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終焉のアニマ〜ARで蘇った妹は仮想が現実を侵食する世界の召喚神〜  作者: マシナマナブ
第三章

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仮想の神々

 オモイカネの放つ黒炎が、放射線のように空間を走った。

 それに重なるように、ツクヨミの手から生まれた闇の球体が軌道を描いて迫りくる。どちらも空間をその存在ごと削り取る力を持つ。


「ユイカ様……理想の世界を、どうして否定なさるのです? 永遠の幸福がそこにあるのに」


 結日は一歩踏み出し、地を蹴った。彼女は軽やかに、宙へ舞う。

 前方宙返りで黒炎をすれすれで回避。

 着地と同時に体をひねり、連続のバク転で次々と迫る闇球の軌跡をかわす。

 最後の大きな一撃を、後方宙返りで抜け、両腕を広げて着地。それは完成された演技のようだった。


「悲しみは、誰かを想う証だよ」


 結日はもう一度、跳んだ。

 オモイカネが空を裂くように闇の氷刃を放つ。

 結日は地を蹴り、ロンダートからバク転、そして伸身宙返りへとつなぐ。

 背後から飛んだ氷の刃が肩をかすめる。

 冷たさとも熱さともつかない、鋭い痛みが走った。

 それでも、彼女は止まらない。オモイカネの頭上を飛び越え、滑らかな回転の軌跡が光の弧を描く。


 着地と同時に、オモイカネの魔法の発生源である魔法陣を踏み砕いた。

 魔法陣は白く反転し、砕かれて四方に散る。

 オモイカネが思わず後退した。


「……ユイカ様、そんな生き方では、永遠に苦しむことになりますよ」


 結日は息を整えながら、静かに構え直した。


「命は永遠じゃないんだよ。ごめんね、アカネ。今のあなたのところには行けない」


 ――その頃、湊たちの戦場。


 タジカラオの黒い拳が地を叩いた。

 地面が光を放ち、衝撃で大きく抉れる。


「物足りない。この仕様ではパンチが足りませんなぁ!」


 タジカラオが謎の叫びを上げた瞬間、建物が軋みながら傾いた。


「さっきより威力が上がってる!」


 湊は地を蹴り、横倒しになった舗装の影へ滑り込む。

 鈴音が慌てて駆け寄り、ぴしっと指を突きつけた。


「この私がいる限り――ミナ兄ぃには触れさせないっ!」


 鈴音の高速回転がタジカラオに迫る。

 しかし、その拳に弾き返された。


「現場に近いマネジメントを心がける私は、製品仕様もちゃんと把握しているんですなっ!」


 タジカラオが、再び吠えた。


 次の瞬間、頭上から赤黒い炎が降る。

 振り下ろされたスサノオの剣から、流星群のように炎が放たれていた。


「神だろうが何だろうが、この拳で俺の正義を示すまで!」


 武が雷を纏った拳を繰り出し、波動弾を打ち出す。

 炎の雨のいくつかは相殺されたが、残ったいくつかは街を穿った。


「アルカディアは、最強のプラットフォーム。そのプラットフォームを世に送り出した私を讃えるのだ」


 スサノオの瞳が赤く光り、力強い結界が展開される。武の波動弾を跳ね返し、その一つが武を直撃。武の体が弾き飛ばされ、壁に叩きつけられた。


「タケル兄ぃっ!」


 鈴音が叫び、両手を広げて光を展開する。

 炎を防ぐための光の防護陣が張られた。


 そこに、凪が歩み出る。

 降り注ぐ炎は、彼の周囲で左右に割れていく。

 彼の立つ空間だけ、静寂に包まれていた。


「私の世界では、実体を持つ者のほうが例外なのです。そして、例外は……取り除かねばならない」


 その声とともに、凪の体表から黒い甲殻が噴き出した。

 ファイターの奥義『拡張甲殻』に似ているが、それは現実そのものを侵食する力を備えている。

 凪を包んだ闇は巨大な人型を形作り、触れたものを消滅させる。ビルの壁が波打ち、街灯がねじれて倒れる。


「どうです? 最高だとは思いませんか?

 もはや仮想が現実を凌駕しています。私は――この世界を思うままに書き換えられるのです」


 その黒い甲殻の腕が、オモイカネとツクヨミと戦っていた結日にまで伸びていく。


「やめろ……!」


 湊が叫んだが、結日の心配をしている余裕はなかった。タジカラオとスサノオが同時に襲いかかってくる。


 凪の攻撃に気づいた結日は後方に跳び、間合いを取る。

 しかしツクヨミの追撃が間髪を入れず襲いかかる。

 湊も回避行動を取りながら結日と合流した。

 気づけば、二人は完全に包囲されていた。


 オモイカネの渦巻く闇魔法。

 タジカラオの黒い重撃。

 スサノオの黒炎剣。

 ツクヨミの闇結界。

 そして、凪の黒い甲殻。


 ――逃げ場は、もうなかった。


「ミナト君、背中を預けるって……こういう感じ?」

「ああ。不思議と安心できるね。パーティ戦で挑んでなんとか勝てるかどうかという神クラスに、四方を囲まれてるというのに」


 二人が構えた瞬間、四方から闇が押し寄せた。

 鈴音の防壁が間に割り込み、衝撃波を必死に押し返す。

 しかし複数の神格級の攻撃に押されていく。唯一の闇の抜け道の前には、タジカラオが拳を構えていた。


「あそこを突破するしかないね!」

「そうみたいだね。タケルと俺であいつを引きつける。その隙にユイカはここを突破して!」

「そんなの、ダメだよ!」


 タジカラオが拳を構えた。

 黒いエネルギーが拳に収束し、空気が震える。

 盾になってでも結日を逃そう。湊がそう決意した次の瞬間――タジカラオの体が真っ二つに断たれた。


 背後から現れたのは、木刀を携えた一人の男。


「大神社長……?」


 それは木刀を構えた大神正道だった。

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