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終焉のアニマ〜ARで蘇った妹は仮想が現実を侵食する世界の召喚神〜  作者: マシナマナブ
第三章

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ジャスティン・コード

 通話に応じると、落ち着いた男性の声が響いた。


「君が、ミナト君だね?」


 思わず息を呑む。


「……本物の、ジャスティン・コードさんですか?」


「本物か、と問われると、どう回答するべきか悩ましいが……ジャスティン・コードは、確かに私のアルカディア内でのプレイヤー名だ。だが、もちろん本名ではない」


 湊は一瞬の沈黙ののち、問い返した。


「それを証明、できますか?」


 相手は静かに笑ったようだった。


「私のプレイヤー名がジャスティン・コードであることは、そちらのアイウェアにも表示されているはずだろう? 君は何を証明してほしいのか?」


 言葉に詰まる。湊が知りたいのは、話している相手が本当にあの伝説のプレイヤーかどうか、ということだ。


「……あなたの強さ、でしょうか」


 短く、だが真っ直ぐな返答だった。


「強さの証明、か。なるほど。だが、それを言葉では伝えるのは難しい。私が何を語ろうと、君の疑念は消えないだろう。簡単な方法は一つ……」


 わずかに、声に歓喜が含まれる。


「ちょうど私も、君の力に興味を持っていたところだ。君の問いに、PvP戦で答えるというのはどうだろう。ミナト君、受けてくれるか?」


 伝説のプレイヤーとの模擬戦。これが本当なら、湊にとっても願ってもないチャンスだ。湊はゆっくりとうなずいた。


「……いいでしょう」


 湊は、いつもトレーニングで使っている神社へと向かった。

 ここはいつも人気が少なく、境内には、石畳が敷かれた広場がある。

 その中央に、ジャスティンのリモートアバターが出現した。

 彼の姿は、まるで戦国時代の武士を思わせた。

 深い藍色の羽織に、動きやすそうな軽装の鎧。背筋は真っ直ぐに伸び、鋭い気迫が滲み出ている。


「一対一のリモートPvP。一本勝負で良いかな?」


「ええ」


 空気が張り詰める。

 ジャスティンの手には一本の木刀。構えたその姿は、まさしく剣道の高段者を思わせた。


 ――試合開始。


「召喚――アメノウズメ!」


 湊の声に呼応し、巫女神・鈴音のアニマが光の中から現れる。


「舞い上がれ、心の翼。輝くみそぎの営業スマイル、鈴音ちゃん! ……って、あれれ? ミナ兄ぃ、このサムライ誰?」


「ジャスティン・コード。伝説のプレイヤーだ」


 言葉を返す間もなく、ジャスティンの木刀が一閃、風を裂いて突き出される。

 狙いは、鈴音の立っていた空間。

 咄嗟に彼女は、くるりと回転しながら滑るように間合いを外す。


「直接攻撃……ってことはファイター? でも、技を使ってこないね」


 湊も鈴音を素早く操作し、攻撃を仕掛ける。


 ――トリプルルッツ、トリプルトウループ。


 氷の上を舞うようなステップ、軽やかな跳躍。

 そこから繰り出された氷刃の連撃が、疾風のようにジャスティンへ迫る。

 しかし、ジャスティンはタイミング良く木刀を繰り出し、それら全てを粉砕した。動きに一分の迷いもない。


「なにこの剣捌き……只者じゃない……!」


 鈴音のアニマは、神クラスのアメノウズメ。

 スキルを使わずに生身の人間が対抗できるなど、本来あり得ない。それができるとすれば、結日に匹敵する実力者だ。


「鈴音、本気でいくぞ」


「了解だよ、ミナ兄ぃ。私の舞はあらゆるものを浄化する!」


 足元に桜色の魔法陣が咲き、放たれた光が境内を包み込む。

 神聖領域展開。この結界に踏み入る者は、徐々にヒットポイントを削られる。

 鈴音はそのまま滑るようにジャスティンとの間合いを詰めた。

 ジャスティンもやむなく後退する。


「さすがに、スキルなしじゃ分が悪いだろう」


「確かに、そうかもしれない」


 返ってきた声に、動揺はなかった。


「だが、私はファイターではない。攻撃スキルは使えない」


「……え? じゃあ、あなたのジョブは?」


 湊が驚いて問いかけると、ジャスティンは静かに告げた。


「私のジョブは――君と同じ、サモナーだ」


 生身で神クラスのアニマとやり合えるサモナー……。湊は驚きを隠せなかった。

 ジャスティンは木刀を構えたまま、サモナーの召喚魔法を解き放つ。


「召喚――アマテラス!」


 空気が変わった。


 上空に太陽のような球体が出現し、周囲を照らす。そこから、一人の女性が降り立った。

 後光の差す黒髪、風に翻る紅白の衣。

 背に大きな八咫鏡の紋章を宿し、闇を祓うように輝いている。


 ――アマテラス。


 日本エリアのアニマで、最強と称される存在。

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