第二部 第二章 第十話 毒ガス鎧と、赤眼の警備ロボ
第一関門の守護者だった警備ロボの残骸を前に、ナイが、器用な手つきで何かのパーツを取り外していた。 「へっへっへ……こいつは面白いもんが手に入ったぜ。ちょいと改造すりゃ、厄介な『お土産』が作れそうだ」
彼は、取り出したパーツを組み合わせ、わたしの胸当てに、ある装置を取り付けてくれた。 「そいつは『毒ガスアーマー』だ。敵が近づくと、自動で神経を麻痺させるガスを噴霧する。まあ、気休め程度だが、雑魚掃除には役立つだろ」
わたし達は、ナイの新しい発明品を装備し、次の関門へと続く、巨大なゲートをくぐり抜けた。 第二関門の迷宮は、第一関門よりもさらに入り組んでおり、巡回する警備ロボの数も明らかに増えている。
「来たぞ!」 通路の角から、二体の警備ロボが姿を現す。わたしが剣を構えた瞬間、胸当ての装置が作動し、プシュー、と音を立てて周囲に透明なガスを噴霧した。 『……ERROR……SYSTEM…DOWN…』 警備ロボたちは、その場に崩れ落ち、完全に動きを止めてしまう。 「すごい! これなら、楽に進める!」 わたし達は、毒ガスアーマーの力と、「減りゆく数字の法則」を頼りに、迷宮の奥へ、奥へと進んでいった。
そして、ついに、第二関門の最深部にたどり着く。 そこに待ち受けていたのは、第一関門のボスとよく似た、しかし、その機体は禍々しい赤色で塗装され、単眼のカメラアイも、より強い光を放つ、強化型の警備ロボだった。
「ネオン、分析は?」 『はい。第一関門の個体より、装甲、火力、全てのスペックが1.5倍に強化されています。弱点は、おそらく同じですが……』
ネオンの言葉通り、戦闘が始まると、その強さは明らかだった。ビームの速度は増し、動きもより滑らかになっている。 「くそっ、攻撃の後の隙が、前より短え!」 ナイが叫ぶ。弱点である腹部のコアが露出する時間が、コンマ数秒しかない。
「スカイ! あなたの目に、全てがかかってる!」 わたしは、この遺跡と最も親和性の高い、彼の力を信じた。 「……くる! 三秒後、右腕から射線角45度でビーム! コアの開放時間は、0.3秒!」 スカイが、未来を予知したかのように叫ぶ。 その言葉通りに、ロボが動く。わたし達は、スカイの指示だけを頼りに、完璧な連携で攻撃を仕掛けた。
ナイと山川くんが、全神経を集中させてロボの攻撃を誘発し、わたしとよもぎちゃんが、スカイの叫ぶ「今だ!」の声を合図に、その0.3秒の隙を、正確に突く。 その息の詰まるような攻防を三度繰り返し、わたし達はついに、第二の守護者を、その場に沈黙させた。
広間の奥に、いよいよ、最後の関門へと続くゲートが開かれる。 ナイは、またしても、倒したロボの残骸から、何か別のパーツを回収していた。 「ほう……今度のユニットは『剛刃研磨』か。こいつは、剣士向きの、面白いオモチャができそうだぜ」
新たな力を手に、わたし達は、この悪意に満ちた迷宮の、最後の試練へと、その目を向けた。 この先に待つのは、一体、どんな絶望なのだろうか。




