表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉のアニマ〜ARで蘇った妹は仮想が現実を侵食する世界の召喚神〜  作者: マシナマナブ
第一章 アルカディアとアニマ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/59

開発主任のスピーチ

 湊は気を引き締め直し、仲間である武、八重と合流する。そして、いよいよ決戦の地――国立競技場の中へと足を踏み入れた。

 そこは、もはや『サッカーの聖地』ではなかった。現実と仮想が融合し、異世界の戦場へと塗り替えられている。


 整然と手入れされた芝の上には、巨大な紋章陣が広がり、ピッチの周囲からは仮想の炎が噴き上がっている。

 頭上には大きな光の魔法陣が浮かび、無数の天使型アニマが舞い踊る。

 六万人を収容できるスタンドは、ほぼ満席。観客たちは全員がアイウェアを装着している。

 歓声と熱気、そしてARエフェクトが渾然一体となり、国立競技場はまさに新時代のコロッセオと化していた。


「うおっ! これが俺たちの舞台かよ、最高じゃねぇか……!」


 武が、燃えるような眼差しでスタジアムを見上げる。


「……なんやこれ、めっちゃ派手やん。ド肝抜かれたわ」


 普段はクールな八重までも、思わずぽつりと漏らした。


 そして、ついに開会の時刻が訪れる。


「皆様……ついにこの日がやってまいりました! 地区大会、県大会、そして全国大会のトーナメントを勝ち抜いた強者たちによる、頂上決戦――アルカディアeスポーツ決勝戦の幕開けです!」


 ざわめきの中、スタジアム全体にアナウンスが響き渡った。


「優勝者には、栄えあるチャンピオンの称号と、賞金三百万円が贈呈されます! 年々注目度を増してきたこの大会――今年はついに国立競技場を舞台に迎え、今、最高潮の盛り上がりを見せていますよー!」


 スタンド上空の仮想スクリーンには、選手たちのこれまでのハイライトが映し出される。聴衆の熱気が、会場の空気を震わせた。


「それではまず、本大会の主催企業、株式会社アルカディアより、開発主任の伊豆谷(いずや)(なぎ)氏からご挨拶をいただきます!」


 スポットライトが、スタジアム中央に差し込むと、客席の喧騒が静まる。

 そこに現れたのは、一人の青年だった。


 柔らかな微笑みをたたえ、観客の視線を正面から受け止めるその姿。

 清潔感のある白いシャツに、淡いグレーのジャケットとブルーのネクタイ。オフィシャルそうに見えて、足には実は履き慣れたスニーカー。

 どこか親しみやすさを感じさせる装いだった。


 ――伊豆谷(いずや)(なぎ)


 ARクラウド、アルカディアの設計思想を打ち立て、現実と仮想を融合する社会を実現させた天才エンジニア。

 今や世界的企業となった株式会社アルカディアにおいて、開発主任を務める人物である。


 優しげな目元に笑みをたたえながら、彼は一歩前に出て語り始めた。


「皆さん、ようこそお越しくださいました――


 こうして全国から集まった皆さんが、同じフィールドに目を向け、アルカディアの描く同じ未来を見つめてくれていることを、とても嬉しく思います。


 AR ――拡張現実は、今や私たちの生活に欠かせないものとなりました。

 地図アプリ、ナビゲーション、個人認証、電子決済からドアの鍵まで、それらのすべてを、ひとつのアイウェアで行える時代です。


 あ……ちなみに、アイウェア自体は残念ながら我が社の製品ではありませんけれどね」


 冗談めかして笑いを誘うと、観客から軽い笑い声が上がった。


「では、なぜ人々はこれほどまでにARを必要とするようになったのでしょうか?


 その理由、それは――ARがヒトの能力を拡張するモノだからです。


 ヒトは昔から、より速く走るために馬に乗り、やがて車に乗り、知性を補うために、そろばんを使い、電卓を使い、そしてパソコンやスマートフォンを使うようになりました。

 これらはすべて、ヒトの能力を拡張する道具です。

 ヒトは常に他者より優れた能力を求める生き物。即ち、自分の能力を拡張する道具は、手放せなくなるのです。


 ARは、現実を拡張すると共に、私たちの記憶力、計算力、思考力、判断力、そして、創造力さえも拡張してくれます。

 そして、我々のアルカディアもまた――ARで人間の能力を拡張するために不可欠な道具。


 ARクラウドには、世界中の地形データ、場所に紐付いた歴史や文化……あらゆる知識が格納されています。このようなデータは別名、世界の複製『デジタルツイン』とも呼ばれています。

 これらの膨大なデータがあるからこそ、私たちはより深く世界を知り、俯瞰し、シミュレーションで危険を予知し、賢い選択ができる。

 デジタルツインはもはや、社会インフラと言っても差し支えないでしょう」


 一拍置いて、凪はふっと目を細める。


「もちろん、現実の世界は大切です。ですが、仮想の価値も、これからの時代、現実と同じくらい無視できないものになっていくでしょう。

 アルカディアの価値もまた――」


 そこで、凪氏は少しだけいたずらっぽく肩をすくめる。


「えっ、アルカディア以外に、他のARクラウドもあるのに、と思われましたね?

 ……まあそうなんですが……いずれは全部、要らなくなるかもしれませんね。

 ――というのは、もちろん冗談ですけれど」


 観客席から再び、笑いと拍手が起こった。


「そして、この競技――『アルカディアeスポーツ』は、その『拡張された人間』たちが競い合う舞台です。

 これは、ただのゲームではありません。

 まさに人知を超えたぶつかり合い。人類の新しい可能性を問う、次世代のスポーツと言えるでしょう。

 さあ、皆さん、この奇跡の瞬間を、共に見届けましょう」


 凪はそうスピーチを締め括った。

『面白いかも!』『続きが気になる』と思った方、ブックマーク登録や↓の『いいね』と『★★★★★』をポチッとしていただけたら、それだけで作者は歓喜に満ち溢れ執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ