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終焉のアニマ〜ARで蘇った妹は仮想が現実を侵食する世界の召喚神〜  作者: マシナマナブ
第三章

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悲しみのない世界

 凪はまるで自らの成果を説明するように語り続けた。過去の過ちなどもはや隠す必要もないかのように、淡々と。


「君も、アニマになればいい。そうすれば、総一郎さんに会わせてあげますよ。もちろん、アニマの聡一郎さんに。そして、また一緒に暮らしたらいい」


 その言葉には、恩着せがましい響きさえ混じっていた。

 結日は、鋭く言い放す。


「私は、アニマにはならないよ」


 その瞬間、背後から波立つ囁きが届いた。

 振り向くと、茜――オモイカネが甘い微笑を浮かべている。


「ユイカ様。こちらへおいでください。ユイカ様。ここには安らぎがございます。ユイカ様。そしてまた私と触れ合いましょう」


 その声音は、母のように優しく、同時に抑えきれぬ欲望が滲んでいた。

 彼女を見て、凪は嘲るように付け加えた。


「そう、茜さんも、聡一郎さんの件を追っていました。アニマの体をうまく使い、私まで辿り着いてしまったのです。なので仕方なく、私は彼女を救ってあげました。記憶の悪い部分を少し取り除き、彼女の欲望を強め、より良い形に変えてあげたのです。アニマになれば、嫌なことはすべて忘れて、より自分らしくなれる。素晴らしいですね」


「それは、自分に都合の悪いことをなかったことにしてるだけだよね」


 結日の怒りが、全身の震えを伴って滲んだ。


「──ミナト君、私、決めた。もうこの人、蹴り飛ばすね?」


 ミナトはためらいもなく応じた。


「俺も、それがいいと思う。そして、ユイカには十分にその資格があると俺が認める」


「どうぞご自由に。ただし、その選択が、どれほどの代償を生むか、すぐに君たちが知ることになるのは残念です」


 その挑発を気にすることもなく、湊は力を解き放った。


「召喚――アメノウズメ、そして、タケミカヅチ!」


 魔法陣が床を奔り、光の輪が弾ける。

 鈴音と武が、同時に現れた。


「出ましたぁ……うおおおっ、来たよこれ、間違いない、この空気感、完全にラスボス戦ッ! 最終章・黒き創造主の顕現ってやつだね!」


 鈴音が興奮を抑えきれず、胸の前で両手の拳を握りしめている。


「上等だッ! 今こそ見せてやる! 俺たちのジャスティスが、作られた世界になんか負けるかよッ!」


 武の叫びは雷鳴を轟かし、空間を震わせた。

 だが、凪はあくまで穏やかに微笑む。


「……とても賑やかですね。でも、理解していますか? 私は、この世界の創造主であり、ゲームマスターなのですよ」


 凪の言葉と同時に、床から黒い光が噴き上がった。

 炎の剣を背負った巨影、スサノオが立ちはだかる。


「知ってますか?」


 凪は軽く笑った。


「彼は元、アルカディア事業部長。私をアイノリアから引き抜き、機密情報の入手を示唆した張本人です。コードひとつ書けないくせに、アルカディアの成果を自分の手柄のように誇示するんですよ。だから──イザナミで潰して、アニマにしてあげたんですよ」


 スサノオの剣が地を裂き、黒い炎の波が走る。

 武が咆哮し、弾丸のような正拳突きで応じた。


「行くぞ、鈴音!」

「了解! 踊りで加護をかけるよ!」


 鈴音の舞いがアメノウズメの加護を呼び起こし、武の拳が光を纏う。

 武の光の拳はスサノオの炎の剣を押し返した。


「召喚神より、サモナーを叩くのが定石でしたね」


 凪の声が響くと、新たな神級アニマ、タジカラオが黒い腕を振り上げ、湊へと迫る。

 現実を侵食する力を備えたその攻撃によって、大地がえぐれた。

 湊は紙一重でそれを回避する。


「彼は開発部門長でした。いつも何かと私を敵視して、口うるさい男でしたよ。ですが、ほら、今は私に忠実な拳になってくれました」


 凪は愉悦を隠そうともせず、指先でタジカラオを指し示した。

 その笑みには、敵対する勢力を力でねじ伏せ、支配した陶酔が滲んでいた。


 一方、結日の前に立ちはだかるのは、オモイカネとツクヨミ。

 オモイカネの闇の魔法が渦を巻き、世界がねじれて見えている。


「ユイカ様に触れるためなら――私はどんな手段でも用いましょう」


 背後で、ツクヨミが静かに手を掲げる。

 闇が彼の足元から広がり、床を這うように形を変えていく。


「私はアルカディア社副社長、そして次期社長。社長がいなくなれば、後を継ぐのは私……当然の流れですな。――もっとも、会長は伊豆谷君ですがね」


 黒い魔力の群れが結日に向かって奔る。

 しかし彼女は一歩も退かず、体をひねってその波を切り裂いた。


 そのとき、空に浮かび上がった闇の頭部が歪んだ声で叫んだ。


「――あいにあふれ、かなしみのないせかい」


 その言葉に、結日の瞳がわずかに揺れた。

 それは、父を失った彼女が、かつて願った世界だ。

 だが、次の瞬間、その想いを振り払うように結日は首を振る。


「悲しみのない世界――そんなの、全部、嘘だよ」

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