表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉のアニマ〜ARで蘇った妹は仮想が現実を侵食する世界の召喚神〜  作者: マシナマナブ
第二章 アスリートとなった令嬢

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/59

脱出不能な闘技場

 エレベーターの入り口は、茜が放った闇の力によって無惨にひしゃげ、とても通り抜けられる状態ではなかった。

 茜と戦うしかない。湊は覚悟を決めた。


「――召喚神、アメノウズメ!」


 湊が手をかざす。

 空間が震え、淡い光の渦が現れた。

 そこから、舞うように巫女装束の少女が降り立つ。


「あたし見参! ――って、うわ、何これ!? このお姉ちゃん、チーム・タカミカグラのウィザードの人だよね? なんでコスプレして背中から闇の手が生えてんの!?」


「説明はあとで。見ての通り、敵だ。まずは光の加護を頼む!」


 湊が短く叫ぶ。


「いつものやつね、りょーかい! 光の羽根よ、盾とな〜れ!」


 鈴音が手を掲げると、淡い光が湊たちを包み、輝く羽根を形作る。闇属性に耐性のある光属性の付与だ。


 しかし、その光の加護を得てもなお、神クラスのアニマ、オモイカネの前では心許ない。

 鈴音が宿っているアメノウズメも神クラスだが、サポート型。並のアニマなら圧倒できる攻撃力を持つとはいえ、同じ神クラス相手にはやや力不足だろう。


「ユイカ、前みたいに攻撃できそう?」


 頼みの綱はやはり結日。だが、湊の声に、返ってきたのは小さな声だった。


「……ごめん、ミナト君……私、見えないの」


 見れば、結日のアイウェアは、さきほど茜が放った闇の攻撃で一部が砕けていた。


「音は聞こえるんだけど、アイウェアに、何も映らない」


 完全に壊れたわけではなさそうだが、映像の出力部分が損傷してしまったようだ。今の結日の目には、アニマも、マガツヒも映らない。


 オモイカネ――先ほどまで思井茜だったものが、ゆっくりと両手を広げる。

 背から伸びた闇から禍々しい魔力が注がれる。


「多重詠唱――『黒炎』、そして『烈風』。同時に放てば、『黒炎放射』!」


 轟音と共に、黒い炎の奔流が放たれる。それは屋上の床を薙ぎ払うと、コンクリートが眩しく白熱し、削り取られていく。

 マガツヒの力は、茜の魔法をも変質させ、その攻撃を現実のものとしていた。


「ユイカ、こっちだ!」


 湊は反射的に、攻撃の見えない結日の手を握った。

 結日は一瞬、息を呑んだが、すぐにそれは驚きから安堵に変わった。視界のない彼女にとって、湊の手とその掌の温もりは、現実と仮想をつなげる確かな道標だった。

 ――信じるしかない。

 二人は闇の炎の中を駆け抜け、屋上に設置されている非常階段の扉までたどり着く。


「アマノ・ミナトッ!」


 背後から、オモイカネの叫びが轟いた。

 その声は、怒りと嫉妬と狂気が混じった悲鳴のようだった。


「ユイカ様の手に……尊い御手に触れたな。なんと、なんと罪深い――ああ、決して許されることではない! その右腕、切り落としてもまだ足りぬ!」


 オモイカネの両目は深淵のような闇と変わり、背後のマガツヒの手指は、孔雀の羽根のように大きく開かれた。


 湊は急いで非常階段の扉のノブを回す――だが、開かない。

 内側から完全に施錠されている。


 次の瞬間、背後から、恍惚とした笑い声が響いた。茜の声と、異質な何かが同居して笑っているようだった。


「愚かな。ここは私が用意した、閉ざされた舞台。この闘技場に足を踏み入れた時点で、運命は確定している。脱出の手段はただひとつ。肉体を棄て、アニマとなることのみ」


 その言葉の直後――

 オモイカネの背後に広がる闇の手指が触手のようにしなり、鞭のように様々な方向から薙ぎ払ってきた。


「下がって、ユイカ!」


 湊は結日を庇うように前に立ち、闇の触手の隙を縫うように後退していく。

 鈴音が氷の上を滑るように割り込み、華麗なステップで幾つかを弾いた。しかし、数が多い。

 湊と結日はじりじりと後退を続け――ついに足が柵にぶつかった。

 それは十階建てのビルの屋上の端。その向こうは虚空。落下すれば確実な死。


 かなり厳しい状況だ。

 エレベーターは崩落、階段は封鎖。退路は完全に絶たれ、人気のないこの場所では助けを呼ぶ術もない。

 眼前には神クラスのアニマとマガツヒ。

 そして――今の結日は、敵を見ることすらできない。

『面白いかも!』『続きが気になる』と思った方、ブックマーク登録や↓の『いいね』と『★★★★★』をポチッとしていただけたら、それだけで作者は歓喜に満ち溢れ執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ