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終焉のアニマ〜ARで蘇った妹は仮想が現実を侵食する世界の召喚神〜  作者: マシナマナブ
第三章

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現実と仮想のインタラクション

「当時、アイノリア日本法人の代表が転落死した件は大々的に報道された。けど警察は最終的に事故として処理したんや」


 アイウェア越しに映し出されたエビスちゃんは、いつもの八重より少し高い声で話していた。どこか機械的な抑揚を帯びているようにも思える。


「現場には、聡一郎氏以外の人物は確認されとらん。危険物もなし。防犯カメラでも異常は映ってへん。……過去の記事では、そういうことになっとるわ」


 実際、ライフログを見返しても――それを否定する材料はどこにもなかった。

 聡一郎は確かに、誰かと話していた。だが、相手の姿はどの映像にも映っていない。

 気になるのは不自然な青白い光だけだ。


「もし、あれが新しい機材のテスト中に起きた暴発だったとしたら……やっぱり事故ってことになるのか」


「そういうこっちゃな」


 エビスちゃんは軽く肩をすくめるような仕草を見せてから、続けた。


「ユイカのお父さん――総一郎氏の再現データは、今うちで処理中や。なにせ二十年分のログやからな。まだ時間がかかる」


「……そうだよね。ヤエさんありがとう」


「せやけど、研究に関する部分だけは先に抽出して、ざっくりまとめてみたで」


 エビスちゃんは、抽出したライフログのイメージを投影した。


「研究内容を一言で言えば――現実と仮想のインタラクションや」


「インタラクションって……たとえば、ゲームコントローラーが震えたり、ARキャラが反応したり、そういうやつだよね?」


「せやな。テーマとしてはそう目新しいものやない」


 湊は以前から気になっていた疑問を再び口にした。


「だとしたら……どうしてアイノリア社日本法人の代表が、わざわざこの研究を指揮してたんだろう?」


「せやろ? そこはうちも気になって調べてみたんやけどな」


 エビスちゃんは軽く頷くと画面を切り替える。


「この研究、『軍事転用の可能性』があったらしいんや」


「……軍事!?」


 結日の声がかすかに震えた。

 まさか、父がそんな研究に関わっていたとは――。


「ここ日本では特に軍事に対して世間の目は厳しいやろ? 企業イメージへの打撃がデカい。せやから、社長が自ら極秘で監督していたんやろうな」


「確かにそれなら説明がつくね。一体、どんな内容なんだろう……」


「ただそこが問題や。それらしい研究成果らしいものは、記録には残ってへん。けど……聡一郎氏の最期の映像。それが唯一の手がかりかもしれんね」


 聡一郎氏はかなり驚嘆していた。そして、光と共に落下した。


「もうひとつ、重要なことがある。

 このプロジェクトに関わってた人物やけどな――」


 エビスちゃんが指先で空を弾くと、ホログラム映像が切り替わった。

 そこに映ったのは、見覚えのある男の姿だった。


 伊豆谷凪。

 アルカディア社の開発主任。


「……凪さん」


「せや。そしてな、聡一郎氏と凪氏が言い争っとる場面が、ログに残っとるんや。どうも、アイノリア社の研究データがアルカディア側に流出しとったらしい」


「それって……産業スパイってことか?」


「その疑いは濃厚やな」


 エビスちゃんの声がわずかに低くなり、冷ややかな分析官の口ぶりに変わっていた。


「アイノリアの機密があれば、ARクラウド分野で他社を一気に引き離せる。凪はそれを手土産に、アルカディア社に移ろうとした可能性がある。けど――それを聡一郎氏に見抜かれた」


 少しずつ、事実がつながり始めた。


「……となると、聡一郎氏の死に、凪さんが関わってた可能性も出てくるってことか」


 エビスちゃんはしばし沈黙したのち、ゆっくりと頷いた。

 だとすれば、凪はこのライフログデータを、結日や湊に見せたくなかったはずだ。だから、裏で手を回して阻止しようとした……


「この事実、おそらくアルカディアの大神社長は知らないはずだ。こっそり確認してみるよ」


 湊は大神正道にこの事実を伝えるため、情報を整理した。

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