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終焉のアニマ〜ARで蘇った妹は仮想が現実を侵食する世界の召喚神〜  作者: マシナマナブ
第三章

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伝説の正体

 ジャスティンの木刀が空間を切り裂き、武の正拳突きがこれを打つ。

 その一撃ごとに火花が散らされる。


「うおーっ、さすがあのジャスティン・コードだ。……神クラスのアニマに生身でここまで渡り合える奴なんて、そうはいねぇぞ!」


 武が愉快そうに笑う。

 それに対し、ジャスティンは冷静に返した。


「そうかな。まあ、刀を持っていた方が、素手より有利なのは事実。それだけではないか?」


 飾り気のない口調。しかしその言葉の裏には、長き鍛錬に裏打ちされた矜持(きょうじ)が潜んでいる。


 その刹那――


 空を裂くように、鈴音が舞い上がった。


「あたしの舞だって、折れない心の刃。木刀なんかに負けないよっ!」


 しなやかに体を反転――トリプルアクセル。

 その軌道を描くように放たれた、鋭い斬撃がジャスティンを襲う。

 だが次の瞬間、鈴音の前に、突如として女神が顕現した。


 アマテラス。


 掲げられた手にあるのは、八咫鏡の光輪。そこから眩い熱光が放たれ、戦場を包み込んだ。あらゆるものを焼き、清める太陽の光。


「これ日焼けじゃ済まないっ!」


 鈴音は弾けるように回避する。

 戦場で、雷光と陽光が交錯した。

 今、この地で繰り広げられているのは、まさに神々の戦いだ。タケミカヅチが雷と拳を轟かせ、アメノウズメが華麗に舞い、アマテラスがすべてを浄化する。

 そして、その中心に立つのは――

 伝説のプレイヤー、ジャスティン・コード。木刀の一閃はあらゆるものを薙ぎ払う。


 最強アニマと最強プレイヤーのコンビネーションの前に、神クラスのアメノウズメとタケミカヅチの連携ですら押されていた。

 この均衡を崩すには――自ら動くしかない。


 ついに湊も前に出た。

 ジャスティンの目が細められる。


「ついに本体が出てきたな。(いさぎよ)い」


「あなたの真似をしてみただけだよ」


 アメノウズメの加護を受けた湊の身体にも、確かな力が宿っていた。


「その心意気、気に入った」


 風を裂くように、ジャスティンの鋭い斬撃が走った。とめどない連撃に、湊は後方に跳躍してかわし続けるしかなかった。


「なかなかの身のこなしだ」


「体だけは……鍛えてあるからね」


 軽口を叩いたものの、冷や汗がにじむ。

 剣術の達人を前に、湊に反撃の術はない。ただ全力を尽くして避け続けるしかなかった。


「息が上がってきているな。時間の問題か」


「そうだね。時間の……問題なんだよ」


 その瞬間だった。激しい衝撃音が、戦場に走る。

 鈴音の高速回転をかわそうとしたアマテラスが、武の渾身のジャスティス波を真正面から受けて吹き飛ばされたのだ。


「まさか――」


「普通ならあり得ない判断だけどね。サモナー本体より、召喚アニマを倒す方が難易度が低いと見たんだ」


「つまり、ミナト君が囮だったわけだな」


 光の粒子が舞い、アマテラスの姿が静かに消えていく。


「最強のアニマでも、神クラスの二体がかりじゃ分が悪かったね」


 アマテラスの消滅と共に、ジャスティンに付与されていた加護も消滅した。

 鈴音、武、そして湊。三人がジャスティンを囲むように立ちはだかる。


「一対一のPvP戦のはずが、いつの間にか三対一……これはさすがに分が悪いな」


 ジャスティンは静かに木刀を下ろし、潔く敗北を認めた。


「――降参だ」


 するとジャスティンの侍のアバターが消え去り、一人の男の姿が映し出された。

 年齢はおそらく六十前後。だが、背筋は真っ直ぐに伸び、その眼差しには、確かな洞察力と静かな威厳が宿っていた。

 半分ほど白髪となった髪は整然と撫でつけられ、細身のダークスーツを着こなしている。


「ミナト君、実に素晴らしい戦いだったよ。これが私の本当の姿だ」


 ジャスティン・コードの次の言葉は、湊を大いに驚かせた。


「私の本名は、大神(おおがみ)正道(まさみち)。株式会社アルカディアの代表取締役を務めている」


「アルカディアの社長……!?」


 それは二つの意味での驚きだった。伝説のプレイヤー、ジャスティン・コードの正体が、アルカディア社の社長だったこと。そして、その社長が自分に直接コンタクトしてきたということ。

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