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24話「エミリー質問攻めに合う」



エミリー視点



翌日、学園に行くとカロリーナ様とマダリン様に捕まりました。


お二人は昨日のことを知りたがっていたようです。


「カロリーナ様、お洋服のコーディネートと髪型のセットとメイクを施してくださりありがとうございました。

 マダリン様もカフェを貸し切りにしてくださりありがとうございます」


私はお二人にお礼を伝えました。


「それでどうだったのですか?

 遠方から訪ねて来られた想い人との間に進展はございましたの?」


「ラインハルト殿にエミリー様のいる場所を教えたがどうなった? やはり修羅場になったのか?」


二人が目をキラキラさせてきいてきました。


二人共意外とミーハーだったんですね。


「わたくしは、あなたにしつこく付き纏っていたラインハルト様を、エミリー様の想い人がスパーンとやっつけ、彼の恋心に引導を渡してくれたと予想していますわ」 


「カロリーナ様、それは熱い展開だな!

 たかが余り物のお菓子を貰ったぐらいで、自分に気があると思い込み、野良犬のようにしつこくエミリー様につきまとっている男など、エミリー様にふさわしくないと前々から思っていたのだ!」


お二人共、ラインハルト様に厳しすぎません?


「あの〜〜お二人共盛り上がっているところ申し訳ないのですが、昨日訪ねて来た方は私の想い人ではありませんから……」


元婚約者のお兄さんで、私にとっても兄のような方です。


「隠し事はいけませんわエミリー様!

 その方が訪ねてくるとわかってから、あなたは傍から見ていても照れるくらい、わくわくそわそわしていたじゃありませんの!

 だからわたくしは知り合いに頼んで、あなたの髪型やメイクを整え、流行のドレスを着せて、決戦デートに送り出したのですよ」


私は傍から見てもわかるくらい、舞い上がっていたのでしょうか?


だとしたら恥ずかしいです。


「ドレスと髪型とメイクの件につきましては、ありがとうございました。

 カロリーナ様にはとても感謝しています」


カロリーナ様のお陰で、自信を持ってフォンジー様に会うことができました。


「エミリー様は元が良いので、着飾るのが楽しかったですわ。

 それであなたの想い人は、着飾ったあなたを見て、何かおっしゃっていましたか?

 綺麗だとか、美しいとか、見惚れたとか、君しか見えないとか」


カロリーナ様が楽しげな表情で尋ねてきます。


「いえ特にそういうことは、そういう雰囲気でもありませんでしたし」


「そうですの。

 殿方はファッションや美容には疎いですからね」


カロリーナ様は、がっかりされていた。


「ラインハルト殿はどうだった?

 君の想い人に殴りかかって、返り討ちにされてなきべそをかいてはいなかったか?」


「ラインハルト様は、あの方が訪ねて来る前にお店に来て、来客用のお菓子を全て平らげようとしました。

 私は彼を……制止しようとして、その……勢い余って彼を投げ飛ばしてしまいました。

 なのであの方が訪ねて来たとき、ラインハルト様は床に伸びていました。

 その後、彼は泣きながら店を出ていったので、なきべそはかいていたと思います」


彼になきべそをかかせたのは私ですが。


殿方を勢い余って投げ飛ばすなんて恥ずかしいです。


お二人にお転婆だと思われてしまったかもしれません。


「投げ飛ばした……くっ……ははははははっ!!

 最高だよエミリー様!

 淑女たるもの己の身は己で守らなくてはな!

 わたしが教えた護身術が役に立っていて何より!

 それにしても来客用の菓子を独り占めしようなんて、ラインハルト殿は食い意地がはってるな!」


私もあの場で、マダリン様から教わった護身術が役に立つとは思いませんでした。


「そうですわね。

 ラインハルト様ではエミリー様にふさわしくないと思っておりました。

 まぁ、なきべそをかいて逃げ帰るようなら、もうエミリー様にちょっかいをかけてくることはないでしょう」


カロリーナ様もマダリン様も、ラインハルト様に対して辛辣ですね。


「もう、このお話は終わりにしましょう」


殿方を投げ飛ばした話題は、いつまでもしたくありません。


「それで、昨日は想い人となにをして過ごしたんだ?」


「だから想い人ではありませんってば!

 カフェでお茶をしながらお話をして、そのあと少し街を案内しました」


「カフェデートのあとは、街中を散策したわけか、なかなかやるな」


「雑貨店や市場で何か買って貰ったのですか?」


「そういうのはありません。

 少し街中を歩いたあと、彼を宿泊先のホテルまで送りました。

 彼もお忙しいので」


「ふーむ進展はなしか」


「エミリー様は奥手ですからね」


「あっでも、彼と話していて卒業後の進路が決まりました」


「ええ! 本当ですの? ついに当家のお抱えパティシエになる決心がつきましたのね? エミリー様のお菓子をわたくしが独占できますのね!」


「ずるいぞカロリーナ様! エミリー様は当家に招いてわたしの刺繍の先生になって貰うんだ!」


どうしてそうなるのでしょう?


「お二人共違います!」


「私、卒業したら祖国に帰ろうと思うんです」


「まあご実家の子爵家を継ぐ決心がつきましたの?」


「いいえカロリーナ様、実家は妹に継いでもらいます」


「それでは何しに祖国に帰るのだ?  この国にいれば色々な技術を学べるぞ?

 エミリー様に働いて欲しいと言っているお店もたくさんあるんだぞ?」


「マダリン様、それは嬉しい申し出ですが、お受けできません。

 私、祖国に帰ってザロモン侯爵家の復興を手伝いしようと思うんです」


「ザロモン侯爵家って、元婚約者のリック様のご実家のことですか?」


「どうなったら、婚約破棄した元婚約者の実家の復興の手伝いをすることになるんだ?」


お二人とも私の決断に驚いてるようです。無理もありません。


「順を追って説明しますね。

 まず昨日私がお会いしたのは、リック様のお兄様のフォンジー様でした」


「フォンジー・ザロモン様? 確か今はご実家を継いでザロモン卿でしたわね?」


さすがカロリーナ様社交界のことにお詳しい。


「わたしも彼のことなら少し知っているぞ。

 確かリック様と違って平凡な容姿だが、穏やかな性格で、社交界で彼のことを悪く言ってる人間を見たことはない」


そうなんです。


二年前、リック様があの事件を起こすまで、私もフォンジー様の悪口を言ってる人を見たことがありませんでした。


「ということはエミリー様の想い人は ザロモン卿だったのですね。

 元婚約者のお兄様に惹かれてしまうなんて……禁断の果実の匂いがしますわ!」


「カロリーナ様、わたしもそう思ったぞ!

 リック様の兄なのと、少々見た目が地味なのが気になるが、ザロモン卿はそれ以外は完璧な御仁だからな!

 エミリー様を任せるのにふさわしいお方だと思うぞ!」


「ザロモン卿も婚約破棄されて今はフリー!

 お二人の間には何の障害もございませんわ」


「その通りだ!

 しかも本来なら義理の兄弟になるはずだった相手というのが、絶妙な距離感で良いスパイスになっている!」


カリーナ様とマダリン様が妙な盛り上がりを見せています。


「お二人とも誤解なさらないでください。

 私はフォンジー様をそのような目で見たことは……」


「みなまでおっしゃらないでエミリー様。

 リック様と婚約破棄された後も、ザロモン卿のことをフォンジー様とお名前でお呼びしてるのが何よりの証拠ですわ」


「それは昔の癖で、深い意味は……」


「カロリーナ様のおっしゃるとおりだ!

 無自覚に人を好きになってることもあるからな。

 相手の領地まで押しかけていくのだろ?

 押しかけ女房か!

 良いではないか!

 煮え切らない相手にはこちらからグイグイ行かなくてはな!」


「もう、お二人とも勘違いが過ぎます!」


フォンジー様に次にお会いする時、変に意識してしまいそうです。


「私はただリック様を婚約破棄したことで、侯爵家の方々や侯爵領の方々に迷惑をおかけしたので、少しでも領地の復興のお手伝いをしたいと思っただけです。

 侯爵領は三年前の災害の爪痕が深く残っているようですから」


私の持ってる技術を使って人々を救いたい。本当にそれだけなんですから。


「加害者が被害者の領地の復興の手伝いをするなら分かりますわ。

 でもその逆なんて聞いたことありませんわ」


「そうだ、あの件についてエミリー様は100%被害者なんだ。

 だから、加害者の家のことなど気にすることないんだぞ」


「そうかもしれませんが、でも私にも何かできることがあるんじゃないかと……ずっとモヤモヤしてました。

 昨日フォンジー様にお会いして、その感情が確信に変わったのです。

 この方のお役に立ちたい、私にできることは何でもしたいって」


「やはりエミリー様はザロモン卿に恋していらっしゃるのね。

 相手の役に立ちたい、自分にできることは何でもしたいというのはそういうことですわ」


「しかも無自覚。

 ザロモン卿も罪深い男だ」


「本当にそんな気持ちは一ミリもありませんから!」


お二人が変なこと言うから、フォンジー様のことを妙に意識してしまいました。


次に領地でフォンジー様にお会いしたとき、どんな顔をして会えばいいのかわからなくなりました。


私がフォンジー様のことを……好き?


そう思った瞬間、顔に熱が集まってきました。


ないない絶対ありません! そんなことありえません!


「エミリー様、お顔が赤いですわよ?」


「そ、そんなはずは……!

 カロリーナ様の気のせいです!

 それよりお二人はどうなんですか?

  卒業の進路はお決まりなのですか?」


私はとにかくこの話題から一刻も早く離れたかったので、話題を変えました。



読んで下さりありがとうございます。

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