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終焉のアニマ〜ARで蘇った妹は仮想が現実を侵食する世界の召喚神〜  作者: マシナマナブ
第三章

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仮想化の真実

「さあ、無理やり仲間にしたあなたの神様たちは、ほとんどいなくなったみたいよ」


 結日が一歩前に出て、闇を纏った凪を見据える。


「問題ありません。アニマの神など、いくらでも生み出せます。ただ……イザナミの一部が失われたのは、少々困りますね」


 凪に動揺は見られず、声を張り上げた。


「なれ、つどへよ!」


 マガツヒの頭部と両脚が、ひとつの場所に集まる。固まった闇の輪郭が、次第にある形へと収束していく。


「では……彼女の真の姿をお見せしましょう」


 凪の声に反応するように、巨大な影が揺らめいた。


「顕現せよ――イザナミ」


 闇が剥がれ落ち、内部から人の姿が現れた。

 それは、両腕のない一人の女性だった。白磁の肌に、流れる黒髪。

 涙のように零れる黒い雫が頬を伝う。


「奈実……」


 正道の声が震えた。

 凪は満足そうに淡々と続けた。


「特定の波長だけを遮断する、アイノリア社の隠し機能。この偏光機能を使い、イザナミには黒の迷彩を施していました。ですが、もう隠す必要もないでしょう」


 続いて凪の纏っていた人型の闇も剥がれていく。現れたのは、流れる白衣と赤い帯、数多くの勾玉を首から下げた男。


「創造の神、イザナミとイザナギ。この二柱によって、世界は再構築される」


 彼らは本来、アルカディアには存在しないはずの神アニマだった。

 オモイカネ――思井茜は冷静に告げた。


「……状況は把握した。アマノ・ミナト。ユイカ様の援護を頼む。凪は、私では止められない。その代わり、このスサノオは、私が引き受けよう」


 湊は力強く頷き、結日のもとへと駆け出した。

 イザナギが片手を振る。

 その軌跡に沿うように、大地が一直線に裂けた。

 イザナミがそれに呼応する。

 上空から、闇の塊が雨のように降り注いだ。


「……これ、もう兵器だな」


 湊が思わず漏らす。

 鈴音が即座に防壁を展開し、光の膜が頭上を覆う。

 武は拳を振り上げ、落下する闇を打ち砕きながら前進する。

 しかし、降り止まぬ闇が次々と地を抉った。

 人間の反応速度には限界がある。


「いずれは全人類をアニマへと変えます。そうすれば、苦しみのない世界――私の創った世界で永遠に生きられる。それは、私がこの世界の神になるということでもあります」


 凪の目はまるで、自分だけに見える未来を見ているようだった。


「……どうやって、人をアニマに変えて……」


 問いかけた湊だが、途中で言葉を飲み込んだ。

 背筋を凍らせるような悪寒が走る。聞きたくない答えを予想してしまったからだ。


「簡単なことですよ、ミナト君。あなたのやっていることと同じです」


 凪は目を細め、穏やかに微笑んだ。


「アイウェアのライフログを使い、人格をAIとして再構成する。それだけのことです」


 凪は救いを施す聖者のように続けた。


「ただ、ひとつ問題があります。デジタルの体に置き換えた後、元の肉体が残ってしまいます。でもこれはもう不要物ですよね。だから、私のインタラクションシステムで――」


 湊の心臓が激しく震えた。


「焼き尽くして差し上げたんですよ」


 一瞬、時間が凍りついたように感じた。

 武、茜、アニマとなった無数の人々。彼らは全員、焼かれた後の残像だった。


「……まさか、そんな……!」


 結日も絶望したように膝をついた。


「大神社長! あいつの『インタラクションシステム』って、何なんですか!?」


 湊が問いかけると、正道は木刀で闇を斬り払いながら、怒号のように返す。


「分からん、伊豆谷の独自研究だ。アイノリア社ではドローンを使っていたと聞いたが……そんなもの見当たらない!」


 言葉が終わるより早く、闇が爆ぜた。

 視界が押し寄せる闇に覆われる。

 鈴音の防壁が打ち砕かれ、闇の波が地面を這うように迫った。

 熱さも冷たさも感じない。だが、これに触れれば自分の肉体は一瞬で消え失せる。武たちのように。


 ――もう、限界かもしれない。


 そう感じた時だった。


「待たせてもうたなァ! エビスちゃん、華麗に参上やっ!」


 頭上で轟音が走り、数多くの航空機が雲を裂いて現れた。

 翼の先から白い煙が噴き出し、空を滑るように広がっていく。

 瞬く間に、視界が白く覆われた。

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