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連載版・夫婦にはなれないけど、家族にはなれると思っていた・完結  作者: まほりろ
第七章「王都パーティー編」エミリー視点
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33話「近状報告」





一カ月後


私は王城で開かれるパーティーに出席していました。


「エミリー様、お顔がにやけておりますわよ」


「本当に、幸せオーラ全開だな。

 今日はザロモン卿にエスコートされていたようだし、二人の関係については、聞くまでもなさそうだな」


パーティー会場で久しぶりに、カロリーナ様とマダリン様に再会しました。


お二人ともますます美しさに磨きがかかっておりました。


「その件につきましては、お二人には後で招待状を送ろうと思っていました」


「招待状ということはお二人は婚約されましたの?」


「そうなのか? エミリー嬢」


カロリーナ様に指摘されて、私の頬に熱が集まりました。


「ザロモン侯爵領の植物園でフォンジー様に告白されて、その後領地を一望できる高台でプロポーズされました」


その時のフォンジー様は本当に素敵でした。 


花束と指輪の入った小箱を抱えたフォンジー様が、私の前に跪いてプロポーズしてくださいました。


フォンジー様に指輪を嵌めて頂いた時のあの胸のときめきは、一生忘れられません。


今思い出しても胸がドキドキします。


領地での名産品作りにも成功しましたし、ご婦人に刺繍の図案を広め、縫い方を教えることができました。


夏にまたフォンジー様の領地を訪れて 、今度はぶどうや桃を使ったお菓子を作りたいです。


フォンジー様の領地から帰った後、私の両親にフォンジー様にプロポーズされたことを伝えました。


リック様のことがあったので、父にはザロモン侯爵家の方との婚約を反対されるかと心配していたのですが、全くそんな事はなく、すんなり婚約を受け入れてもらいました。


来月にはパーティーを開き、婚約したことを発表する予定です。


「見ているこっちは恥ずかしくなるほどの浮かれっぷりですわ」


私はそんなに、にやけていたでしょうか?


「あの……お二人は、私とフォンジー様が婚約したことに驚かないのですか?」


「隣国にザロモン卿が訪ねてきたとき、エミリー様はかなり舞い上がっておりましたからね。

 その時からなんとなく、あなたのお気持ちは察しておりましたわ」


「まあ嫌いな奴の領地にわざわざ復興の手伝いに行ったりはしないからな。

 エミリー様が自分の恋心に気づくのはいつになるんだろう? と思っていた」


「そうだったんですか?」


私の気持ちは周囲にバレバレだったんですね。


「ザロモン卿にしても、嫌いな女性や、関心のない女性なら、領地に迎え入れたりしないでしょうから」


「ザロモン卿がエミリー嬢を領地に迎えいれると聞いた時点で、彼もエミリー嬢に気があるなと思っていた」


「そうだったんですね」


フォンジー様も隣国で再会した時から、私に好意を抱いていたとおっしゃっていましたし、自分の恋心に気づいていなかったのは私だけだったようです。


「それであの奥手で堅物そうなザロモン卿をどうやって落としたんですの?」 


「私も気になる!

 まさかエミリー様の美しさに、己を抑えきれなくなったザロモン卿に襲われたのか?」


「襲われるなんて……フォンジー様はそのようなことをする方ではありません!」


フォンジー様とは婚約した今でも、キスだけの清い関係を保ってるんですから。


「ではエミリー様がザロモン卿を襲いましたの?

 なかなかやりますわね」


「なるほどエミリー様はおしとやかそうな見た目に反して、実は肉食系だったわけか」


「私も別に襲ってません!」


「ではどうやってお二人は交際を始めましたの?」


「まあパーティー会場で話すことでもないから、エミリー様には後で別室で、詳しく事情聴取する必要がありそうだな」


お二人とも目が怖いです。


私は別室で何を聞かれてしまうんでしょう。




◇◇◇◇◇





「ところでそのサロモン卿は今どこにいるんだ?

 エミリー様の友人として 挨拶をしたのだが?」


「フォンジー様はお仕事で関わりのある方にに呼び止められて、今あちらでお話しています」


「婚約早々、パーティー会場で婚約者を放置するとはな」


「フォンジー様にもお仕事上どうしても断れないお付き合いもあります。

 それに私が会場内でカロリーナ様とマダリン様を見つけて、お二人と話をしているから大丈夫ですと言ったのです。

 だからフォンジー様を責めないでください」

 

「すっかりのろけられてしまったな」


「付き合いたてのカップルとはそういうものですわ」


「私は別にそんなつもりで言ったわけでは」


今日は何を話してもノロケと捉えられてしまいそうです。

 

「それにしても今日のパーティーは、人が多いな」


マダリン様は会場内を見渡しながら呟きました。


「本当にすごい人ですね」


王都のパーティに参加するのは久しぶりなので、人に酔ってしまいそうです


「あらお二人共ご存知ありませんの?

 今日は王太子殿下がパーティーに参加しますのよ」


「王太子殿下が?」


王太子殿下といえばパーティーにあまり参加されないことで有名です。


パーティーに参加されても、仮面をつけていたり、扇で顔を隠していたりするので、誰も素顔を見たことがないとか。


「あの王太子殿下がパーティーに参加されるのか。

 それで彼に近づこうとする貴族がこぞって、パーティーに参加しているわけだな。

 殿下にはすでに婚約者がいらっしゃるが、娘を側室や愛人にしたがる貴族もいるだろうしな」


第二王子のアルド王子が失脚された今、国王陛下の子供で王位継承権を持つのは彼だけ。


誰も彼も目の色を変えて、殿下に近づこうと躍起になってるようです。


「誰も王太子殿下の素顔を見たこともないというが……。

 カロリーナ様はどうなんだ?

 君なら殿下の素顔を見たことがあるんじゃないか?」


カロリーナ様はもともと第二王子のアルド様と婚約されていました。


彼女なら王太子殿下の素顔を見たことがあるかもしれません。


「そうですわね。殿下のことは、王宮で何度かお見かけしたことあります」


「へーそうなのか。

 どのような方なのだ?

 やはり男前なのか?」


マダリン様は王太子殿下の素顔に興味津々のようです。


「男前かどうかは個人の判断によりますが、あの方は紫色の髪と同色の瞳をしておりました」


紫の髪と瞳は珍しいので、会場にいればとても目立ちますね。


「もしかしてザロモン卿も王太子殿下の素顔を見たことがあるのではないか?

 ザロモン卿は王太子殿下と同じ学年だったからな」


そういえばフォンジー様は王太子殿下と同じ年でした。


「学園では殿下も素顔を晒していたかもしれないしな」


「私はフォンジー様から何も伺っておりません」


「そういうものか?」


「王太子殿下は一筋縄ではいかないお方。

 学園で王太子を名乗っていた方が、本当に殿下だったとは限りませんわよ」


カロリーナ様は意味ありげな言葉をおっしゃいました。 


「カロリーナ様それは一体どういう意味ですか?」


「あの方は人を驚かせることが好きな方です。

 ですからザロモン卿と結婚されるなら、エミリー様もあの方に苦労なさいますわよ」


フォンジー様と結婚することと、王太子殿下に何の関わりがあるのでしょうか?


「なにせあの方はザロモン卿と……」


カロリーナ様が何か言いかけた時でした。


「お前何でここにいるんだ!

 お前のようなやつはこの会場にいるのにふさわしくない!」


パーティー会場の隅から大きな声が聞こえました。


声の聞こえた方角には、確かフォンジー様がいらしたはず。


もしかしてフォンジー様が何かトラブルに巻き込まれているのかも?


私はいても立ってもいられず、騒ぎのあった方向に向かいました。



読んで下さりありがとうございます。

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