白と黒
正道という強力な助力を得て、湊と結日は体勢を立て直した。
正道はツクヨミと対峙し、湊は鈴音、武とともに、オモイカネとスサノオを迎え撃つ。
そして結日は、凪と相対していた。
黒い闇が人の形を成し、凪の身を包んでいる。
「あなたも……マガツヒと繋がっているの?」
結日の問いに、凪はゆっくりと首を振った。
「マガツヒではありません。イザナミです。そして、イザナミに現実を侵食する力を与えたのは、この私。もともと、これは私の力なのです」
「細かいことはよく分からないけど、つまり……あなたを倒せばいいってことね」
結日が構えを取る。凪の唇がわずかに吊り上がった。
「何度も言いましたが、私はゲームマスター。ゲームの中で、マスターに挑む愚かさを理解していませんね」
巨大な黒い人型が、まるで彼の意思を代弁するように動き出す。黒い拳が結日に向かって振り下ろされ、アスファルトを抉った。
結日はその直前で体をひねり、側転で軌道から外れる。
続く二撃、三撃。
凪の纏う黒い人型は、意思を持った生物のように連打を繰り出した。
――正道の前には、波打つ闇を携えたツクヨミが立ちはだかっていた。
「副社長の私が社長になるには、社長を排除せねばなりませんな。なりませんな」
ツクヨミの声が、狂気を帯びて響いた。
「会社を預かる者として、後継者探しは重要な仕事だ。だが、君はその器ではない」
ツクヨミの瞳が黒く染まる。
次の瞬間、無数の闇の塊が繰り出された。
正道を包み込まんと迫り来る。
正道は一歩も退かなかった。
アマテラスの加護を受けた木刀が白く輝き、押し寄せる闇を次々と切り裂いていく。
「白黒はっきりさせましょう。世代交代ですな!」
ツクヨミの闇が一斉に噴き上がる。
周囲が黒に塗り潰されようとしたその瞬間、アマテラスの白光が奔り、闇を押し返した。
ツクヨミもさらなる闇を生み出し、光と闇が拮抗する。
そして、均衡のわずかな隙間を、閃光が走った。
「ギラギラ輝く太陽より、月の方が風情があるというのに、ですな……」
ツクヨミの胸元を、正道の木刀が打ち抜いていた。
闇が裂け、白光が一気に広がる。
「月は、ただ日の光を映しているだけだ」
その言葉が終わるより早く、ツクヨミの身体は崩れ、黒い霧となって空へと溶けていった。
――その少し離れた場所では、湊たちがスサノオとオモイカネの連撃に晒されていた。
スサノオの剣が振るわれるたび、黒い炎が竜の形を取り、咆哮を上げてアスファルトを溶かしていく。
鈴音は両腕を広げ、防壁を展開した。
「天の光よ、我が舞に宿れ! そして、命を蝕む闇を祓え!」
幾重もの光輪が浮かび上がり、炎の奔流を押し返す。
オモイカネと対峙した武は、雷を纏って拳を打ち鳴らした。
「理屈で守れる正義なんてねぇ! 俺は拳で守る!」
「ユイカ様に近づくものは、すべて排除する」
オモイカネの闇魔法と武の雷がぶつかり合う。
衝突の爆光が戦場を白く染めた。
閃光に照らし出されるように、オモイカネの背からマガツヒの左手がうねりを上げる。
「出てきやがったな!」
黒い腕が伸び、武を絡め取ろうと迫った。
「そんなもんに、俺が捕まるかよッ!」
武の動きは止まることなく、雷を纏った拳がマガツヒの根元を打ち抜いた。闇が裂け、ノイズのような悲鳴が弾ける。
その一瞬の隙に、湊はオモイカネの背後へと駆け抜けた。
「今だ、鈴音!」
鈴音が両手を掲げ、光の結界を展開する。
幾何学模様の陣がマガツヒを覆うように広がった。
湊は懐から、八重にもらった光属性アイテム――『アポロンの灯火』を大量に取り出す。
灯火が開放され、光の粒子が闇を焼く。結界に阻まれ、逃げ場を失ったマガツヒの左手の輪郭が崩れ始めた。
やがて閃光の中に溶けるように、闇は完全に消え去った。
マガツヒの憑依が祓われたことで、オモイカネの瞳に理性の光が戻り始めた。
「……いけない……ここは……?」
焦点の合わない瞳が、虚空をさまようように動く。
何が起きたのか、何も分かっていないようだった。
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