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第二部 第六話 地下遺跡と、響き合う記憶

ウーラモス諸島での、最初の夜が明けた。 わたし達は、ネオンが示した墜落ポッドの信号源――島の地下深くに眠るという、古代文明の遺跡を目指して、鬱蒼としたジャングルの中を進んでいた。

「この先に、巨大なエネルギー反応があります。おそらく、遺跡の入り口です」

ネオンの言葉通り、道の先には、蔦に覆われた巨大な金属の扉が、大地の裂け目に埋もれるようにして存在していた。わたしがそっと扉に触れると、長い眠りから覚めるかのように、青い光のラインが扉全体に走り、ゴゴゴ…という重い音を立てて開いていった。

「気をつけて。何が潜んでいるか、わからないわ」 わたしは剣を構え、暗い遺跡の内部へと、一歩、足を踏み出した。 中は、ひんやりとした空気に満ちていた。壁も床も、スカイが乗ってきたポッドと同じ、未知の金属でできている。時折、壁に刻まれた幾何学模様のラインが、青白く明滅していた。

カサカサ……。 闇の奥から、無数の何かが這い出てくる音がした。 「来るぜ!」 ナイの警告と同時に、闇の中から現れたのは、巨大な蜘蛛のような生物だった。しかし、その八本の足は、どれも人間の不気味な「手」の形をしている。 「うわっ、気持ち悪い! あれが、この島の原生生物…!」 「ネオン、データ照会!」 『該当。生物名「おててグモ」。素早く、壁や天井を自在に移動します。ご注意を!』

「散開して、各個撃破だ!」 わたしが叫ぶ。ナイはその身軽さで天井を走る個体をワイヤーで引きずり下ろし、山川くんは防御の魔神の腕輪で障壁を張りながら、力の魔神の腕輪から放つ光弾で次々と撃ち抜いていく。わたしとよもぎちゃんも、剣と爆発で応戦し、なんとか「おててグモ」の群れを殲滅した。

「ふぅ…、先が思いやられるな」 息をつくわたし達の前に、今度は、さらに分厚い隔壁が立ちふさがった。複雑なコンソールが付いていて、びくともしない。 「こいつは、俺の道具でも開きそうにねえな」 「動力源の構造が、我々の知識体系とは根本的に異なる。解析不能だ」 ナイと山川くんがお手上げ状態になった、その時だった。

それまで、どこかぼんやりとしていたスカイが、ふらふらと、何かに引き寄せられるように、コンソールへと近づいた。 そして、彼は、自分の意志とは関係なく、体が勝手に動いたかのように、そのパネルに、そっと掌を押し当てた。 すると、コンソールが緑色の光を放ち、『認証…クリア。ゲートを開放します』という合成音声と共に、重い隔壁が、静かに開いていった。

「……なんで……」 スカイ自身が、一番驚いた顔で、自分の手を見つめている。 彼の記憶と、この遺跡は、間違いなく繋がっている。

隔壁の奥は、巨大なドーム状の空間になっていた。中央には、天を突くほどの巨大な塔がそびえ立ち、その周囲には、スカイが乗ってきたものと同じポッドが、何百と並んでいる。ここは、巨大なドックか、あるいは墓標か……。

わたし達がその光景に圧倒されていると、ネオンの声が響いた。 『解析完了。スカイさんのポッドの信号源は、あの中央タワーの最上階です。おそらく、この施設のメインコントロールルーム…』

ネオンの言葉が終わるか終わらないかのうちに、部屋全体に甲高い警報音が鳴り響き、赤いランプが明滅を始めた。 『警告。第一級管理区画にて、未認証の生体反応を多数確認。防衛システム、レベル3に移行。侵入者を、排除します』

中央タワーの基部から、これまでのオートマタとは比べ物にならないほど巨大で、重武装の警備ゴーレムが、その赤い単眼を光らせながら、ゆっくりと姿を現した。 「くっ……! ここからが、本番みたいだね!」

スカイの記憶への道は、古代文明の冷徹な守護者によって、固く閉ざされていた。

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