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連載版・夫婦にはなれないけど、家族にはなれると思っていた・完結  作者: まほりろ
第一章「学園での婚約破棄」エミリー視点
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7話「留学、それから……」




二週間後。


私は全ての手続きを終え、隣国に留学しました。


隣国での生活は、目新しいものがいっぱいで刺激的でした。


私は新生活に胸を躍らせていました。


寮や学園の決まり事など覚えることがいっぱいです。


だけどそんなことすら楽しいです。


やはり環境を変えて正解でした。ここには私の婚約破棄についてとやかく言う人はいませんから。


「一通り荷解きが済んだみたいですわね。せっかくだから出かけましょう? 街を案内しますわ」


そんな中、私の部屋を訪ねてきたカロリーナ様が街に連れ出してくれました。


それがまさか、公爵家御用達のブティックに連れていかれるとは……。


「カロリーナ様、このお店どう見ても高そうなのですが……」


「公爵家御用達よ。店員さんは全員わたくしの知り合いですの。遠慮しないで入ってくださいな」


そんなこと言われたら余計に緊張してしまいます!


高級なシャンデリア、センスの良い壁紙、壁際に並んだ色とりどりドレス……地味なドレスを着てきた私はどう見ても場違いでした。


「んまーー! 素材がいいのに全然活かせてないわ! カロリーナ様のお友達だとは思えないわね。一言で言うと地味ね!」


カロリーナ様のお知り合いの店員さんに開口一番そう言われショックを受けました。


「エミリー様を着飾ってほしいの。元婚約者が彼女を振ったことを後悔するぐらいに美しくね」


カロリーナ様はもしかして、私が容姿に自信がないのを気づいていて、それでここに連れてきてくださったのでしょうか?


「任せてちょうだい! カロリーナ様の頼みなら何でも聞いちゃうから! さっ、こっちにいらっしゃい!」


店員さんに連れて行かれた先には、フリルやレースがふんだんに施された愛らしいデザインのドレスがたくさん並んでいました。


「水色? 紫? 青? ううん、違うわ! あなたにはピンク! サーモンピンクが似合うわね!」


店員さんはその中からピンクのドレスを選び、私に着せました。


「ドレスは完璧! あとは髪ね! ポニーテール? ツインテール? サイドテール? いいえ違うわ! ハーフアップ! あなたにはハーフアップがぴったりよ!」

 

店員さんは私の髪をハーフアップにし、ドレスと同じ色のリボンを結びました。


「どう? これが素材の良さを活かすってことよ! ホホホホホホ!」


私が着飾ったことに満足したのか、店員さんはとても上機嫌でした。


「これが、私……?」


鏡に映った自分は別人のようで、ドキドキしてしまいました。


プロの店員さんって凄いです!


服や髪型でこんなに印象が変わるなんて……!


でも…! それ以上にドレスのお値段が気になります!


このお店は凄く高そうです……!


「カロリーナ様、ここのドレスお高いのでは?」


お父様からお小遣いをいただきましたが、それではとても足りそうにありません。


「お金のことなら気になさらないで、わたくしからのプレゼントですわ」


「ですがプレゼントされる理由が……」


「あなたをこの国の学園に招待したのはわたくしだもの、そのくらいさせて。その代わり後でお菓子作りのコツを教えてくださいね」


「そんなことでいいなら喜んでお教えします!」


その後、カロリーナ様から普段遣いのドレスや、お茶会用のドレスを何着もプレゼントされました。


リボンやアクセサリーもたくさん頂いてしまいました。


何回お菓子作りを教えたら、お代を払い切れるでしょうか? 


安請け合いをしてしまいました。


頭が痛いです。





◇◇◇◇◇




別の日、マダリン様に剣術を習いました。


「美しく歩くためには体幹を鍛えることが必要だ。それにお菓子作りにも体力が必要だと聞いたぞ! 鍋やフライパンは重たいからな!」


「はい!」


ランニングに、腹筋に、腕立て伏せに、剣の素振り……インドア派の私にはなかなか堪えるものがあります。


「こんなことで音を上げていては体が持たないぞ!」


「はい!」


剣術の特訓は夕方まで続きました。


「よし! 良い素振りだ一日目にしては上出来だ!」


「はい! ありがとうございます!」


日が傾き、民家に明かりが灯る頃……やっと訓練が終わりました。


その頃には私はへとへとになっていました。


でも汗をかくのは楽しいです。


運動している間は嫌なことも全部忘れられます。


マダリン様はそれがわかっていて、剣術の訓練に誘ってくれたのでしょうか?


でも、しばらくは訓練は遠慮したいです。


「次回は馬術を教えることにしよう! その代わり、君はわたしに刺繍を教えてくれ!」


でもそうも言っていられないみたいです。


剣術のレッスンの次は馬術のレッスン……マダリン様と過ごした翌日は、筋肉痛で苦しむことになりそうです。




◇◇◇◇◇◇






私は新しい学園で、裁縫とお菓子作りを学べる学科を専攻しました。


「素朴な図案ですが、一つ一つが丁寧に刺繍されているわね。教えがいがありそうだわ」


裁縫の先生にはそう言っていただけました。


「素朴な見た目だけど味はパーフェクトね。お菓子を飾る技術を学べばもっとよくなるわ。それには実際に色んなお菓子を食べて歩くのが一番よ」


パティシエの先生にはそう言っていただけました。


今度カロリーナ様とマダリン様を誘ってお菓子の食べ歩きをしましょう。


お菓子のカロリーはマダリン様との剣術や馬術の訓練で消費できるので大丈夫です!


もちろん楽しいことだけでなく、慣れないことや、大変なことも多いです。


それでも隣国での暮らしはとても楽しいです。


私を説得してくださったカロリーナ様とマダリン様には感謝してもしきれません。







そしてあっという間に二年の月日が経ち、学園の卒業が近づき卒業の進路を決めきれずにいるころ、私の元をある方が訪ねてきたのです。




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