉ!

《気持ちわるい……うぅ……》

 アルコールが効いたか……。酒、あぁ、まぁダメなんだろぉな酒。牛乳ばっかり飲んでるもんな……。

 気持ちわるいと言いながらうつむいているので、その隙をねらって退出した。


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