光と闇の舞闘
張り詰めた空気を破るように、オモイカネが片手を掲げた。それに呼応するように、マガツヒの左手が唸りを上げる。
闇の指が細く伸び、空中でアーチを描くように迫り来る。
「あたしの見せ場だね!」
鈴音は氷上を舞うように滑り出した。
フィギュアスケーターのように体をしならせ、
黒い指先をすり抜け、飛来する魔法弾をトウループで軽やかにかわす。着地と同時にひねりを加え、サルコウジャンプ。
放たれた光が弧を描き、先ほどかわした闇の触手を切り裂く。同時に他の闇の触手を弾き返す。
「どうだっ!」
鈴音は着地し、滑りながら次の攻撃に身構えた。
オモイカネが狂気を孕んだ笑みを浮かべる。
「なるほど、神格級アニマらしい美しい動き……まさに永遠の器に相応しい。さあ、ユイカ様も早くこちら側に!」
吹き荒れる闇の風。結日はそれを見ることはできないが、アイウェアを通じて聞こえる音と、闇に削られていく床から状況を察することはできた。
「見えないけど……分かる。鈴音ちゃん、戦ってるんだね。私も、守られてるだけじゃいけないね。ミナト君、敵はどっち!?」
湊は指を指して短く告げた。
「――前方、約二十メートル!」
咄嗟に結日は両手を床について両足を旋回させた。高速の光の刃が放たれ、オモイカネの身体を貫く。
「くっ、ああっ! ユイカ様、見えぬものを心眼で捉えるとは。なんと、なんと素晴らしい!」
だが――倒せない。効いてはいるが、決定打にはならない。むしろ、結日の攻撃を受け、身震いして喜んでいるようにも見える。
「やっぱり、直接の物理攻撃でなければ倒せないか……」
とは言え、敵の姿が見えない結日に直接攻撃をさせるのは、あまりにも危険だ。
鈴音にマガツヒの指の一本を削られても、オモイカネは余裕の笑みを崩さない。
両手を広げ、静かに詠唱を重ねた。
「多重詠唱――『黒炎』、そして『逐影』。同時に放てば、『追尾黒炎』!」
無数の黒炎が空中に浮かび、結日の方へと向きを変える。
まるで生物のように、ひとつひとつが結日に向かって飛来する。
「ユイカ、俺の後ろに!」
湊が彼女をかばい、前に出た。
鈴音が間に滑り込み、声を上げる。
「大丈夫、あたしが止める!」
フリップ、サルコウ。
鈴音は流れるようなコンボでいくつもの黒炎を打ち落とす。
しかし、さすがに全ては防ぎきれない。
「ユイカ、俺と一緒に、左に飛んで!」
湊が叫ぶ。二人の動きがぴたりと重なり、黒炎は体をかすめて通り過ぎる。
だが、黒炎はすぐに向きを変え、振り子が戻るように再び迫ってきた。
「ユイカ様、逃げても無駄です。美しい魂ほど、この炎は正確に捉えて逃しません」
オモイカネの余裕をにじませた声が響く。
鈴音が素早く回り込み、回転しながらさらにいくつかの黒炎を撃ち落とした。
だが、オモイカネの攻撃は止まらない。次々と追尾する黒い炎を生み出しては放っていく。
湊は結日の手を引き、走った。床をかすめた黒炎が、次々と足元を穿っていくその中を。
「もはや逃げ回るのみですか。いずれ体力が尽きればそれまでです」
オモイカネの声が嘲るように響く。
結日をかばいながら走る湊は、急に方向を変え、叫んだ。
「――ユイカ、伏せて!」
湊が結日に覆いかぶさるように抱き寄せ、しゃがみ込む。
次の瞬間、黒炎が二人のすぐ上を通過し、背後の階段扉へ叩きつけられた。
閃光と共に扉が崩れ落ちる。
湊はその機を逃さず、再び結日の手を取る。
「今だ、ユイカ、下へ!」
鈴音がくるりと反転して目を輝かせた。
「うわぁ、ミナ兄ぃ、今の超カッコいい!」
湊は結日の手を握ったまま、扉の向こうの階段を駆け下りる。
鈴音もその背を追った。
上方からは、オモイカネの声が響く。
「どこへ行こうと無駄です! ここから逃げることはできないのだから」
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