第二部 第二章 第十二話 迷宮の脱出と、生命を司る島
最後の守護者を倒し、南西の「核」を破壊した瞬間、わたし達がいた迷宮全体が、断末魔のような地響きを上げて崩壊を始めた。 「ちっ、お約束ってやつか! とっととずらかるぞ!」 ナイの叫びを合図に、わたし達は、崩れ落ちる天井や、誤作動を起こして無差別に放たれるトラップをかいくぐり、今来た道を全速力で引き返した。
命からがら、あの不気味な迷宮から脱出したわたし達は、島の浜辺で、大きく息をついた。疲労は、限界をとうに超えている。それでも、二つ目の核を破壊したという達成感が、わたし達の心を支えていた。
狼煙を上げると、沖合の霧の中から、キャプテン・ガントの「海竜号」が、亡霊のように姿を現した。 「……ほう。まだ生きてやがったか。運のいい奴らだ」 無骨な船の甲板は、今のわたし達にとって、どんな高級ホテルのスイートルームよりも安心できる場所だった。
作戦室で、わたし達は、次の目的地である南東の島について、改めて情報を整理していた。 「生物を司る能力、か……」 山川くんが、険しい顔で呟く。 「これまでの機械仕掛けの敵とは、訳が違う。論理や弱点分析が、通用しない可能性があるな」 「生き物を、無理やり戦わせるなんて……そんなの、ひどいよ」 わたしが言うと、ナイは静かに、しかし、鋭い目で答えた。 「ああ。だからこそ、厄介なんだ。相手は、痛みも、恐怖も、そして仲間を思う心さえも、武器として利用してくるかもしれねえ」
スカイは、黙ってその会話を聞いていた。ただ、自分の拳を、強く握りしめている。彼もまた、この戦いが、これまでとは全く質の違うものになることを、肌で感じ取っているようだった。
数日後。海竜号は、南東の海域へと到達した。 そこに見えてきたのは、これまでの荒涼とした岩の島々とは、まるで違う、生命力に満ち溢れた、緑の島だった。どこまでも広がる深い森、色とりどりの花々、そして、空には虹がかかっている。 あまりにも、美しすぎる。
「……なんだ、この島。気味が悪いほど、生命力に満ちてやがる」 ナイが警戒を強めた、まさにその時だった。
船が、ガツン!という強い衝撃と共に、急停止した。 「どうした、ガント船長!」 「わからねえ! 錨は下ろしちゃいねえぞ!」
わたし達が甲板に出てみると、信じられない光景が広がっていた。 海竜号の船体は、海の底から伸びてきた、何百本という巨大な蔦や、木の根のようなものに、完全に捕縛されていたのだ。
『警告します! この島は、島全体が、一つの巨大な生命体として機能しています! 私達は、この島の“体内”に、捕らえられました!』
ネオンの絶叫が、響き渡る。 わたし達は、まだ島に一歩も足を踏み入れていないというのに、すでに、次の四天王の、恐るべき能力の掌の中にいたのだ。




