第二部 第二章 第五話 死の鬼ごっこと、次なる遊戯
『――ファーストステージヲ、カイシシマス――』
チープなファンファーレと共に、仮面をつけた「下っ端見張り役」たちが、一斉にわたし達へと襲いかかってきた。その動きは、ぎこちない人形のようでありながら、直線的なスピードは驚くほど速い。
「散開しろ! 囲まれるな!」
ナイの叫びが響く。わたし達は、この悪趣味な鬼ごっこに、全力で応戦した。
「フン、数が多いだけのようだな!」
山川くんが作り出した光の障壁が、見張り役たちの突進を阻む。
「スカイ、右から来るぞ!」
ナイが、死角から迫る一体をワイヤーで転ばせ、スカイに警告する。スカイは、まだぎこちないながらも、本能的な動きでそれをかわした。
しかし、敵の数は減らない。一体倒しても、また別の影から、新しい見張り役がぬるりと現れる。
『くろすけ、解析完了しました!』
腕のリングから、ネオンのホログラムが声を上げる。
『見張り役たちは、個別の思考能力を持ちません! エリア内に設置された、三つの『操縦装置』から遠隔操作されています! あれを破壊すれば、動きを止められるはずです!』
「操縦装置……! ナイス、ネオン!」
目的は、鬼ごっこに勝つことじゃない。この狂った舞台装置そのものを、壊すことだ。
「ナイさん、山川くん、スカイ! わたし達が装置を壊すまで、時間を稼いで!」
わたしは、一番近くにある、不気味なトーテムポールのような操縦装置へと駆けた。よもぎちゃんも、わたしに続く。
ナイ達が、巧みな連携で見張り役たちのヘイトを集めてくれている。だが、それも長くはもたない。
「よもぎちゃん、いくよ!」
「きゅぅ!」
わたしは、ウルトラ級となった無限の魔力を、剣先へと集中させる。それは、もはやただの剣ではない。わたしの「意志」そのものが、刃となった光だ。
「――領域展開・一点突破!!」
わたしが放った光の一閃と、よもぎちゃんの浄化の爆発が、同時に操縦装置へと着弾した。
けたたましい破壊音と共に、装置が砕け散る。
その瞬間、わたし達を追っていた見張り役たちのうち、三分の一が、まるで糸の切れた操り人形のように、その場に崩れ落ちた。
同じ方法で、わたし達は残りの二つの操縦装置も破壊することに成功した。
全ての見張り役が動きを止め、静寂が戻る。
すると、どこからともなく、再びあのチープなファンファーレが鳴り響いた。
『――ファーストステージ、クリア。オメデトウゴザイマス――』
ホログラムの文字と共に、目の前の壁がスライドし、新しい道が開かれる。
『――セカンドステージヲ、カイシシマス――』
わたし達が警戒しながらその道を進むと、そこは、チェス盤の床に、巨大なトランプの飾りが浮かぶ、奇妙なホールだった。
その中央に、道化師のような格好をした、ひょろ長い見張り役が、一人だけ、芝居がかった仕草で立っていた。
「ようこそ、素晴らしき挑戦者の皆様!」
彼は、深々とお辞儀をした。
「次なるアトラクションは、このワタクシめと、命を賭けた『テーブルゲーム』で、お楽しみいただきましょう!」
力押しだけでは進めない、悪趣味な死のゲーム盤。
わたし達は、次の不条理な遊戯へと、否応なく足を踏み入れることになった。




