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連載版・夫婦にはなれないけど、家族にはなれると思っていた・完結  作者: まほりろ
第十章「デルミーラの半生」デルミーラ視点
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53話「予想外の展開」デルミーラ視点




そんなある日のこと。


わたくしがフォンジーとの婚約中に仮面舞踏会に参加し、複数の男性と関係を持っていたという秘密が、どこからか漏れました。


ザロモン侯爵家から受け取った慰謝料の返却と、浮気の慰謝料を請求されました。


わたくしは白をきり通そうとしましたが、確固たる証拠が突きつけられました。


次から次へと出てくる証拠に、わたくしは目の前が真っ暗になりました。


ザロモン侯爵家はわたくしの不貞を調べるために、国の特務機関でも雇ったの?


そうでなければ、こんなに次から次に証拠が出てくるなんておかしいですわ!


その上わたくしがフォンジーとの婚約破棄後、フォンジーにまつわる悪い噂を流していたことまで知られていました。


わたくしはザロモン侯爵家に、婚約中の浮気と名誉毀損で訴えられました。


そして実家のアブト伯爵家は、ザロモン侯爵家に多額の慰謝料を支払うことになりました。


「お前のようなアバズレの恥知らずはわしの娘ではない!!」


父からそう告げられ、実家から勘当されました。


そうして送られた先は辺境の貧しい修道院。


食べるものと言ったらキャベツやじゃがいものみ。


肉も魚も出てきません。


殿方から贈られた美しいドレスも宝石も、実家を出る時に全て父に没収されました。


ボロを纏い、水汲みや料理や洗濯をしながら一生過ごすなんて、冗談じゃありませんわ!


絶対ここから逃げ出してみせます!!




◇◇◇◇◇




野菜の配達に来る農夫をうまいことたぶらかすことに成功したわたくしは、修道院から脱出することができました。


やはり天はわたくしを見捨てませんでした。


わたくしほどの美貌があれば、どこででもやっていけるのですわ。


農夫にこの辺で一番栄えてる町にまで送るように伝えました。


たどり着いた場所はへんぴな田舎の町でしたが、それでも寂れた修道院よりはマシでした。


わたくしは自慢の美貌を使い、城下町に視察に来ていたエンデ男爵に取り入り、愛人の座に収まることに成功しました。


田舎領主の男爵が、わたくしの美貌にメロメロになるのも仕方ありませんわ。


このようなへんぴな土地に、わたくしのような洗練された美女はそうそういないでしょうから。


男爵領は田舎でしたから大して贅沢もできませんでした。


それでも領主は私の望み通りに、宝石やドレスを買ってくださいました。


領主ら名前を聞かれた時、とっさに 「エミリア」と答えてしまいました。


エミリア……あの憎らしいエミリーと似た名前ですわ。


とっさにあの女と似た名前が出てくるなんて、わたくしも焼きが回ったかしら?


一緒に過ごすうちに領主はわたくしが平民ではないと気づいたようです。


生まれ持った高貴なオーラというのは

、隠せないものですわね。


わたくしはここであることを思いつきました。


せっかく偽名をエミリーと似ているエミリアにしたのです。


それを有効利用しなくてはと。


わたくしはエミリー・グロスが本名だと領主に伝えました。


婚約者に公衆の面前で婚約破棄され、実家にいられなくなり、家出してきた 子爵令嬢だと……。


どうせあの女は隣国に留学して一生帰ってこないはず。


この国に本物がいないんですから、嘘がバレるはずがありませんわ。


男爵以外に私の正体がバレた時、周囲にはエミリー・グロス子爵令嬢が悪事を働いたと伝わるのです。


あの女の名前を地に落とせると思うと、笑いが止まりませんわ。


わたくしはここで楽しく優雅に過ごしていくのだと思っていました。

 



◇◇◇◇◇


 

しかし領主から最近領民に不穏な動きがあると聞かされました。


どこからか流れてきた男が、領民たちに知恵をつけているとか。


どこにでも余計なことをする男はいるものですわ。 


金髪に緑色の目の十八歳ぐらいの若い男。


領主からその男の特徴を聞き、わたくしが知っているある男の特徴と一致してると思いました。


村に潜入した領主の部下が描いた似顔絵を見て、わたくしは確信いたしました。


領主が言っていた領民に知恵をつける邪魔な男とは、王都を追放されたリックのことでした。


リックは領主の不正を手紙に記し王族に送っていました。


彼も余計なことをしなければ長生きできたのに。


思い返せばリックが王都で騒動を起こさなければ、わたくしはこんな人生送ってはいなかったはず。


侯爵夫人となって、贅沢な暮らしを堪能していたはずです。


そう思うとリックのことが、憎くて憎くてたまらなくなりました。


今こそ奴に復讐してやりましょう。


奴をこのまま野放しにしておいて、ひょんなことからわたくしの正体が領主に知れても面倒ですしね。


わたくしは領主をそそのかし、ゼーゲン村に行き、リックを痛めつける提案をいたしました。


単純な領主はわたくしの企てに乗ってきました。


見ていなさいリック、今から痛い目に合わせてやるわ。








計画は途中までうまくいっていたわ。


もう少しで、リックを鞭打ちの刑に処することができるはずでした。


それなのに……それなのに……!


なんで王太子殿下がこんなしがない辺境の町を訪れるの!


しかもフォンジーとエミリーも一緒だなんて!


私も男爵も、王太子とその部下にあっけなく捕まってしまいました。


王太子は私たちに、重い罰を下すと宣言しました。


私たちは縄で体を縛られ馬車に乗せられました。


王太子が何やら村人を集め話しています。 


適当に聞き流していましたが、一つ聞き流せない箇所がありました。


エミリーとフォンジーが婚約したという部分です。


エミリーのあばずれ! 


フォンジーは元々わたくしの男だったのに!


わたくしから奪うつもり!


あんな貧相な女が侯爵夫人になり、わたくしは一生牢屋の中! こんなの間違っているわ!


王太子殿下さえ来なければ全てうまくいってたのに!


なんで? どうして? わたくしだけがこんな思いをしなければいけませんの!?


世の中は間違っていますわ!


きーー! 悔しい!



――終わり――




読んで下さりありがとうございます。

少しでも面白いと思っていただけたら、広告の下にある【☆☆☆☆☆】で評価してもらえると嬉しいです。執筆の励みになります。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


下記二作品もよろしくお願いします。

完結「四度目の婚約破棄〜妹と弟に婚約者を奪われ行き遅れた私は、年下の美少年公爵令息に溺愛される」 https://ncode.syosetu.com/n8040io/


短編「彼女が消えたことに誰も気づかない」

https://ncode.syosetu.com/n9255jf/


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― 新着の感想 ―
[気になる点] このタイプの悪人は改心せずに別の悪事をやろうとするので、穏当な刑罰でなくガッツリ処分しないと
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