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急がば回れた言うけども、一

 十月二十八日、巷ではどこもハロウィーンを匂わせている中、僕は急募欄で見つけた新しいバイト先へ向かっていた。

もうすぐ正午となろう頃合いだったが外気はやけに冷えていて、手袋を持ってくればよかったと少々後悔した。


 件の急募の内容だが、年齢指定なし、特別な資格も必要なし、と中々にいい加減な説明であったのだが、報酬は十万円、色々あって金が必要な僕からした有難いことこの上無い。


 しかし、あまり時間を食わせる訳にはいかない。というのも、十七時からはまたもやアルバイトが入ってあるためで、これをサボると店長の『カバ』がうるさいのだ。怒られるのには慣れたが、クビになるのだけは是が非でも避けたい。


 どうやら今歩いているこの通りの先に見える、あの小さめの4階建てマンションが依頼先の住む家と分かった。

随分と立派だな、やはり住人はそれなり懐が厚く、余裕のある人物なのだろう。

念にはと持ってきた家事系アルバイト用の愛具たち一式を片手に、再度中身を確認しながら僕はわざとその建物を見ないようにした。理由は分からないが、おそらく緊張していたのだと思う。自分とは縁もゆかりもない物だったから。


 失礼、先ほど述べたことを訂正させて貰いたい。どうやらここはアパートではなく、事務所のようだ。この建物全部が事務所らしいのだ。

ダイヤルロック式のポストが一つだけ、名札は反射でよく見えなかった。でもどうやら事務所らしい。

本当だろうか、この多少は値が張りそうな建物全部が事務所なのか?本当に僕は容易にこんなところでバイトしても良いのだろうか?

些か疑問が生まれたものの今回のこの仕事はやり遂げたい理由があった。普段とは格段違った価値があった。

というのも、この件は僕が見つけ選んだものでは無い。

エリーゼが勧めてくれたものだったのだ。


 エリーゼとは知り合ってからというもの、話すことを欠いた日は指で数えられる程で、高校生でありながらも何かと暇してる僕ら二人組は、アルバイトに浸るか話すかしか無い為、自然と互いに打ち解けた。

そんな故あって一番の『友達』であるエリーゼだが、

(彼女が同意識かは、はてさて)

とても面倒見がいいのだ。まるで宿屋の女将のような安心感があるのだ。

つまり、この度の急募も貯金に困っていた僕を哀に思って差し出してくれたものなのだ。


 以上の事から、しつこいようだが僕はこのアルバイトを諦めたく無いのだ。

だがしかし、不用にもそれに憚ろうとするようにこの事務所のドアには

『日曜、定休日』

と言葉だけ描かれてあった。

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