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白雪姫の家族  作者: 和泉将樹
序章 二人の出会い
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第7話 買い物

 和樹の部屋を辞した白雪は、とりあえず自分の部屋に戻ると、準備もそこそこにすぐ外出した。


「どうせ買うなら……あちらに行きましょうか」


 普段は、少し歩いたところにある、比較的価格の安いスーパーに行く。

 別に生活費に困るような事態はまずありえないのだが、それでも安く済ませたいと思うのは、多分昔の影響だ。

 決して裕福とは言えなかったが、楽しかった日々。

 もはや失われて、二度と戻ることのない幸せの記憶。


 一瞬過去に思いを馳せていた白雪は、それを振り払うように頭を振る。


 大型のターミナル駅にほど近いこの場所は、買い物をする場所には困らない。

 ただ、駅周辺のスーパーや地下街の店は品質もいいのだろうがお値段もそれなりで、白雪は普段はあまり利用していない。

 学校帰りに行く場合、駅前はやや遠回りのルートになるのもある。

 ただ、今日はちょっと思うところがあり、そちらに足を向けた。


 昼を少し過ぎたくらいではあるが、休日であることもあり人は多い。

 当然駅近くの店もそれなりに賑わっていた。

 普段行くことはのない場所ではあるが、さすがに慣れた道なので、迷うことなく目的地へ到着する。


(どうせなら――ですよね)


 立ち止まったのはスーパーではなく、精肉専門店。一人ではまず買うことがないような商品ばかりが陳列されているが、さすがに普段行くスーパーより品数も多く、品質もいい。

 目的はひき肉だが、同じひき肉でも部位はもちろん、その挽き具合の違う肉も並んでいる。頼めば、希望の挽き方でも提供してくれる。

 白雪はその一つを選ぶと挽き肉にしてくれるように頼み、受け取った。その後、スーパーに寄って、付け合わせになりそうな食材をいくつか追加する。

 支払は普段は電子マネーで済ませるのだが、今回はいずれも現金で対応した。

 先ほど預かったお金を使わないと、お釣りを返せないからだ。


(律儀な方ですよね)


 確かに普通に行われることなのかもしれないし、高校生に出させるのは、という彼の言い分はわかる。

 ただ、白雪はお金に困ることはほぼないので、そういう意味では要らぬ心配でもあるのだが、その事情を彼が知るはずない以上、仕方がない。


 必要な買物を終えて家に戻ったのは午後三時時過ぎ。

 そこから家でできる最低限の準備を始めて――終わったのは午後五時時過ぎになっていた。

 少し時間をつぶし、午後六時十分前を確認すると、いくつか家から持ち出しが必要な食材をタッパーに詰め始めた。不足している調味料と併せて、さらに先ほど買ったものを入れると結構な量になる。

 といっても、階下に移動するだけなので楽なものだ。

 白雪の家も和樹の家も、エレベーターから一番近い位置にあるので移動距離自体もほとんどない。


 一応インターホンを鳴らしてから、スマホをかざすと、解錠された音がスマホと扉から響く。

 当たり前ではあるが、本当に鍵を渡していると思うと、信用されたのだな、と改めて実感した。


「いらっしゃい。ごめんね、リビングから」

「いえ、お構いなく。足の調子はどうですか?」

「痛みは……まあ変わらずだけど、悪くはなってないと思う」


 リビングに入ると、ソファの上に和樹の姿があった。

 足のテーピングがややぎこちないものになっている。

 そういえば風呂に入る時はさすがに外しただろうから、その時のものか。

 とはいえ、パッと見た感じは問題なさそうだ。


「じゃあ、キッチンお借りします」

「ああ、じゃあ……頼むよ、というのも妙だが」

「はい、頼まれました」


 このやり取りがどこか不思議な感じがして、思わる笑いそうになる。

 キッチンを確認すると、白雪は持ってきたエプロンをつけて、バッグから食材を取り出した。

 ある程度の下準備は家でしてある。

 とりあえず米を研いで手早く炊飯器にセットすると、さっそく白雪はメインにとりかかった。


 

 

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