第二部 第二章 第十四話 終わらない獣の宴と、神の投げ縄
「最初の宴だ。存分に、味わうがいい」
四天王の一人、森の王がそう告げると、魔物たちの津波が、わたし達へと殺到した。
「くろすけは中央! ナイは右翼、山川は左翼から広範囲を制圧! スカイは、くろすけの死角をカバーしろ!」
ナイが、瞬時に指示を飛ばす。
わたしは、ウルトラ級の魔力を込めた剣で、迫りくる獣たちを薙ぎ払う。よもぎちゃんの浄化の爆発が、瘴気に汚染された魔物たちを光の粒子へと変えていく。
山川くんの腕輪から放たれる魔力の奔流が、獣の群れをなぎ倒し、ナイはその合間を縫うように駆け抜け、リーダー格の魔物の首を的確に刈り取っていく。
スカイもまた、記憶はなくとも、その体にしみついた剣技で、わたしの背後を狙う魔物を、的確に、そして冷静に仕留めてくれていた。
わたし達は、強くなった。一人ひとりが、かつての比ではない。
だが、それでも。
「ちくしょう、キリがねえ……!」
ナイが叫ぶ。
倒しても、倒しても、獣たちは、まるで森そのものから生まれてくるかのように、次から次へと、無限に湧いてくるのだ。
『無意味です!』
ネオンの声が、悲鳴のように響いた。
『この島の生物は、すべて四天王の魔力によって繋がっています! 一体を倒しても、森がすぐに新たな個体を生み出し、補給してしまいます!』
このままでは、消耗して、いずれ押しつぶされる。
元凶である、あの森の王を直接叩かなければ、この悪夢は終わらない。
でも、どうやって、あの獣の壁を突破する?
(何か……何か、方法はないの……?)
焦りが、わたしの心を支配しかけた、その時。
腰に下げていた、一つの神器の、ざらりとした感触が、わたしに、その存在を思い出させた。
ウィローの街で手に入れた、古代の神器。
――どんなものでも、小さな玉に封じ込める、『ウィローの投げ縄』。
「……これなら!」
わたしは、一つの、無謀な賭けを思いついた。
「みんな、聞いて! この投げ縄で、道を作る! 一瞬でいい、わたしがあの投げ縄を振るうための、隙を作ってほしい!」
わたしの覚悟を、仲間たちは、言葉もなく理解してくれた。
「面白え。乗ってやるぜ、その無謀な賭けに!」
「合理性はゼロだが、可能性に賭ける価値はあるな」
「……うん。くろすけを、信じる」
わたし達は、最後の力を振り絞り、一点へと突撃する。
ナイと山川くんが、最大火力の攻撃を放ち、正面の獣たちを、一瞬だけ怯ませる。
その、コンマ数秒の隙。
わたしは、「ウィーローの投げ縄」を、天高く、振り上げた。
神器が、まばゆい光を放ち始める。
狙うは、敵の将の首ではない。
この、絶望的な戦況そのものを、覆すための、起死回生の一投。
わたしは、眼前に広がる、獣たちの巨大な群れ、その中心に向かって、光り輝く縄を、力いっぱい、投げつけた。




