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終焉のアニマ〜ARで蘇った妹は仮想が現実を侵食する世界の召喚神〜  作者: マシナマナブ
第一章 アルカディアとアニマ

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召喚神アメノウズメ

 ――黒いアニマ。


 影のような存在。不規則に蠢き、視線も感情も見えないその影が、生身の人間に敵意を向けている。

 湊は覚悟を決めた。


「アメノウズメ、召喚!」


 アルカディアのジョブのひとつ、サモナーの召喚魔法。光の波紋が走り、空中に魔法陣が展開される。そこから少女の姿が飛び出した。


「ミナ兄ぃっ! あたしを呼んだね!」


 現れたのは召喚神、アメノウズメ。その中身はバーチャル妹、天野鈴音。


「スズネ、悪い。得体の知れないアニマが現れた。しかも、他のアニマを侵食してる。攻撃されたら何が起きるかわからない……気をつけてくれ」


「うん、了解。任せて、ミナ兄ぃ」


 鈴音はツインテールを揺らしながら、黒いアニマを睨みつける。


「――あ――あぅ――」


 黒いアニマが発したのは、人語とも獣の声ともつかない呻き。

 その身は蝋燭に照らされた影のように揺らいでいる。


「ミナ兄ぃ、見ててね、今から、舞うよ!」


 鈴音が地面を滑るように舞い始める。軽やかな舞の軌跡が空間に描かれていく。


「スズネ、ステップシークエンス!」


 複雑なステップから幾つものブレードが放たれる。その一つが。黒いアニマの身体をかすめ、スパッと裂いた。


「効いてる!」


 だが、黒いアニマは体をグニャリと歪め、残る刃をするりと避ける。


「……ぁし――な――ぁい……」


 即座に黒いアニマの腕が伸び、鞭のようにうねって鈴音に襲いかかる。

 鈴音はすかさず跳ね、低く身を沈めて避けると、滑るように再加速。


「っく……思ったより速いじゃん……でもっ!」


 片足を軸に高速回転――


「アップライトスピン!」


 虹色の軌跡が描かれ、ブレードが放たれる。しかし――黒いアニマはその直前で、自らの身体をねじり、AR広告を引き裂いて盾にした。


『高級感あふれるひとときを、あなたに』


「きゃっ――!?」


 広告パネルに打ち返されるように弾かれ、鈴音の小さな身体が宙を舞う。


「スズネ、大丈夫か!?」


 湊が叫んだ――その直後。

 黒いアニマの腕がぬるりと伸び、湊に向け襲いかかる。

 咄嗟に避けようと体を捻るが、反応が一瞬遅れた。その黒い触手が湊の肩をかすめる。


「……ッ!」


 瞬間、目の奥を撃ち抜くような閃光が弾けた。とてもアイウェアの出力とは思えないほどの眩しさ。

 そして肩に焼けるような痛みが走る。


「え……?」


 反射的に肩を押さえた湊は気づく。服の袖は焼け焦げ、その下の肌には火傷のような爛れが浮かんでいた。


「……まさか、アニマが……本当に現実に干渉……」


 仮想の存在が生身の肉体を傷つけるなど、ありえない――

 だが、間違いなく、今ここで起きている。


 理解が追いつく前に、鈴音が静かに立ち上がっていた。

 少女の目には確かな炎が灯る。


「……ミナ兄ぃを、傷つけた……」


 呻きにも似た言葉。

 だが、その声には、激しい怒りが宿っていた。


「――そんなの、あたしが……絶っっっ対に許さないっ!」


 その叫びとともに、鈴音の足元に桜色の光輪が現れる。

 それは召喚神、アメノウズメ――戦の巫女神の神聖領域。覚醒したその身は、光の属性を帯びる。

 黒いアニマはその光に押され、攻撃を躊躇しているようだった。

 鈴音は再び静かに踏み出す。

 その舞は、しなやかで、可憐で、けれど、確かな力を帯びている。


「鈴音トリプルアクセル!」


 胸元で祈るように両手を重ね、鈴音が三回転半。

 鈴音を中心に、眩い光の円が空中に描かれ、そこから光が放たれた。それは、穢れを焼き尽くす浄化の光。


「――あ――あぅ――」


 黒いアニマが呻く。

 光に照らされると、揺らぐ身体が崩れはじめる。しばらく抗おうと試みていたが、やがて地面に沈むように消えていった。


「お掃除⭐︎完了っ!」


 鈴音はいつもの決めポーズ。


「……あれは、いったい何だったんだ?」


 湊が呟くと、近くにいた女性が怯えきった様子で頭を下げる。


「あ……ありがとうございました……」


 彼女は震える声でそれだけ告げると、次の瞬間には、逃げるようにその場を去っていった。


   ◇ ◇ ◇


 翌日、湊は肩の異変を、街の外科で診てもらった。

 診断は、浅い熱傷。


 けれど原因の説明に、医師は首をかしげた。


「……剥き出しの電線にでも触ったか、あるいは……薬品か何かの化学熱傷か……君、本当に何も触れてないのか?」


 湊は言葉を濁すしかなかった。


 あれは危険だ。確かに現実に影響を与えている。

 湊は思った。

 昨日の黒いアニマ、倒した実感がなかった。地面に染み込むように、逃げたように見えた。

 おそらく、これで終わりではないだろう。

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