表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉のアニマ〜ARで蘇った妹は仮想が現実を侵食する世界の召喚神〜  作者: マシナマナブ
第一章 アルカディアとアニマ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/59

栄光のアルカディア

 AR(拡張現実)で、現実の世界に重ねて表示する情報を保存・配信するクラウドサーバーのことを、『AR Cloud(クラウド)』と言う。

 道案内に観光ガイド、広告、ゲームのモンスターや仮想キャラクターまで、かつては用途に応じて多数のARクラウドが乱立していた。

 だが、時代の流れとともに統合、淘汰が進み、現在は大手企業が運営する三つの巨大ARクラウドへと集約されつつある。


 その一つが、ゲーム特化型のARクラウド――

 ARCADIA(アルカディア)(AR Cloud Animae Digital Item Adaptation)である。


 アルカディアは、現実の街とうまく一体化されたシステムと、育成・収集・バトルといったやり込み要素を組み合わせたARゲームを提供する。

 体を動かして直感的に戦える手軽さに加え、楽しみながら体のトレーニングにもなることから、子どもから大人まで幅広い層に人気を集めている。

 中でもプレイヤー同士がリアルタイムでぶつかり合うPvP(対人戦)は、eスポーツとして高い注目を集めており、観戦コンテンツとしても急速に成長中だ。

 そんな中、溱が所属するチーム『YATAGAMI(ヤタガミ)』は、激戦を勝ち抜き、来週行われる全国決勝大会に出場することが決まっていた。


 優勝賞金は三百万円。


 三人で分けても、一人あたり百万円――高校生にとっては破格の金額だ。

 だが、それ以上に価値があるのは、名誉と知名度。

 優勝チームにはプロゲーマーとしてのスカウトや、インフルエンサーとしての道が開ける可能性もある。


「タケル、決勝戦の前にトラブル起こして不戦敗とか――マジで勘弁してや」


 中学生たちを撃退した武に、チームメイトの事代(ことしろ)八重(やえ)が冷ややかな視線を投げる。

 八重は17歳。湊や武と同じ高校に通う、クールな理系女子だ。プログラミングとロジカルな思考に長け、ゲーム内の戦術構築も担っている。

 切れ長の目と、無表情な顔立ち。肩まで伸びたストレートの黒髪。武とは対照的に常に冷静で、サバサバした実力者である。

 視力が悪いため、彼女のアイウェアには度付きのレンズが入っている。


「ジャスティスの行使をしないわけにはいかんだろ? 俺が目指すのはヒーローだからな」


 武が胸を張って言い放つ。


「……まあ、今回は向こうが明らかに悪かったし。結果的にヤタガミの宣伝にもなったからいいんじゃないか?」


 湊が苦笑しつつフォローを入れた。


 天野(あまの)(みなと)三日月(みかづち)(たける)事代(ことしろ)八重(やえ)

 この三人が、チーム『YATAGAMI(ヤタガミ)』のメンバーである。


「ま、世直しもほどほどにしときや。来週の決勝戦、ぜったい勝たなあかんのやから。賞金、しっかりもろたるで」


「ヤエは金の亡者だからな……」


 湊が苦笑まじりにつぶやく。


「なんやて!? うちがほんまに金の亡者やったらな、今までミナトに貢いだぶん、ぜ~んぶ返してもらわなあかんで?」


「えっ、いや……俺が悪かった。全面的に謝罪します」


「わかっとったらそれでええんや」


 湊は、八重にはまったく頭が上がらない。


「賞金だけじゃない。俺たちの力を、見せつけてやるんだ」


 武が真剣な表情で言い切る。


「――当たり前やろ」


 八重が笑ってうなずく。


 三人の拳が、そっとぶつかり合う。

 チーム『ヤタガミ』の心は一つだ。


 そのとき、武がふと思い出したように湊に向き直った。


「そうだ、ミナト。……黒いアニマの噂、知ってるか?」


「黒い……アニマ?」


 『ARnima(アニマ)』とは、アルカディア内に存在する仮想のキャラクターを指す言葉だ。


「俺も今日知ったばかりだが、小さな謎のモンスターで、全身が真っ黒らしい」


 武の声が、ふっと低くなる。


「しかも……そいつに攻撃されると、リアルで怪我するらしいんだ」


「は? 仮想のモンスターにリアルで殴られるっちゅうんかいな……ありえへんって」


 八重があきれたように茶々を入れる。


「……俺もそう思ってた。でも、実際にケガしたってやつが出てるんだ。深淵みたいな黒いモンスターにやられたって、ネットでちょっとした騒ぎになってる」


 そう湊が答えると、八重の眉がピクリと動いた。


「黒、ねぇ……それもおかしい話やな。オプティカルシースルーのARで黒を表示するのは、無理があるで? 周りと比べて黒っぽく見せたり、液晶シャッターで一部をぼんやり暗くする程度ならできるけど、真っ黒なんて」


「でも、そいつは……まるで空間に穴でも空いたみたいな黒らしい」


「都市伝説やん。アホらし。ほんまに黒く見えるなら、それはARやのうてVRやわ」


 八重の指摘はもっともだった。

 アイウェアは、現実の景色をそのままグラス越しに見せて、そこに仮想の映像を重ねる『光学(オプティカル)シースルー方式』だ。

 この仕組みでは、光を足すことはできても、引くことはできない。つまり、黒は表示できないのだ。

 一方、現実を一度カメラで撮影して、それに仮想映像を合成してから画面に表示する『ビデオシースルー方式』なら黒も出せる。だが、その方式はARというよりはVR(バーチャルリアリティ)だ。

 デバイスは大きくなり、現実の景色もカメラ越しに見ることになるため、日常使いには向いていない。


「しかも、その黒いアニマ……幼児のように小さいくせに、かなり強いらしい。倒したら、何かレアドロップでもあるかもな」


 そこで、天から降ってきたような声が響く。


「フフ……どんな怪物でも、スズネとミナ兄ぃがそろえば、無敵!」


 空中をひらりと舞いながら、ツインテールを揺らす少女――鈴音が現れた。


「この超絶・最強タッグに勝てる相手、いるはずないよっ!」


 彼女は湊が創り出したアニマ。

 現実にはもうこの世にいない――それでも誰よりも輝いて存在する、バーチャルの命だ。


「……まあ、鈴音ちゃんは別格すぎるからなぁ」


 八重が少し呆れながらも、笑みをこぼす。


「まあ、用心しておくに越したことはない。もし本当に黒いアニマが実在したら、ただのARゲームではすまないかもしれない」


 湊は静かにアイウェアに手を添え、視線を遠くへと向けた。

 黒いアニマ――現実に影響を及ぼす、仮想の怪物。

 それは単なるシステムバグなのか、それとも――

『面白いかも!』『続きが気になる』と思った方、ブックマーク登録や↓の『いいね』と『★★★★★』をポチッとしていただけたら、それだけで作者は歓喜に満ち溢れ執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
小説では読んだ事のないARというテーマに当初戸惑いましたが、子供達が横取りされているという分かりやすいエピソードのおかげですんなりと入る事ができました。 ジャスティス波というのもふざけているようだけど…
本格的なeスポーツバトルですか。 このジャンルはそんなに詳しくないけど、 興味があるジャンルなど興味深く読ませて頂きました。 亡き妹と架空世界で繋がるというのも感慨深いものがありますね。 後、リアルで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ