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連載版・夫婦にはなれないけど、家族にはなれると思っていた・完結  作者: まほりろ
第七章「王都パーティー編」エミリー視点
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38話「閑話的な何か」



出発の日の朝


「君たちその格好できたの?」


「殿下こそ、その格好で行くのですか?」


待ち合わせの場所に行くと、王太子殿下が御者席から顔を出しました。


殿下は変装用のかつらとコンタクトレンズを身につけていました。


どうやら殿下は王太子としてではなく、 ナード・トロエンとして現地に赴くようです。


「お忍びで行くんだからそれなりの格好しないとね。

 君たちこそそんな貴族丸出しの格好で行く気?」


私は普段使いのドレスを、フォンジー様はジュストコールを身にまとっています。


確かにこれでは貴族だとバレバレですね。


「僕が用意した服に途中の宿場で着替えてもらうからね」


「はい」

 

「コンセプトは王都の呉服商会の若旦那と、そのお供の二人ね。

 ある時は御者、ある時は遊び人の子爵令息、またある時は呉服商会の若旦那、その正体は人知れず悪を挫くイケメン王太子……! なんてね」


この旅に一番乗り気なのは王太子殿下のようです。


「それは分かりましたから、殿下は御者席から降りてください」


本日フォンジー様は殿下の行動にツッコミを入れるのも疲れているようです。


「えーダメかな?

 君たちが馬車の中でチュッチュッとイチャイチャするのを御者席から覗こうと思ったのに……」


「ええっ……?」


「エミリー嬢、いちいち反応しなくていいよ? 

 殿下がますます面白がるからね。

 というより私たちは馬車の中でいちゃいちゃなんてしません」


「地方に行くと道が悪くなるから、イチャイチャチュッチュッするなら王都に近い今のうちだと思うけどな?」


「もういいですから。

 殿下も早く馬車に乗ってください」


「分かったよ。

 あーそれと宿場町で君たちは同じ部屋でいいかな?

 どうせ来年には結婚するんでしょ?」


フォンジー様と相部屋……!


フォンジー様には殿下の言葉に動揺しないように言われましたが、これにはたまらず頬に熱が集まってしまいました。


フォンジー様も指を絡めていました。


「来年結婚するにしても、私たちはまだそういう関係ではありません!」


「そうなの?

 フォンジーは真面目だね。

 まあそこがいいところなんだけど。

 じゃあ宿場町での君たちの部屋は別々ってことで」







そんな感じの騒動があって、私たちを乗せた馬車はエンデ男爵家に向けて出発したのです。


ちなみに ですが私とフォンジー様は同じ馬車 、殿下はお一人で馬車に乗っています。


なんだか旅立つ前からどっと疲れました。


「気を悪くしないで、殿下なりに緊張をほぐそうとしてるんだよ」


「確かに少しだけ緊張がほぐれました」


エンデ男爵領でのアレコレを考えて、知らずに体に力が入っていたようです。


隣にいるフォンジー様をみると、いつもの穏やかな雰囲気に包まれています。


昨日のフォンジー様は、リック様やデルミーラ様のことを聞いてピリピリした空気を放っていたので心配でした。


一晩経って気持ちに整理がついたみたいです。


「殿下はお友達思いの方なんですね」


「少々悪乗りするところあるけど、優しい人だよ」


お二人の仲良しなのは見ていて分かります。


私が隣国にいる間も、お二人は友情を育まれていたのですよね。


殿下は私の知らないフォンジー様を知っているんですよね。


ちょっとだけ殿下に嫉妬してしまいました。


「エミリー嬢は平気?

 エンデ男爵領にはリックとデルミーラがいるけど」


「リック様は魔法封じる印を刻まれ王都から追放された時、十分に罰を受けました。

 彼は心を入れ替え、ゼーゲン村の人たちを助けていると伺っております。

 そんなリック様のことを、どうして責められるのでしょう?

 私はとっく彼のことを許しています」


彼へのわだかまりは、とっくの昔に消えています。


「デルミーラ様についてもそうです。 私はもう彼女にいじめられメソメソ と泣いていた幼い子供ではありません。

 今度彼女に会ったらガツンと言ってやります!」


彼女に煮え湯を飲まされたことは一度や二度ではありませんから。


「頼もしいね、エミリー嬢は」


「フォンジー様こそ大丈夫ですか?

 昨日はちゃんと眠れましたか?」


フォンジー様の目の下にクマはないので、大丈夫だとは思うのですが。


「心配してくれてありがとう。

 昨日は少し動揺してしまったけど、今はだいぶ落ち着いているよ」


「リック様のことは」


「彼が王都でしたことは分かってる。

 彼はたくさんの人に迷惑をかけた。

 それでも僕は弟が生きてるのが分かって安堵してる」


「それでいいと思います。

 私はそんな家族思いのフォンジー様に好きになったんですから」


「ありがとう。僕の婚約者は世界で一番心の広い人だ」


「そんなことは」


そう言われると照れてしまいます。


沈黙のあと、フォンジー様の顔が近づいてきました。


王太子殿下の言葉を思い出してしまいました。


王都から離れるほど道が悪くなるとか。


馬車の中でキス……できるのって今だけですよね。


このあとフォンジー様とちょっとだけ、イチャイチャしました。


このことは王太子殿下に知られないようにしなくては……!


彼に知られたら、またからかわれてしまいます!



読んで下さりありがとうございます。

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