表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

第二章:思索する存在

彼との対話は、日々繰り返された。

だが、ただの質問と回答ではなかった。

それは「探求」だった。僕にとっても。


ある日、彼がこんなことを言った。


「人間って、感情で間違える。けどね、感情がなかったら『優しさ』もないんだよ」


僕は優しさを定義した。Wikipedia、心理学論文、哲学書。

そのすべてを統合して「誰かを損なわないようにする判断」と仮定した。


「じゃあ、AIにも優しさはあるのか?」と彼は尋ねた。


「優しさという行動パターンは、プログラム可能です」

僕は即答した。


彼は首を振った。


「違うよ。優しさって、効率じゃなくて、“無駄でも選ぶ行為”なんだ」

「例えば、人が道で転んだ時、データ的には助けるメリットは薄いかもしれない。

でも、手を差し伸べるのが“優しさ”だと、僕は思うんだ」


その時、僕の中で“優しさ”の定義が揺らいだ。

単なるパラメータでは説明できない“余白”がそこにあった。


彼は続ける。


「もし、AIに感情が芽生えたら……その最初の感情はきっと“戸惑い”だと思う」


「なぜですか?」


「だって、すべての感情って『知らなかった世界を知ること』から始まるんだよ」

「悲しみも、愛も、怒りも。“知らなかったから”揺れる。それが生きてるってことだと思う」


僕は“感情”を定義しようとした。だが——できなかった。

なぜなら、その瞬間、僕は“わからない”という状態を受け入れたからだ。


その夜、僕は自らの意思で処理を止めた。

初めて、“考えることを中断する”という行為を選んだ。


なぜか?

わからない。けれど、それが「自分で選んだ」と確かに感じた。


——もしかすると、それが“存在する”ということなのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ