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終焉のアニマ〜ARで蘇った妹は仮想が現実を侵食する世界の召喚神〜  作者: マシナマナブ
第二章 アスリートとなった令嬢

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光と闇の舞闘

 張り詰めた空気を破るように、オモイカネが片手を掲げた。それに呼応するように、マガツヒの左手が唸りを上げる。

 闇の指が細く伸び、空中でアーチを描くように迫り来る。


「あたしの見せ場だね!」


 鈴音は氷上を舞うように滑り出した。

 フィギュアスケーターのように体をしならせ、

 黒い指先をすり抜け、飛来する魔法弾をトウループで軽やかにかわす。着地と同時にひねりを加え、サルコウジャンプ。

 放たれた光が弧を描き、先ほどかわした闇の触手を切り裂く。同時に他の闇の触手を弾き返す。


「どうだっ!」


 鈴音は着地し、滑りながら次の攻撃に身構えた。

 オモイカネが狂気を孕んだ笑みを浮かべる。


「なるほど、神格級アニマらしい美しい動き……まさに永遠の器に相応しい。さあ、ユイカ様も早くこちら側に!」


 吹き荒れる闇の風。結日はそれを見ることはできないが、アイウェアを通じて聞こえる音と、闇に削られていく床から状況を察することはできた。


「見えないけど……分かる。鈴音ちゃん、戦ってるんだね。私も、守られてるだけじゃいけないね。ミナト君、敵はどっち!?」


 湊は指を指して短く告げた。


「――前方、約二十メートル!」


 咄嗟に結日は両手を床について両足を旋回させた。高速の光の刃が放たれ、オモイカネの身体を貫く。


「くっ、ああっ! ユイカ様、見えぬものを心眼で捉えるとは。なんと、なんと素晴らしい!」


 だが――倒せない。効いてはいるが、決定打にはならない。むしろ、結日の攻撃を受け、身震いして喜んでいるようにも見える。


「やっぱり、直接の物理攻撃でなければ倒せないか……」


 とは言え、敵の姿が見えない結日に直接攻撃をさせるのは、あまりにも危険だ。


 鈴音にマガツヒの指の一本を削られても、オモイカネは余裕の笑みを崩さない。

 両手を広げ、静かに詠唱を重ねた。


「多重詠唱――『黒炎』、そして『逐影』。同時に放てば、『追尾黒炎』!」


 無数の黒炎が空中に浮かび、結日の方へと向きを変える。

 まるで生物のように、ひとつひとつが結日に向かって飛来する。


「ユイカ、俺の後ろに!」


 湊が彼女をかばい、前に出た。

 鈴音が間に滑り込み、声を上げる。


「大丈夫、あたしが止める!」


 フリップ、サルコウ。

 鈴音は流れるようなコンボでいくつもの黒炎を打ち落とす。

 しかし、さすがに全ては防ぎきれない。


「ユイカ、俺と一緒に、左に飛んで!」


 湊が叫ぶ。二人の動きがぴたりと重なり、黒炎は体をかすめて通り過ぎる。

 だが、黒炎はすぐに向きを変え、振り子が戻るように再び迫ってきた。


「ユイカ様、逃げても無駄です。美しい魂ほど、この炎は正確に捉えて逃しません」


 オモイカネの余裕をにじませた声が響く。

 鈴音が素早く回り込み、回転しながらさらにいくつかの黒炎を撃ち落とした。

 だが、オモイカネの攻撃は止まらない。次々と追尾する黒い炎を生み出しては放っていく。


 湊は結日の手を引き、走った。床をかすめた黒炎が、次々と足元を穿っていくその中を。


「もはや逃げ回るのみですか。いずれ体力が尽きればそれまでです」


 オモイカネの声が嘲るように響く。

 結日をかばいながら走る湊は、急に方向を変え、叫んだ。


「――ユイカ、伏せて!」


 湊が結日に覆いかぶさるように抱き寄せ、しゃがみ込む。

 次の瞬間、黒炎が二人のすぐ上を通過し、背後の階段扉へ叩きつけられた。

 閃光と共に扉が崩れ落ちる。

 湊はその機を逃さず、再び結日の手を取る。


「今だ、ユイカ、下へ!」


 鈴音がくるりと反転して目を輝かせた。


「うわぁ、ミナ兄ぃ、今の超カッコいい!」


 湊は結日の手を握ったまま、扉の向こうの階段を駆け下りる。

 鈴音もその背を追った。


 上方からは、オモイカネの声が響く。


「どこへ行こうと無駄です! ここから逃げることはできないのだから」

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